【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

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番外編・取り違えと運命の人 小話集

158 結婚しました ②

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 時間がもったいないので、とりあえず出発することにした。

「役所と職安、先に行きたいの、どっち?」
「役所!」
「わかった、役所ね」

 そんなに住民票移したいのかしら? と思いつつ、役所へと向かう。

「えっと、住民票だよね……」

 私があたりを見回していると、リカルドが前方になにかを見つけて、あ! っと声を上げる。

「それより先に!」
「……ああ」

 リカルドが指さす方へ一緒に向かう。

「神託でご結婚が決まったんですね」
「はい!」

 受付の職員さんにリカルドが魔法球を預ける。

「お預かりいたします。こちらで確認をとらせていただく間に、ご記入をお願いいたします」

 職員さんは引き換えにリカルドに書類を渡すと、背後の機械で鑑定を始めた。
 リカルドは相当真剣な面持ちでゆっくり記入してる。横からのぞきこんでみる。あ、字、わりと綺麗だ。意外。

「……その」

 書き終えたリカルドが、こちらを見ずに話しかけてくる。

「魔法球があれば相手が間違いなく証明できるから、ジュリエッタの署名は不要らしいんだ」
「そうなの?」
「うん……。これ、提出していい?」

 わざわざ許可を求めてくるなんて、丁寧だな。

「別に、書いてもいいんでしょ?」
「え?」

 リカルドが持っている書類を軽くひっぱって奪い、署名欄にサインをし、返す。

「はい」
「あ、ありがとう! 提出するね!!」

 今度はリカルドがきちんと私の方を見て言う。そんな満面の笑みでお礼言われるようなこと、なんかしたかしら? リカルドの反応がまだよくわかんない。

「魔法球も問題ありませんでしたし、受理いたします。ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます!」

 リカルドが嬉しそうにお礼を言って、私を見る。
 そっか。これで正式に、リカルドは私の家族になったんだ。家族仲、悪くはないけど、少し疎遠ではあったから、久しぶりの響きになんだかちょっとくすぐったい気持ちになる。

「よかった」

 私の顔を見てそう言うと、リカルドはほっとしたような表情を浮かべた。なにが? やっぱり、リカルドの反応がまだよくわかんない。

 その後住民票もつつがなく移して、リカルドは完璧にこの町の住人になった。嬉しそう、というか、スキップしながら軽やかに進んでて、人も多いし、ちょっと、見失いそう。

「リカルド!」

 四ツ角で少し先へ行ってしまったリカルドに声をかける。

「あ、ごめん! なに?」

 リカルドがあわてて戻ってきたので、続ける。

「職安、そっちじゃない。職安はここを左に曲がってちょっと行ったところ」
「あ、ほんとごめん! 職安だったね!」
「え? 職安が楽しみでスキップしてたのかと」
「俺、スキップしてた?」
「の、ように見えた」
「うわ、恥ずかしいな、俺」

 そう言って、リカルドは頭をぽりぽりと掻いた。無自覚だったのか。

「ええと、職安行く必要あるの俺だけだし、後で待ち合わせする?」

 まさかの別行動ご提案。

「別にいいよ? それくらい」
「んー、でも、俺の就職の話なんて、つまんないと思うし……」

 リカルドが申し訳なさそうな顔になる。別にいいのにな、もう家族なんだから遠慮しなくても。そう考えて、ふと思い出す。

「待つのは全然かまわないけど、私も郵便局に用事あったの思い出したから、別行動しようか」
「うん!じゃあ、三十分後に……」

 リカルドがきょろきょろあたりを見回す。

「あの時計の下は?」

 待ち合わせによく使われる、向かいの角のポール型時計を指さす。あれなら遠くからでも見えるし、この町に慣れてないリカルドでも見つけやすいだろう。

「あ! いいね! 時間もわかるし、助かる!」
「じゃ、また後でね」

 そんな感じで、しばらく別れて行動することになった。
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