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番外編・取り違えと運命の人 小話集
160 約束の行方 ①
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「今日、あっついねえ」
「うん……暑い……俺、ちょっと溶けそう……」
今日は休日で、出かけるローテーションの日だ。でもすごく暑くて、ちょっと外に出るのをためらってしまう。
「髪がまとわりついて余計暑い気が……。ごめん、出るの遅くなるけど、結ってきていい?」
「もちろん。……そうだ、道具持ってきて、ここで結ってよ」
「え?」
「ジュリエッタが髪を結うところ、見てみたい」
珍しい、というか、そんなこと言われたの初めてだ。普段リカルドは私の着替えやお化粧を眺めたりしない。たぶん舞台裏を覗かない配慮なんだと思う。
髪を結うくらいだったら、そう恥ずかしくはないから、いいか。
「うん。わかった。道具持ってくる」
自室から髪結い道具一式を持ってくると、部屋が涼しくなっていた。
「ごめん、暑くて、クーラー入れちゃった」
去年のボーナスでリカルドは私の首飾りを買ってくれた。すごく嬉しかったし、とっても気に入っているけれど、この調子だと私のものばかり買ってしまうのではないか? という懸念があったので、今年は「絶対自分で使うものを買って!」と厳命したのだ。
リカルドが選んだのは、最新鋭の魔導室内冷却装置だった。「俺、ほんとに暑いの苦手で」って言ってたけど、結局、私も一緒に使えるものを選んでくれたんだと思う。魔力を動力源にした機械は高いので、今までこの家にはなかったんだけど、「これからはもっといろいろ買おう」と言って、配線もしてくれた。リカルドは二人の生活が少しでも楽になるようにいつも考えてくれている。ほんとにありがたい。
「もっと早く入れてよかったのに」
「もう出る予定だったから、もったいないかなと思って」
「我慢しなくていいのに」
クーラーがあるのはこの部屋だけ。そして、リカルドは自分一人の時は絶対にクーラーを使わない。この間ビアンカ達と会って帰りが遅くなった日、めちゃくちゃ暑かったのに使ってなくて、つい叱ってしまったくらいで。
今もたぶん、自分が暑いからじゃなくて、私が暑い思いをしなくていいようにと考えて、こっちで髪を結うように言ってくれたんだ。リカルドはそういう人だ。
「我慢、しなくていい?」
「もちろん」
「その、しばらく、シャツ、脱いでてもいい?」
「え?」
我慢しなくていい、という文脈で、シャツを脱ぐことの許可? と頭上で疑問符が舞う。
「やっぱだめ?」
「そうじゃなくて……脱ぐの、我慢してたの?」
「ええと、我慢っていうか、普段はちゃんと着てないとダメなのかと」
ん? …………あ。
「もしかして、リカルドが来た日に、私が言ったから?」
「ええと、その……」
リカルドがしまったという顔をする。
初夜のお風呂上りにリカルドが上半身裸でうろついているのにどきどきしてしまい、つい、なんか着てください!と言ったのを思い出した。今も律儀に守っていたんだ。
「我慢禁止! シャツ脱いで、待ってる間水分取って!」
「は、はい!」
リカルドは素直にシャツを脱ぎ、水を取りに台所の方に行った。
……あれ?
「うん……暑い……俺、ちょっと溶けそう……」
今日は休日で、出かけるローテーションの日だ。でもすごく暑くて、ちょっと外に出るのをためらってしまう。
「髪がまとわりついて余計暑い気が……。ごめん、出るの遅くなるけど、結ってきていい?」
「もちろん。……そうだ、道具持ってきて、ここで結ってよ」
「え?」
「ジュリエッタが髪を結うところ、見てみたい」
珍しい、というか、そんなこと言われたの初めてだ。普段リカルドは私の着替えやお化粧を眺めたりしない。たぶん舞台裏を覗かない配慮なんだと思う。
髪を結うくらいだったら、そう恥ずかしくはないから、いいか。
「うん。わかった。道具持ってくる」
自室から髪結い道具一式を持ってくると、部屋が涼しくなっていた。
「ごめん、暑くて、クーラー入れちゃった」
去年のボーナスでリカルドは私の首飾りを買ってくれた。すごく嬉しかったし、とっても気に入っているけれど、この調子だと私のものばかり買ってしまうのではないか? という懸念があったので、今年は「絶対自分で使うものを買って!」と厳命したのだ。
リカルドが選んだのは、最新鋭の魔導室内冷却装置だった。「俺、ほんとに暑いの苦手で」って言ってたけど、結局、私も一緒に使えるものを選んでくれたんだと思う。魔力を動力源にした機械は高いので、今までこの家にはなかったんだけど、「これからはもっといろいろ買おう」と言って、配線もしてくれた。リカルドは二人の生活が少しでも楽になるようにいつも考えてくれている。ほんとにありがたい。
「もっと早く入れてよかったのに」
「もう出る予定だったから、もったいないかなと思って」
「我慢しなくていいのに」
クーラーがあるのはこの部屋だけ。そして、リカルドは自分一人の時は絶対にクーラーを使わない。この間ビアンカ達と会って帰りが遅くなった日、めちゃくちゃ暑かったのに使ってなくて、つい叱ってしまったくらいで。
今もたぶん、自分が暑いからじゃなくて、私が暑い思いをしなくていいようにと考えて、こっちで髪を結うように言ってくれたんだ。リカルドはそういう人だ。
「我慢、しなくていい?」
「もちろん」
「その、しばらく、シャツ、脱いでてもいい?」
「え?」
我慢しなくていい、という文脈で、シャツを脱ぐことの許可? と頭上で疑問符が舞う。
「やっぱだめ?」
「そうじゃなくて……脱ぐの、我慢してたの?」
「ええと、我慢っていうか、普段はちゃんと着てないとダメなのかと」
ん? …………あ。
「もしかして、リカルドが来た日に、私が言ったから?」
「ええと、その……」
リカルドがしまったという顔をする。
初夜のお風呂上りにリカルドが上半身裸でうろついているのにどきどきしてしまい、つい、なんか着てください!と言ったのを思い出した。今も律儀に守っていたんだ。
「我慢禁止! シャツ脱いで、待ってる間水分取って!」
「は、はい!」
リカルドは素直にシャツを脱ぎ、水を取りに台所の方に行った。
……あれ?
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