【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第五章 今が一番よいタイミング

120 私の彼氏と素敵な自動車 ③

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 展示場にはたくさんの車があって、わくわくしちゃう。私が一番はしゃいで見ている気がする。
 SUVタイプの黒い車。なんだか圧倒されるなあ。

「これは人気の型だし、黒は格好いいよねー」

 セダン型の白い車。大人って感じがする。

「これは馬力があって安定した走行性能だし、白は普遍的だよねー」

 私達のやりとりを見て、お兄ちゃんがあきれたような声を出す。

「ヤス、お前、ほんと棒だな」
「いや、真剣に、うちの車はどれもおすすめだから! どの車にもセールスポイントは必ずある!」

 一台の車の前で新くんは止まった。

「この車は本当におすすめですよ。走行距離が短いですし、燃費もいいですし、コンパクトで小回りも利きますし、その割に載積量もあって。なんといっても、色がすごくいいです」
「僕も、いい色だなと思います」

 銀色に近い水色。確かに綺麗な色だけど、ヤスさんの口調に何か含みがあるような気がした。

「ええ。汚れが目立たなくて」
「えええ! そんな理由?」
「でも、それ、結構重要なことですよね。手がかからない」

 新くんの返事を聞いて、ヤスさんはにやりと笑った。
 そして、思わずツッコんでしまった私に、ヤスさんは丁寧に解説してくれる。

「正直、黒は傷が目立つし、白も汚れると一気にみすぼらしい感じになる。濃い青は距離感がわかりにくいから事故率が少し高い。その点、この色は全部カバーしてる。弱点は、大人気の色という訳ではないから、買い取り価格がさほどってことかなあ」
「現実的……」
「だって車は日常で使うものだし」

 私達のやりとりを微笑みながら見ていた新くんが続ける。

「壊れるまで乗るので、買い取り価格のことはどうでもいいです。座ってみてもいいですか?」
「もちろんどうぞ。せっかくだから若葉ちゃんも助手席に座ったら?」

 私も乗ってみたいなとひそかに思っていたのがばれてる。ヤスさんは昔からそういうところがあって、さりげなく勧めてくれるのだ。
 助手席はとても座り心地がいい。内装は焦げ茶を基調にしていて、なんだかすごく新くんらしいと思ってしまう。外から見るよりも、がぜん、いいなと感じた。

「似たような条件でおすすめの車は他にもいくつかありますから、ご紹介しましょうか?」
「いえ。僕はこの車が気に入りました。これがいいです」
「では、ご購入手続きを進めてもよろしいですか?」
「はい」

 すごい。すんなり決まった。新くん、全然迷わなかった。
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