【R18】人の好みは説明できない

テキイチ

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第六章 まだ願いごとが叶った頃

147 僕の彼女へのプレゼント ①

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 僕は若葉ちゃんのしょんぼりした顔を、決して忘れてはならないと思う。

 僕が渡した「若葉ちゃんの願いをなんでも一つ叶える券」は、気が利かないというよりも、ずるいプレゼントだった。
 若葉ちゃんならきっと、ちょっと可愛らしい雰囲気を喜んで、笑顔で受け取ってくれるだろう。そんな打算がたぶんどこかにあった。若葉ちゃんは、なんでもまず楽しもうとしてくれるし、いいところを見つけようとしてくれる子だから。

 希望を叶えるという体で、僕は考えることを放棄したんだ。選択が苦手だから。
 さも、若葉ちゃんのためであるかのように見せかけているところが、余計いやらしく、狡猾で、誠実ではなかった気がする。若葉ちゃんははっきり「新くんの選んだものがいい」と自分の希望を伝えてくれていたのに。

 プレゼントは相手のためのものだ。若葉ちゃんが本当に欲しているものは何かを、僕はもっと考えるべきだった。せっかくの誕生日に、浮かない顔をさせてしまった。



 ゴールデンウィークが明けて最初の土曜。僕と若葉ちゃんはお昼を一緒に食べてからアクセサリーを買いに行くことにした。
 今日の若葉ちゃんは黄色いカーディガンに膝より少し長めの白いスカート。髪は上の方だけ蝶の形の金の髪飾りでまとめて、あとは下ろしている。ショルダーバッグも蝶を模したもの。なんだか若葉ちゃん自身がちょうちょみたいだ。

「定食屋さん?」
「うん。おいしいところがあるらしくて」
「楽しみ!」

 旅行の一日目のお昼で失敗してしまったから、若葉ちゃんに今度こそおいしいものを食べてもらいたいと思って、前もって調べた。
 これまで、若葉ちゃんの知っているお店か、食べたくなった時近くにあるお店に入ればいいと思っていて、出かける前にきちんと調べたことがなかったんだ。毎回そんな風でも、若葉ちゃんは決して文句なんか言わないから。
 無意識のうちに、若葉ちゃんの大らかさに甘えていた自分に気づく。

 大通りから外れた路地に入ったところにお店はあった。お店自体も目立たないから、前もって調べてないとたぶん気づけない。外観も検索かけておいてよかった。

 若葉ちゃんは席に着くと、下ろしていた髪をさっと一つにまとめた。
 食べる時は邪魔にならないように必ずそうするらしい。そのことを教えてもらった時に、初めてのデートでは下ろしっぱなしだったはずと思って訊ねてみたら、緊張してていろいろ飛んじゃって……と恥ずかしそうに返され、可愛くて笑ってしまった。

「いろいろあって迷っちゃうね! どれにしようかなあ? 新くんは決めた?」

 若葉ちゃんに問われ、壁のお品書きを見る。確かにたくさんあるな。

「……日替わり定食」

 どれだろうと特に問題ない時は、つい、こういうものを選んでしまう。

「あ! その手があったね! 何が来るかわからないの、楽しそう!」

 若葉ちゃんは店員さんに声を掛け、日替わり定食を二つ頼んでくれた。
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