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第十章 扉が閉じて別の扉が開く
259 クーポン返せ、案を送れ ⑤
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向井と藤田さんの三人で食事に行ってから初めて、若葉ちゃんが僕の部屋に泊まりに来ている。学会発表の準備が大変らしいので、なんだかひさしぶりだ。同じ空間に若葉ちゃんがいるとなごむ。
夕飯を終え、少しのんびりしていると、若葉ちゃんは勉強机に置いていた本に目を留めた。
「『鏡の世界』? 素敵な装丁!」
「うん。鏡は『草枕』にも結構出てくるし、漱石は他の作品でもよくモティーフにしていて思い入れがある気がするから、この間、三浦先生からお借りしたんだ」
「面白そう! 少し見てもいい?」
「どうぞ」
あの時の三浦先生の反応が気になる。若葉ちゃんは何を考えているんだろう。
ぱらぱらとページを繰る若葉ちゃんに、そっと訊ねた。
「その本をお借りした時、三浦先生から『若葉ちゃんとお付き合いしてるんですよね?』って言われたんだけど」
僕の問いかけに、若葉ちゃんはすんなり返してきた。
「うん。私がお伝えしたから」
「え?」
予想外の回答に驚いていると、若葉ちゃんは笑顔で続ける。
「書籍確認のバイトで新くんを推薦した時、三浦先生がどうして新くんなのか少し不思議そうにしておられたから、言ったの! 自慢の恋人ですって!」
「自慢の恋人……」
「新くんにビリヤニ屋さんでそう言ってもらったのが、私はとっても嬉しかったから。……ごめん、駄目だった?」
おそらく僕は戸惑いの表情を浮かべてしまったのだろう。若葉ちゃんの顔が不安そうに陰ったのであわてて返す。
「ううん。若葉ちゃんに自慢してもらえて、僕も嬉しいよ」
「よかった」
若葉ちゃんがほっとした表情を浮かべたので、僕も安心した。
でも、三浦先生の言葉がやっぱり気になる。若葉ちゃんは将来どうしたいと考えているんだろう。詰問するような形になったら嫌だなと思い、まずは自分の希望する進路について話すことにした。
夕飯を終え、少しのんびりしていると、若葉ちゃんは勉強机に置いていた本に目を留めた。
「『鏡の世界』? 素敵な装丁!」
「うん。鏡は『草枕』にも結構出てくるし、漱石は他の作品でもよくモティーフにしていて思い入れがある気がするから、この間、三浦先生からお借りしたんだ」
「面白そう! 少し見てもいい?」
「どうぞ」
あの時の三浦先生の反応が気になる。若葉ちゃんは何を考えているんだろう。
ぱらぱらとページを繰る若葉ちゃんに、そっと訊ねた。
「その本をお借りした時、三浦先生から『若葉ちゃんとお付き合いしてるんですよね?』って言われたんだけど」
僕の問いかけに、若葉ちゃんはすんなり返してきた。
「うん。私がお伝えしたから」
「え?」
予想外の回答に驚いていると、若葉ちゃんは笑顔で続ける。
「書籍確認のバイトで新くんを推薦した時、三浦先生がどうして新くんなのか少し不思議そうにしておられたから、言ったの! 自慢の恋人ですって!」
「自慢の恋人……」
「新くんにビリヤニ屋さんでそう言ってもらったのが、私はとっても嬉しかったから。……ごめん、駄目だった?」
おそらく僕は戸惑いの表情を浮かべてしまったのだろう。若葉ちゃんの顔が不安そうに陰ったのであわてて返す。
「ううん。若葉ちゃんに自慢してもらえて、僕も嬉しいよ」
「よかった」
若葉ちゃんがほっとした表情を浮かべたので、僕も安心した。
でも、三浦先生の言葉がやっぱり気になる。若葉ちゃんは将来どうしたいと考えているんだろう。詰問するような形になったら嫌だなと思い、まずは自分の希望する進路について話すことにした。
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