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最終章 ジャックにはジルがいる
339 時に世界は一瞬で変わる ②
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四月の半ば、私の元に一通の手紙が届いた。印字された宛名ラベルを読むと、差出人は「Arata Shibusawa」となっている。新くんからだ! いつもと違う古風な連絡手段に少しどきどきした。
裏面には手書きの記名もある。クリーム色の封筒にセピア色のインクでさらさらと書かれた「渋沢 新」の文字。お習字や硬筆の見本のような正統派ではないのだけれど、余計な力が入っていないからか、すっきりして読みやすい。新くんの字はいつ見ても新くんらしいなあと思う。封緘には金色のフクロウのシールが使われていた。とっても可愛らしい。
封を切ると、三枚の写真が同封されていた。一枚目は万年筆とレトロなデザインのインク壷とパッケージ、二枚目は一面に広がる桜並木、三枚目はお兄ちゃんと玲美ちゃんの写真。
便箋も封筒と同じクリーム色で、淡いセピア色の原稿用紙風のデザインのもの。上方の龍のイラストがユーモラスで、なんだかとても可愛らしい。
『若葉ちゃん お元気ですか?』
「とっても元気!」
『僕は相変わらず毎日ばたばた過ごしています。』
「新くんこそ大変じゃないかな? 無理しないで!」
思わず一文一文答えながら読んでしまって、自分で笑ってしまった。手書きの文字は、新くんの息遣いが伝わるようで、なんだか特別な感じがする。
『若葉ちゃんにシャープペンシルをもらってから、気に入った筆記用具を使いたい気持ちが強くなりました。この手紙は同封した写真の万年筆とインクで書いています。
漱石は万年筆を好んだそうで、最初は漱石が愛用していたメーカーのものを買おうかと思っていたのですが、残念ながら現在日本で手に入れるのは難しいようでした。
そこで、万年筆コーナーで数本試し書きをさせてもらい、とても書きやすくデザインも気に入ったので、これに決めました。軸の色は数色あったのですが、一際輝いて見えた緑色のものにしました。』
私のことも思い浮かべながら選んでくれたんだ。とっても嬉しい。
『僕が買った万年筆は、実を言うと、漱石が上手く扱うことができず愛憎入り乱れた感情を抱いたメーカーのものです。そのかわり、になるかわからないけれど、便箋は漱石の原稿用紙を模したもの、インクは漱石が好んだ「セピヤ色の墨」にしました。瓶のアテナの意匠と紙箱の若葉色がとても気に入っています。そして、若葉ちゃんが似合うと言ってくれてから、焦げ茶は僕にとって特別な色です。……』
くすくす笑いながら同封された写真をもう一度見た。
万年筆は、黒いキャップに鳥のくちばしを模した金のクリップ、縞模様の入ったエメラルドグリーンの軸がとても美しい。インク壷は少し縦長で優美な丸みを帯びたもの。パッケージに描かれたアテナが凛々しくて素敵。知と戦いの女神。もしかして、シールはブーボーにちなんでフクロウにしてくれたのかな?
裏面には手書きの記名もある。クリーム色の封筒にセピア色のインクでさらさらと書かれた「渋沢 新」の文字。お習字や硬筆の見本のような正統派ではないのだけれど、余計な力が入っていないからか、すっきりして読みやすい。新くんの字はいつ見ても新くんらしいなあと思う。封緘には金色のフクロウのシールが使われていた。とっても可愛らしい。
封を切ると、三枚の写真が同封されていた。一枚目は万年筆とレトロなデザインのインク壷とパッケージ、二枚目は一面に広がる桜並木、三枚目はお兄ちゃんと玲美ちゃんの写真。
便箋も封筒と同じクリーム色で、淡いセピア色の原稿用紙風のデザインのもの。上方の龍のイラストがユーモラスで、なんだかとても可愛らしい。
『若葉ちゃん お元気ですか?』
「とっても元気!」
『僕は相変わらず毎日ばたばた過ごしています。』
「新くんこそ大変じゃないかな? 無理しないで!」
思わず一文一文答えながら読んでしまって、自分で笑ってしまった。手書きの文字は、新くんの息遣いが伝わるようで、なんだか特別な感じがする。
『若葉ちゃんにシャープペンシルをもらってから、気に入った筆記用具を使いたい気持ちが強くなりました。この手紙は同封した写真の万年筆とインクで書いています。
漱石は万年筆を好んだそうで、最初は漱石が愛用していたメーカーのものを買おうかと思っていたのですが、残念ながら現在日本で手に入れるのは難しいようでした。
そこで、万年筆コーナーで数本試し書きをさせてもらい、とても書きやすくデザインも気に入ったので、これに決めました。軸の色は数色あったのですが、一際輝いて見えた緑色のものにしました。』
私のことも思い浮かべながら選んでくれたんだ。とっても嬉しい。
『僕が買った万年筆は、実を言うと、漱石が上手く扱うことができず愛憎入り乱れた感情を抱いたメーカーのものです。そのかわり、になるかわからないけれど、便箋は漱石の原稿用紙を模したもの、インクは漱石が好んだ「セピヤ色の墨」にしました。瓶のアテナの意匠と紙箱の若葉色がとても気に入っています。そして、若葉ちゃんが似合うと言ってくれてから、焦げ茶は僕にとって特別な色です。……』
くすくす笑いながら同封された写真をもう一度見た。
万年筆は、黒いキャップに鳥のくちばしを模した金のクリップ、縞模様の入ったエメラルドグリーンの軸がとても美しい。インク壷は少し縦長で優美な丸みを帯びたもの。パッケージに描かれたアテナが凛々しくて素敵。知と戦いの女神。もしかして、シールはブーボーにちなんでフクロウにしてくれたのかな?
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