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ピーチな夜
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しおりを挟むここは葵の部屋で間違いない。パーティーが始まる前にいちど様子見に足を踏み入れた。その時こちらも覗いたが、こんな奴は寝てなかった。ベッドはフットカバーもそのままで、普通に使用して男が寝ているというよりは、横たえられたというのが正しいのだろう。
黒い頭はうつぶせで顔立ちがわからない。目元を隠されているようだった。葵とおなじくらいの長躯だとパッと見でもわかるが、パイル地の白いバスローブが掛けられており体つきはよくわからない。特に苦しそうでもなくその姿勢を保っているところをみると薬か何か嗅がされているのかもしれなかった。
「俺らからのプレゼントっす! 開けてください!」
「……こいつがか」
「どーぞどーぞ!!」
何となく上峰にも目線で確認を取ってみるがかるく頷くのみで下平を制止する様子もない。彼も同意のようだ。それならばと葵はベッドに歩み寄り、男の足側に膝から乗るとバスローブをするりと剥がした。腰紐は結ばず袖も通してないので簡単に中があらわになる。
「――オイこれ、」
「そうっす! 見つけました!!」
褒めて褒めてというように、下平と上峰が葵を見ているがそれどころじゃなかった。まったくもってそれどころじゃなかったのだ。あれだけ熱心に眺め倒していた極上の身体が、今、目の前で横たわっているのだから。
男はボクサーショーツ一枚という無防備な姿で両腕をL字に曲げた状態で背中でまとめられていた。拘束用の縄の下には肌を傷をつけないよう厚手の布が噛まされている。プロの仕事の気配を感じていると下平が「下準備は済ませてます」としたり顔で囁いた。ぐっと胸倉を掴んだので瞬時に双眸に怯えの色を走らせたが、葵は殴り飛ばすどころか彼の頭をわしゃわしゃと撫でまわした。
「でかしたお前ら」
「あざっす!」
「ありがとうございます!」
やったなと小声で互いを讃え合うふたりを余所に葵の意識は横たわる男の一点にずっと攫われていた。やはり生で見ても素晴らしい。間違いない、あんなに熱く見つめていたのでかたちはもう目に残っている。
そっと触れると肌はしっとりとすべらかで張りがあった。つきすぎず、必要なところだけのしなやかな筋肉は本人の意識が遠いこともありリラックスしてやわらかい。日焼けもしていない淡い色は生来のものなのかところどころほくろが散り、中でも内腿のちいさな三連星は甚く特徴的で、個人を特定するに足るチャームポイントだった。
指の腹でゆっくりとこすっても消えない。偽物じゃない。刺激を受けピクンと腰が跳ねたが男が目覚める様子はなかった。
「もう30分もすれば起きるそうです」
「……じゃ、ゆっくりお楽しみくださいっすアニキ!」
「おう」
おやすみなさいと言い置いてふたりが出ていく。葵は見送りもせず耳だけでそれを聞いていた。申し訳ないが上の空だ。何故なら眸はもはやプレゼントしか映していない。丈夫な骨盤にしっかりと筋肉の土台があり、その上に見事なバランスで乗る脂肪。このたわわに実る輪郭。ぷりっとした小ぶりのこの尻たぶを揉みしだいて押し開いて、狭いなかを太い異物で蹂躙したい。あっという間に火の点いた凶暴な衝動に正直に葵は値の張るスーツの上着を脱ぎ落とし、タイを投げ捨ててシャツの襟をはだけた。
靴を脱ぎ、フットカバーも一緒にベッドから退場させる。リングもブレスも外して、スマートフォンとマネークリップの横に雑に並べておく。男を傷つけるような物は極力減らしたかった。これはもう殆ど信仰か呪いに近い。
ストレートに生きてきてどうしてそんな欲望に駆られるのかずっと不可解だった。今もまだわからないでいる。けれど存在を認めると楽になった。葵は、どういうわけかこの男のこの尻に、ずーっと劣情をかきたてられて日々を過ごしてきたのだ。
初めて見たのは何げない、スーパーのチラシみたいなものだったように思う。一年ぐらい前だろうか。商品を着用したモデルの腰から下しかない写真。そのバックショットにどういうことなのか胸騒いだ。
これまで男の尻などにまるで関心を持ったことのない人生だったため、当然のように葵は誤作動で片付けた。しかしそうではなかったのだ。その後も情婦の部屋で見かけた雑誌、舎弟が覗いていた通販サイトにデザイナーの友人が持っていたゲラ刷りと呼ばれる印刷物、テレビCM、果ては最も直截的にメンズ下着の広告でまで見かけ、また自分がそれに悉く目敏く気づいて初めて、この事態の異常さを自覚したのだった。
「すげえ……マジだわ」
長らく意識の一部を占め、決して離れることのなかった美しい造形。間近で眺めてあまりの肉感にごくんと喉が鳴る。もうすこし横に大きかったら女のそれと言っても信じただろう。見事なふくらみに葵はまず布越しに頬を埋めてみる。
女の胸よりはかたいけれど一般的な男の尻よりはやわらかい。むにゅ、という生々しい感触にかあっと赤くなった。もうひとつの尻の頬をそうっと掴んでみる。痛がらせないよう慎重に。ちゃんと揉み感のあるのに感動すら覚えた。平らでただ太腿の付け根というだけの自分の尻とはまるで異なる。手の中でかたちを変えている。
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