寿命が来るまでお元気で

ゆれ

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 いっぱいまで開かれた脚の付け根が撃ち込まれるたび軋んで音をさせる。腰全体で押し出すようにぶつけられ、水けを含んできた肌がパンパンと激しく鳴らされる。既に拓かれていた筈なのに、さらに内から拡げられ、みっしりと埋められて苦しかった。先程よりもっと奥に来ている気がする。

「うっ、ア、あっああっや、っだ、朱炎、おく、」
「イイくせに、は、嘘ばっか」
「いたい、ッそこ、ぁっ……!」

 ぬるついた先端で弱点を抉られ、ゆるゆる押し潰されると一気にだめになる。閉じることができないくちの端からよだれを垂らし、酩酊したような顔で快楽にとける来良はいやらしくて、うまそうで、誰かのものになるまえに手に入れられて本当によかったと朱炎は秘かに思った。同胞殺しの罪を犯してでも奪っていたかもしれない。
 冬青がいる時は理性の割合が多くて厭そうな態度ばかりを取る来良だが朱炎しかいないと甘えたな顔も見せてくれたりする。くちを吸われるのが好きだし、ぎゅっと抱きしめてやると嬉しそうに目を細める。もしかすると本人も知らない性質かもしれない。

「うう~……ふ、っは、」

 根元まで呑まされてがくがく揺すられる。緩慢な抜き差しにも硬く張りつめた朱炎が内側をこすって、ささやかな刺激に安心すると今度は遠慮なしに貫かれた。回転をかけて巻き込むようにされたり、殆ど尻が浮いている不安定な姿勢で突き込まれたり、好きなように扱われて来良は身も世もなく喘ぐしかない。
 ひときわ高く声の出る箇所を責められて、思わずなかにいる朱炎を食い締めた。

「っ……キツ」
「ああ……あっやっ待て、イッてる、からぁ」
「しらねえわ、」

 俺様はまだなんだよと麗しい顔で鬼のようなことを言い放つ。ひとでなしなのは知っているが本当にひどくて、涙を浮かべる来良を朱炎は尚も激しく揺さぶり倒した。
 折り畳まれて呼吸が狭い。身体のどこもかしこも熱くて、まるできかない。触れられている部分はそう広くもないのにやけに近く朱炎を感じた。繋がっている場所が心情を反映してかきゅんと疼く。不意打ちを食らったのか白い男が、ふ、と笑いのような息を吐く。

「お望みどおり種付けしてやんよ」
「な、っに言って、ぁッ」

 ギッギッと床板が鳴るほど押し付けられ胎内で朱炎が震える。咄嗟にずり上がる動きをしたのは防衛本能なのか、しかし真上からの打撃に下になった来良にはなす術がなく、腰をくねらせて早くと誘いかけたようにしか見えなかった。今度はたしかに嗤って朱炎はつがいのなかに己の一部を吐きつける。
 偽物でも何か芽吹くのではないかと、ふと埒もないことを思う。

「あび……っ!」
「くっ、……は、ぁ」

 弛緩して落ちてきた身体にそっと腕を回す。らいら、と舌たるく呼ばれて顔を寄せると噛みつくようなくちづけに襲われた。吐く息が熱くて、整わなくて、それでも無理やり重ねた唇はおなじ温度になっていた。
 それがひどく恐ろしくて、来良はそっと涙をこぼす。







「ここぉ?」
 片手で顔に庇を作り鮮やかな夕陽を避けながら、幸良がすうっと目を眇める。

「幸良はどうせわかんないだろ」
「痛って!」

 新良にげしっと向こう脛を蹴っ飛ばされ、お返しに幸良がこめかみをぎりぎり締めて、もはや何度目かもわからない子犬のじゃれ合うような兄弟喧嘩に居待月が眉を下げる。来良の気持ちがよくわかる。彼らは年の差が三つしかないので気に食わないことも多ければ、なまじ新良が法力に優れているため、殆ど対等に扱われているのが見事に裏目に出ているのだろう。
 こちらはこちらで我が道を行き一切気にすることなく黄麻いちびがあやかしの、しかも上級のあやかしの気配にピリついている。勿論けものとしても来良の匂いはたどれるのだが残念なことにそれは今は感じない。しかしここは東の門番の管轄内で、この兄弟がちゃんと眼を光らせていただけあり薄暮になればあやかしが自由に跋扈しているようなことはないのだ。明らかに異変が起きている。

 この強大な妖気は十中八九、来良を襲ったあやかしのものだろう。しかもどうやらふたついる。二年前襲来した白と黒の妖狐の姿が脳裏を過ぎっていく。

「この森……」
「どうかしたのかい」
「うん、見覚えがある……」

 ここに塒がある可能性が高い。妙に静まり返って息をひそめているようなのは、不穏な、或いはレベルの違うあやかしがいて張り詰めているような雰囲気を感じさせた。本来はもっとのんびりしてたくさんの生き物達が共存している筈なのに。ここまでみちびいてくれた眷族達に感謝しつつ黄麻は一層警戒を強めた。

「来良くんはどうしてるんだろうね」
「ええ? それ話すのぉ?」

 幸良と新良にまえを歩かせながら、居待月は隣の黄麻に気になっていたことを尋ねた。

「考えてみたのだけど、あやかしが必要とするのは精気だろう? そしてそれは生きた人間からしか得られない。死体ではだめだ」
「……釈迦に説法って言葉しってるぅ?」
「たしかにそうだね」
 長身は肩を聳やかせる。化け猫に説明は不要。

「うん、僕も考えなかったわけじゃないよ。眷族にしたって可能性も捨てきれない。でもさ、つけ狙うくらい恨まれてたんだよね? ただ八つ裂きにしたってことも充分考えられるんじゃないかな」
 
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