【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第一章 スパイダー

8.

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 金曜日の授業が終わった。

 集めたプリントを提出し、委員長としての仕事を終えると僕は五組の中をのぞいた。
 今日の朝、いつものように笑香を家まで迎えに行くと、出て来た笑香のおばさんにすでに登校したことを告げられた。さわがしくしゃべる女子達の奥で笑香は自席に腰をかけ、ただ頬杖をついていた。午後の日差しが逆光になり、その表情は読み取れない。
 笑香らしくない。
 僕は思って肩をすくめた。当たり前だ。普段通りに友達と話をしているわけがない。

「笑香」

 教室の外から声をかける。
 振り返り、笑香は露骨に表情をこわばらせた。のろのろとその場から立ち上がり、重い足取りでそばに来る。

「何なの?」

 僕は笑顔で問いに答えた。

「授業、終わったんだろ? 一緒に帰らないか」
「……」

 笑香はきつく唇を噛んだ。昨夜は眠れなかったのだろう、充血した目が痛々しい。
 何か言おうとためらいがちに笑香がその口を開いた。だが、その時。

「柿崎さん、迎えに来たよ」

 明るく太い声が響いて、笑香の言葉は散ってしまった。
 僕は眉間にしわをよせた。
 この不愉快な声は新保だ。

「笑香。何してるの?」

 ショートカットの大西おおにし美優みゆが、僕達の間に顔を出す。

「あ、やっぱり水嶋君も誘うことにしたんでしょ? ねえ、一緒に映画見に行こうよ。新しくできた駅前のシネコン、すっごくきれいなんだって」

 どんぐり眼をくりくり動かし、いたずらっぽく大西は言った。
 大西は僕や笑香と同じ中学校の出身で、この高校では僕と同様、一組に席を置いている。親友である笑香とは中一からのつきあいだ。その大西の後ろには、僕より頭一つ分も背の高い新保が照れた様子で立っていた。
 腹の底にある不愉快を押しつぶし、僕はおだやかな笑顔を作った。

「ああ。先月開館した映画館か。僕招待券を持ってるけど」

 新保と大西は色めきたって口々に話しかけて来た。

「ならちょうどいいな。水嶋に頼むか」
「ねえやっぱり一緒に行こうよー」
「──悪いんだけど」

 ぴたりと言葉を止めた二人に、僕はにっこり笑って言った。

「家にあるんだ。いったん取りにもどらないと……だから日曜日に改めて遊びに行かないか」

 二人の反応は言うまでもなかった。
 さっそく計画を立て始める二人に後を任せると、僕は笑香にささやいた。

「後で。また連絡する」

 笑香が不安げな表情で僕と二人を見比べる。
 僕はかまわず手を振って、笑香に背を向け歩き出した。
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