【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

17.

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 僕は首をかしげた。

「何かあったのか?」
「ううん、別に。昨日ちょっとケンカしちゃって」

 歯切れの悪い笑香の答えに、僕はピンと来た。

「もしかして、僕のことで?」

 笑香は困った顔をした。当たりだ。

「別に史郎君が悪いんじゃないの。私が……。私がシチューを持って行こうとしたら、時間が遅いからやめろって言われて。史郎君がいないのは知ってたし、何だか言い方が腹が立って」

 僕は思わず苦笑いした。
 やれやれ。最近僕が自分のことで忙しくて、柿崎家に目を向けていなかったせいもある。笑香と今後の交際についてきちんと話をしておけば良かった。
 笑香が唇をとがらせた。

「前と職場が変わったせいか、お父さんが家にいることが多くて。今は何でも口を出して来るし、調子狂っちゃう。勇人も面倒くさいって」

 僕はわずかに肩をすくめた。
 実際今までの僕達は、たがいに父親が不在の家庭を補い合うように暮らしていた。言ってみれば、僕が柿崎家の長男のような形で家長の補佐を請け負っていたのだ。本物の家長がいる今は、あまり関わらない方がいいかとあえて身を引いていたのだが、相談くらい聞いてやれば良かった。

「おじさんも笑香のことを心配してるんだよ」

 僕がなだめると、笑香が頬をふくらませた。

「そういう時だけ、優等生にもどるんだから。──っと、本当にもう行かなきゃ。じゃあまた明日」
「ああ。勇人に言っておいてくれ。十五日、四時半って」

 走りかけた笑香が振り返り、満面の笑顔を見せる。
 笑香の背中を見送ると、職員室に鍵を返して僕は生徒会室へもどった。荷物を整理し、帰ろうとした時スマホにおばさんの着信があった。

『──史郎君? 笑香を知らない?』

 心配そうなおばさんの声。僕は答えた。

「さっき学校を出たので、もう着くと思いますけど。コンビニによって行くと言ってたから、夕飯用に何か買ってるんじゃないかな」
『そう。それならいいんだけど。さっきから連絡してるのに、電話に出なくて』

 僕は一瞬眉根をよせた。何だか嫌な予感がする。
 先ほど職員室で耳にした、文化祭の盛り上がりのなごりか、うちの生徒や他校の生徒が周囲にたむろしているという話を思い出す。
 まさか。
 胸騒ぎを押し隠し、先輩への挨拶もそこそこに部屋を出る。笑香のスマホに直接電話してみたが、やはり笑香は出なかった。
 僕は急いで校門を出た。とその時、街灯の明かりに照らされて、帰る道とは反対方向に何かが落ちているのを見つけた。
 どくんと心臓が大きく脈打つ。拾い上げると笑香のリュックについていたはずの小さなクマのマスコットだった。
 僕はマスコットをにぎりしめた。冷静さを保つため、大きく深呼吸をする。
 この先に、生徒がたまっていそうな場所。繁華街は人が多いから、人目につかない場所と言えば……。

 マスコットをポケットの中に入れ、僕は近くの公園に向かって走り出した。
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