【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第五章 夢の終わり

6.

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「部屋にいるのか?」

 僕がたずねると、笑香も気がついたのだろう。部屋のカーテンが開けられた。よくわからないが、泣き笑いのような表情で僕の方を見ている。

「そっちは大丈夫か?」

 僕の問いかけに小さく見える顔がうなずいた。

『お父さん、自分でも手が出たのがショックだったみたい。今はすごく反省してる』
「そうか」

 僕は目を伏せた。それでも僕は知っている。再びアルコールが入ったら、その状態が一変するかもしれないことを。

「勇人はもう寝たよ。今、隣でベッドに寝てる」

 僕がおだやかに伝えると、笑香は涙声で答えた。

『──私も、そっちに行きたい』

 僕は言葉を失った。
 二枚のガラス窓をへだてて、僕達は互いに相手の顔を見つめ合った。

「だめだ」

 思いをはねのけるように僕はきっぱり言い切った。

「わかってるだろ? そんなこと。今、ここに来たらだめだ」
『史郎君……!』

 笑香の切ない声の響きに心が折れそうになる。窓の向こうですすり泣く笑香に、僕は優しく言葉をつなげた。

「大丈夫だよ、そばにいるから。僕は君のそばにいる。今、君の目の前にいるだろ?」
『うん……』

 笑香のしゃくり上げる音が聞こえた。僕はぐっと奥歯を噛んだ。あえて強い口調を作り、笑香を挑発してみせる。

「それに、今ここに来てみろ。勇人が隣で寝てたって、あの約束を果たしてもらうぞ」

 笑香の涙にわずかにだが笑いが混じる。半分ヤケで僕は続けた。

「いいか? 僕は今までずっとここで君のことを想像してたんだぞ。毎晩僕が頭の中で君に何をしてたかわかるか? ……想像だけなら僕は君より君のことを知ってるはずだ。そんな状態でここに来てみろ。今、本物に責任を取ってもらうからな」
『それは……今は、こまるかな』

 笑香の笑いを含んだ声。僕は意地悪く鼻を鳴らした。

「ほらみろ。──僕はこれから勇人の服と自分の服を洗濯して、月曜からの学校の準備もやっておかなきゃならないんだ。変に僕に気を持たせずに、本物はさっさと寝てくれ」

 僕を見ている笑香が笑った。

『準備なんかしなくても大丈夫なくせに』

 僕も笑って最後に返した。

「いつでも、すぐに電話に出るから。僕は君のそばにいるよ」

 そうだ。──あの頃よりも。
 自分の気持ちを押し殺したまま笑香の前で食事をし、夜は衝動と刺し違えるかのように向き合っていた頃よりも。
 今、距離が離れていても、心は君のそばにいる。
 僕は笑香の笑顔を認め、スマホを自分の耳から離した。
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