【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第五章 夢の終わり

31.

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 サッカー好きの湯浅さんと、サッカー馬鹿の勇人なら話が合うだろうと思ったが、やっぱり案の定だった。そういえば僕も中学の部活を選ぶ際、湯浅さんが好きだったという理由で、何となくサッカー部のドアを叩いたような覚えがある。

「湯浅さんも大変だな」

 僕が答えると笑香は思わせぶりな視線を向けた。

「もう一人、手のかかる子供がここにいるしね。──ミネラルウォーターくらい売店にあるので我慢しなさいよ」
「だって味が違うんだよ。湯浅さんも買って来てくれるっていうし」

 そう僕が言い訳すると、笑香ははいはいと僕の言葉を聞き流した。
 僕が笑香と再び出会い、同じ病棟ですごしていたこの二週間。僕は保護者代わりにつきそってくれている湯浅さんに、勇人と同じく甘えきっていた。そして、僕より重症の患者であるはずの笑香にも。

「湯浅さん、退院が決まって実は嫌がってるんじゃない? 学校が始まるまででも史郎君と一緒に住むのを」

 からかうように笑香に言われ、僕は唇のはしを下げた。何だか最近笑香が僕より年上のように接して来る。
 僕は、まるで今までの自分をすべて取っ払ったかのように、このゆるやかな時間の中で、笑香と湯浅さんの二人にわがままな自分をさらけ出していた。

 多少僕達の状態が落ち着いて今後の話になった時、僕は強硬にこの街に残ると湯浅さんに駄々をこねた。今までの状況が一変し、僕が長野に帰る理由が失われたことを盾にして、僕はこのままここに残ると湯浅さんに言い張ったのだ。
 困り切った顔つきで僕を眺める湯浅さんに、ベッドの上で寝ていた笑香はたしなめるように口をはさんだ。

『だめですよ、湯浅さん。先に史郎君の言うことを聞いたら。……それが史郎君の手なんです。私もだけど、それだとすぐに丸め込まれちゃう。話を聞かずにびしっと言うことを言ってやればいいんです。話を聞くのはその後です』

 僕はそれを聞いてふてくされた。
 笑香もずいぶん、僕に言うようになったじゃないか。

『じゃあ、笑香が僕と一緒に向こうでやり直すのはどうなんだ? 違う学校を探すから、笑香も僕と同じマンションで暮らして通えばいいじゃないか』

 一瞬僕の提案にゆらいだ目をした湯浅さんに、笑香はきっぱりと言い切った。

『だめよ、史郎君。せっかく編入が決まったんだし、全部準備もできてるのに』
『そんなのどうだっていいよ』

 湯浅さんへの思惑が外れ、ぷいとそっぽを向いた僕に、笑香はまるで小さな子供をさとすような調子で言った。

『史郎君、私達なら大丈夫。湯浅さんやおじさんのおかげで何とか生活も落ち着きそうだし。お母さんも頑張ってるしね』

 僕達二家族が住んでいた住居は結局このまま引き払い、笑香達も新しい住まいを探して、一からやり直すことになったのだ。
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