【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

2.柳沢笑香の完璧な恋人 2

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 笑香はぷっと吹き出した。史郎に横目でにらみつけられ、あわててくすくす笑いをおさえる。

「それで? 何で制服なの? 学校から直接来たの?」
「学校帰りに眼科へよって、それから湯浅さんと待ち合わせて来たんだ。家に帰って着替えるひまがなかったんだよ」

 ため息まじりに史郎が答えた。

「史郎君、眼鏡持ってたんだね」

 ゆるみそうになる唇を引きしめながら続けると、眼鏡をかけた顔が振り向く。

「当たり前だろ。普通両方あわせて使う物なんだ。──僕は使ってなかったけど」

 そこまで言って、あきらめたようにつけ加える。

「どうせ、君も親父にそっくりだって思ってるんだろ」

 笑香はついに噛み殺していたくすくす笑いを解放した。
 実際眼鏡をかけた史郎は、父親の雅史まさふみにそっくりだった。通った鼻筋や形の良い顎の輪郭など、驚くほどによく似ている。
 少しくせのある前髪を父親のようになでつければ、さらに雅史に似るだろう。母親ゆずりの瞳の印象が眼鏡のせいで弱められ、今まで気づくことのなかった類似性がきわだったのだ。

「自分でもわかってたから、眼鏡をかけたくなかったんだ。それなのにあのクソ親父。コンタクト代を倍にして請求してやる」

 ふてくされる史郎を見上げ、笑香はあらためて彼にたずねた。

「史郎君、いつからコンタクトしてたの?」

 史郎は小さくため息をついた。

「編入の手続きの時に、身体測定で視力の矯正を勧められたんだ。面倒だし、たいしたことがなさそうだったからほっといたんだけど、やっぱり色々と問題が……」

 なぜかちらりと笑香の方にそのまなざしを向けて来る。
 どこか意味ありげな史郎の視線に、笑香はまばたきをくり返した。何か自分に関わることで問題でもあったのだろうか?
 史郎はふいと顔をそむけた。笑香は言った。

「でもうちに来る時は、眼鏡は持って来てなかったよね?」
「だから、なるべくかけたくなかったんだ。……この話はもういいだろ」

 不機嫌な声で切り上げられ、笑香は思わず首をすくめた。

──でも、私はうれしいんだけどな。

 心の中に浮かんだ思いを、唇までで押しとどめる。

 実は笑香は幼い頃から、史郎の父親の雅史に淡いあこがれを抱いていた。
 紳士然としたふるまいや、ふちなしの眼鏡からのぞく理知的で優しい瞳など、「史郎君のお父さんは素敵」だとひそかに思い続けていた。そのため、息子の史郎にも一度眼鏡をかけて欲しいと思っていたのだが、それを伝える機会がなかった。

 眼鏡をかけた彼は思った通り、いや、思っていた以上に格好良くて、待ち合わせ場所に立っていた彼の姿に気づいた時から、笑香は胸をときめかせていた。初めて目にした今の制服も彼の雰囲気に合っていて、改札口を出て史郎を見た時、一瞬どこかの芸能人かと笑香も勘違いしたほどだ。
 実際、そばを通る女性の視線を集めている彼に、笑香は自分が彼の横にいることに多少の優越感を抱いた。
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