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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
17.柳沢笑香の完璧な恋人 17
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史郎が洗面所に入り、その奥にある風呂場へ向かうのを見届けて、笑香はあたりを見回した。玄関先にある荷物を見つけてとりあえず確保する。白い廊下を汚さないよう苦労してキャリーケースを運んでいると、史郎が洗面所から顔を出した。
「何してるんだ?」
「荷物、どこに置こうかと思って……。私はどこで着替えればいいの?」
暗に自分が寝る部屋はどこかと彼に聞いてみる。たくさん見える扉の中に一つくらいは空いている部屋があるだろう。以前史郎が部屋が多くて使いきれないとこぼしていた。
だが笑香がうすうす感じていた通り、彼はしれっとした顔で答えた。
「僕の部屋に置いておけばいいだろ。後はリビングと親父の部屋以外、全然掃除してないよ」
笑香は頭が痛くなった。
「……それで、今日、私はどこで……」
「さっき見たからわかるだろ? 僕のベッドはセミダブルだから、一緒に寝たってそんなに窮屈じゃないよ」
にやにやしながら、史郎が笑香の持っていた荷物をやや強引にその手に受け取る。キャリーケースを否応なしに彼の部屋に運び込まれて、笑香は思わず額を押さえた。
一応雅史の目があれば、史郎もそれほど無茶はするまいとふんでいた自分が情けない。誤算だった雅史の留守に、笑香は自分が立てた計画ががらがらと崩れ去っていくのを感じた。
笑香の自宅で紳士的に振る舞う史郎の姿に慣れてしまって、彼のことを甘く見ていた。本来の彼はもっと欲深く、計算高い変人だ。
「ほら、すぐに沸くから入れよ。シャワー、浴びたかったんだろ?」
笑顔でうながす史郎の言葉に嫌な予感しかしない。とりあえず、言われた通り着替えを持って洗面所に入る。
その広い空間は、シンプルな籐製の収納家具がそなえられている脱衣所と、多少の衣類なら干すことのできる洗濯場所をかねていた。最新式の洗濯機がでんと据えつけられているが、全くせまさを感じない。平日の朝は大騒ぎになる、笑香の家のせまい洗面所とは大違いだ。
「バスタオルまで持って来たのか? そんなのうちにあるのを貸すのに」
史郎のあきれたような声色に、笑香は小さく肩をすくめた。
──この人にバスタオルなんか借りたら、その後何をされるか……。
以前、自分がしいていて染みになってしまった服を、史郎がそのまま着て帰ろうとしたことまでも思い出し、勝手に頬が熱くなる。
そんな笑香の様子を見つつ、洗面所の壁に背中を預け、軽く腕組みをした史郎が口元をゆるませて聞いて来た。
「で? 脱がないのか」
「……脱げる訳ないでしょう」
笑香が言うと、彼はさわやかとも取れる笑顔であっけらかんと言葉を続けた。
「遠慮するなよ。それなら僕が脱がせてやろうか?」
「ふざけてないで、早く行ってよ」
笑香が声に怒気を含ませると、史郎は苦笑いして壁から離れ、出て行った。笑香は安堵のため息を漏らしたが、すぐにまたその眉根をよせた。
おかしい。簡単すぎる。
いつもならもっとしつこくまとわりついて来る史郎だが、今回はあきらめが早すぎる。
念のため、洗面所にかけた内鍵を念入りに確認した後で、笑香は自分の服を脱いだ。手間取る包帯がないために、それほどあせらず広い浴室の中に入ることができた。
「何してるんだ?」
「荷物、どこに置こうかと思って……。私はどこで着替えればいいの?」
暗に自分が寝る部屋はどこかと彼に聞いてみる。たくさん見える扉の中に一つくらいは空いている部屋があるだろう。以前史郎が部屋が多くて使いきれないとこぼしていた。
だが笑香がうすうす感じていた通り、彼はしれっとした顔で答えた。
「僕の部屋に置いておけばいいだろ。後はリビングと親父の部屋以外、全然掃除してないよ」
笑香は頭が痛くなった。
「……それで、今日、私はどこで……」
「さっき見たからわかるだろ? 僕のベッドはセミダブルだから、一緒に寝たってそんなに窮屈じゃないよ」
にやにやしながら、史郎が笑香の持っていた荷物をやや強引にその手に受け取る。キャリーケースを否応なしに彼の部屋に運び込まれて、笑香は思わず額を押さえた。
一応雅史の目があれば、史郎もそれほど無茶はするまいとふんでいた自分が情けない。誤算だった雅史の留守に、笑香は自分が立てた計画ががらがらと崩れ去っていくのを感じた。
笑香の自宅で紳士的に振る舞う史郎の姿に慣れてしまって、彼のことを甘く見ていた。本来の彼はもっと欲深く、計算高い変人だ。
「ほら、すぐに沸くから入れよ。シャワー、浴びたかったんだろ?」
笑顔でうながす史郎の言葉に嫌な予感しかしない。とりあえず、言われた通り着替えを持って洗面所に入る。
その広い空間は、シンプルな籐製の収納家具がそなえられている脱衣所と、多少の衣類なら干すことのできる洗濯場所をかねていた。最新式の洗濯機がでんと据えつけられているが、全くせまさを感じない。平日の朝は大騒ぎになる、笑香の家のせまい洗面所とは大違いだ。
「バスタオルまで持って来たのか? そんなのうちにあるのを貸すのに」
史郎のあきれたような声色に、笑香は小さく肩をすくめた。
──この人にバスタオルなんか借りたら、その後何をされるか……。
以前、自分がしいていて染みになってしまった服を、史郎がそのまま着て帰ろうとしたことまでも思い出し、勝手に頬が熱くなる。
そんな笑香の様子を見つつ、洗面所の壁に背中を預け、軽く腕組みをした史郎が口元をゆるませて聞いて来た。
「で? 脱がないのか」
「……脱げる訳ないでしょう」
笑香が言うと、彼はさわやかとも取れる笑顔であっけらかんと言葉を続けた。
「遠慮するなよ。それなら僕が脱がせてやろうか?」
「ふざけてないで、早く行ってよ」
笑香が声に怒気を含ませると、史郎は苦笑いして壁から離れ、出て行った。笑香は安堵のため息を漏らしたが、すぐにまたその眉根をよせた。
おかしい。簡単すぎる。
いつもならもっとしつこくまとわりついて来る史郎だが、今回はあきらめが早すぎる。
念のため、洗面所にかけた内鍵を念入りに確認した後で、笑香は自分の服を脱いだ。手間取る包帯がないために、それほどあせらず広い浴室の中に入ることができた。
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