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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
29.柳沢笑香の完璧な恋人 29
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「うん。実は、湯浅さんが自分から僕と酒を飲もうって言ったのは、どうもそういう心配事を教えたかったらしいんだ。男の子ならいつか友達とそういう機会があるだろうって。その前に一度、どういう物だか試しておいた方がいいって」
肩をすくめて言葉を続ける。
「どうやら僕はそれほど強くないらしい。すぐに眠くなっちゃうんだ。それならそれでわかっていれば対処のしようがあるからね。──それに湯浅さんが言うには、酒を飲む時は絶対に一人で飲む癖をつけるなってさ。誰か気心の知れた友達と二人以上で飲めばいいって。そうすればきっと僕達が心配してるようなことにはならないって」
笑香は心からしみじみと、優しい兄のような湯浅が彼のそばにいてくれることに感謝した。自分の目の届かないところでも湯浅がいれば問題ない。史郎に何か問題があれば、きっと湯浅が自分にも連絡をしてくれるだろう。
「さっき、君が僕の部屋にいないことに気づいて、本当に心配した」
史郎がぽつりと言った。
「出て行く訳ないと思ったけど、君がいないだけで不安になる。ここにいる時は君に電話する九時が待ち遠しくてしかたがない。……一度君と電話してる時に親父と湯浅さんが帰って来て、邪魔されたことに腹を立てて、思わず怒鳴りつけてやった。そうしたら、帰って来るのが遅くなった」
笑香は小さくため息をついた。
やはり史郎は史郎だった。毎晩九時から十五分、史郎のスマホから笑香のスマホに直接電話がかかって来る。それは二人で決めたことだ。二人で決めたルールを破れば史郎がどれだけ怒るのか、笑香は骨身に染みていたため、それだけは毎日欠かさずにきちんと電話を受けていた。一度史郎が出した宿題を甘く見た笑香が忘れてしまい、本気で叱られたことがあるのだ。あの時は本当に怖かった。
ただルールさえ破らなければ史郎は基本的に笑香に優しい。笑香の他愛ない話でも面白がって聞いてくれるし、笑香が心から望むことなら、多少は文句を言いつつも笑香につきあってくれる。
春休み、二人でディズニーリゾートに出かけた時もそうだった。史郎は人混みが嫌いだし、行列に並ぶのも好きではない。本来インドア派な彼が──そんな彼なのに運動神経がいいなんて、神様はなんてもったいないことをするのだろう──笑香が喜ぶからと、自らクリスマスプレゼントにチケットを買ってくれたのだ。あの時は一日中園内を史郎の腕を引っ張って回り、本当に楽しかった。
──まあ最後が問題だったけど。
帰り際、「一日君につきあったんだから、最後にちょっと僕につきあえ」と言葉たくみに言いくるめられ、そのまま近くのラブホテルへと連れ込まれてしまったのだ。
初めて入るそういう場所に緊張しきった笑香に対し、多分史郎は入念に準備を整えていたのだろう。とても初めてとは思えないくらいにそのシステムに慣れていて、決められた時間までの間、存分に楽しんでいた。おかげで楽しかった一日の印象が最後に猥雑なものになってしまった。
肩をすくめて言葉を続ける。
「どうやら僕はそれほど強くないらしい。すぐに眠くなっちゃうんだ。それならそれでわかっていれば対処のしようがあるからね。──それに湯浅さんが言うには、酒を飲む時は絶対に一人で飲む癖をつけるなってさ。誰か気心の知れた友達と二人以上で飲めばいいって。そうすればきっと僕達が心配してるようなことにはならないって」
笑香は心からしみじみと、優しい兄のような湯浅が彼のそばにいてくれることに感謝した。自分の目の届かないところでも湯浅がいれば問題ない。史郎に何か問題があれば、きっと湯浅が自分にも連絡をしてくれるだろう。
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笑香は小さくため息をついた。
やはり史郎は史郎だった。毎晩九時から十五分、史郎のスマホから笑香のスマホに直接電話がかかって来る。それは二人で決めたことだ。二人で決めたルールを破れば史郎がどれだけ怒るのか、笑香は骨身に染みていたため、それだけは毎日欠かさずにきちんと電話を受けていた。一度史郎が出した宿題を甘く見た笑香が忘れてしまい、本気で叱られたことがあるのだ。あの時は本当に怖かった。
ただルールさえ破らなければ史郎は基本的に笑香に優しい。笑香の他愛ない話でも面白がって聞いてくれるし、笑香が心から望むことなら、多少は文句を言いつつも笑香につきあってくれる。
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