【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

28.柳沢笑香の完璧な恋人 28

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 胸倉をつかみかねないような笑香の激しい剣幕に、史郎は一瞬、呆気に取られた表情を見せた。だがすぐにいつもの彼にもどって、再びにやりと笑って見せる。

「まあ、そういうこと。一度ここで湯浅さんと酒を飲んだ時、ちょっとだけ口がすべって。大したことは言ってないよ。──とりあえず、避妊にだけは気を使えって湯浅さんにもクギを刺された」

 笑香は深く頭を抱えた。それだけ知られていれば十分だ。さらに史郎が、高校生にあるまじき飲酒を経験していることに気づいて、しかもそれに保護者であるはずの湯浅が一枚噛んでいることに困惑する。

──それに、「も」? 湯浅さんに「も」ってことは、つまり……。

 事実上、史郎の父親である雅史も、二人の関係を理解しているということだ。
 よく考えれば当たり前だ。つきあっている彼女が来るから家に帰って来るなと言われ、二晩も息子のために家を空けてやる父親が、そのことを知らない訳がない。
「すべて仕組まれていたことだ」と今さらながら笑香は悟り、怒りを通り越して力が抜けた。そのままソファに背中を預ける。

──ここの家の人は皆、史郎君に甘すぎる。

 笑香は目を閉じ、心に決めた。前言撤回だ。自分だけでも史郎に厳しく指導をしていかないと、彼がこのままつけ上がるだけだ。ここでこれだけわがまま勝手に彼が暮らしているのなら、笑香の家でこき使い、笑香が彼を邪険に扱っても何の問題もないはずだ。

「史郎君、こっちじゃ優等生どころか立派な不良じゃない」

 笑香が冷ややかにそう告げると、史郎はなぜかうれしそうな顔をした。

「飲酒に、不純異性交遊か。喫煙も一度試してみたけどあれは割に合わないな。取られる税金が高すぎて、金に火をつけて煙にしてるようなもんだ」

 笑香は強くこめかみを押さえた。これでコンプリートだ。

「……ここで何を勉強してるの」
「学校で習ったんだよ。僕がどこに通ってると思ってるんだ。男子校だぞ? 名門校なんて上辺だけでみんなやることはやってるよ。──ああ、不純異性交遊は別だ。遠距離恋愛中の彼女が東京にいるってだけで、僕は周りから一目置かれてる」

 くっくっと笑う史郎は本当に楽しげで、年相応の男子に見えた。前の学校とは違い、どうやら一緒に馬鹿なことをする悪友もそれなりにいるようだ。
  笑香は再度天井を見上げた。自分が心配してやることなんて、史郎には何一つない。

──でも、私は?

 一瞬ちくりと胸に針が刺さったような気がして、笑香は思わず首を横に振った。だめ。そんなこと、思っちゃいけない。

「笑香?」

 史郎が自分の名を呼んだ。少し首をかしげている。笑香は苦笑いをした。今日は史郎につきあってやろうと思ったはしからもうこれだ。
 笑香は軽く肩をすくめた。史郎のことだからよくわかっているだろうが、これだけは一言言っておきたい。

「でも、お酒だけはちょっと気をつけてね」

 笑香の言いたいことがわかったのか、史郎は優しく微笑んだ。
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