【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

42.懐古八景 2

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 だが、笑香は再び顔を上げた。脱力感は半端ないが、ここでいつまでもこうしていたら史郎が目を覚ましてしまう。

 自分がベッドの壁際にいるため、史郎を起こさないようにベッドの中から抜け出すのはなかなか至難の業だったが、笑香は何とかやり遂げた。やっとのことで部屋を出て裸のままで浴室へと急ぐ。他人の家で、こんな格好でうろうろするのはきまりが悪いが、昨夜着ていたはずの服が周囲に見当たらなかったのだ。

 とりあえず浴室の中に入り、ほっとため息をつく。だがシャワーを浴びようとした時、鏡に映る自身の姿に気づいて笑香はぎょっとした。
 白い裸体のそこかしこに、昨夜史郎が残したらしい愛撫の跡が色濃く残っている。胸に残った傷跡よりもそっちの方が気になるくらいだ。特に首筋に残った跡はまるで虫刺されのようになっていて、どう考えてもごまかすことができなかった。

──週明け、たしか学校で体育があったような……。

 さあっとその場で青ざめながらもとりあえずシャワーを浴びる。体に残る疲労感も熱いシャワーで何とか流され、笑香はようやく息をついた。昨夜、あまりにも強い力で史郎に抱きしめられたせいで、体中がきしんでいるような気がしたのだ。

 浴室から出て、史郎が教えてくれた場所からバスタオルを拝借する。あまり使いたくなかったが、確か自分の物はリビングに置きっ放しにしていたはずだ。着ていた服もリビングに脱ぎ捨てたままだと気がついて、笑香はバスタオルを体に巻くと浴室のドアに腕を伸ばした。
 その時、ものすごい勢いでドアが外から開けられた。

「……あ……」

 裸のままの史郎と目が合う。次の瞬間、飛びつかれるような形で激しく抱きしめられて、笑香はまた息が止まりそうになった。

「よかった……!」

 くぐもったかすれ声を出し、笑香の耳元で史郎がささやく。

「君に、逃げられたかと……良かった」

 笑香は言葉をつまらせた。

「だ、大丈夫だから。私は、ちゃんとここにいるから。──ごめん、しろうくん、くるしい」

 呼吸困難に陥る寸前で史郎の力がゆるめられた。だがそれでも腕を離さず、史郎は続けた。

「頼むよ。目が覚めて、君が隣にいないことに気がついて、心臓が止まりそうだった。今度こそ出て行ったのかと思って……。もう僕に何も言わずにどこにも行かないでくれ」

 哀願するような響きの声に、笑香は小さく微笑んだ。

「うん。大丈夫、もうどこにも行かないから。だから史郎君、離して。いつまでもこんな格好じゃ……」

 風邪引くよ、と言いかけた笑香の顎を彼が捕らえた。やるせなさそうな顔が近づき、あらがうこともできないままに唇が吐息でふさがれる。
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