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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
44.懐古八景 4
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「善光寺? ……そう言えばそんなこと言ってたな。行ったことない、興味ないし」
すげない史郎の返答に笑香は大きな声を上げた。
「ええー、行こうよ。せっかく近いんだし。お土産だって買いたいし、一応調べて来たんだから。お昼ご飯におそばが食べたいの」
笑香が続けてそうせがむと史郎は複雑そうな顔をした。それを見て、史郎が本当に今日は一日笑香とこのマンションで(多分、裸で)すごそうとしていたことを知り、笑香はさらに意志を固くした。
「ほら、史郎君も服を着て。朝ご飯、私が作るから」
一度ため息をついた後、史郎があきらめた表情を作る。
「──いいよ。僕がやるから君は自分の支度をしろよ」
笑香に持っていたボトルを手渡す。
「その代わり、帰って来たらこの前渡した宿題の答え合わせをやるぞ。ちゃんと持って来たんだろうな?」
じろりと史郎に見下ろされ、笑香は視線を泳がせた。
「……え?」
「数学と、世界史。君、何で世界史選択なんだ? そんなに苦手なら違う物にすればよかったのに」
教師の顔になった彼氏に笑香は首をすくめて答えた。
「だって日本史もっと苦手だし。世界史だったらまだ英語に関係あるかなって……」
「範囲が広すぎるんだよ。おかげで僕まで世界史選択だ。僕は公民が得意だったのに」
ぼやく史郎に笑香はくすっと笑いを漏らした。何でもこなせてしまう彼にも得意不得意があったのだ。
史郎がクローゼットの前に立ち、服を着ながらつぶやいた。
「そば……蕎麦屋なんて知らないな。待てよ……」
笑香がタオルを体に巻きつけ、持って来たキャリーケースから上着を引っ張り出していると、先に服を着終えた史郎が、机上に投げ出されたままの自分のスマホを手に取った。ベッドに腰かけ、誰かに電話をしているようだ。
──湯浅さんかな?
笑香がぼんやり思っていると、史郎は電話の相手に言った。
「──ああ、俺だけど。ちょっと聞きたいことが……」
笑香はぽかんと口を開けた。史郎が相手に切り出した言葉に思わずまじまじと彼を見る。
「うん。そう、それで……。ああ、それならわかる。──わかったよ、来月の練習メニュー、俺が代わりに考えるから。じゃ」
スマホを耳から離した史郎に、笑香は思わずたずねていた。
「……俺?」
一瞬うっと言葉をつまらせ、史郎は笑香の顔を見た。
「仕方ないだろ。自然にそうなったんだ、友達相手と君とじゃ違うよ」
笑香は微笑んだ。史郎が以前の彼とは違って、自分の姿を取り繕わずに、今の学校で友人達と過ごしていることに安堵する。それだけでも、史郎がここで暮らしていることが彼にとっては良かったのだと思えた。
史郎がふっとその唇に笑みを浮かべて口を開いた。
「君にも言わなかったか? サッカー部の部長をやってる桜田っていうんだ。人懐こいやつで、編入生の僕にも遠慮なく声をかけて来て……。結局サッカー部の助っ人をしてるって言っただろ」
すげない史郎の返答に笑香は大きな声を上げた。
「ええー、行こうよ。せっかく近いんだし。お土産だって買いたいし、一応調べて来たんだから。お昼ご飯におそばが食べたいの」
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「ほら、史郎君も服を着て。朝ご飯、私が作るから」
一度ため息をついた後、史郎があきらめた表情を作る。
「──いいよ。僕がやるから君は自分の支度をしろよ」
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「その代わり、帰って来たらこの前渡した宿題の答え合わせをやるぞ。ちゃんと持って来たんだろうな?」
じろりと史郎に見下ろされ、笑香は視線を泳がせた。
「……え?」
「数学と、世界史。君、何で世界史選択なんだ? そんなに苦手なら違う物にすればよかったのに」
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「だって日本史もっと苦手だし。世界史だったらまだ英語に関係あるかなって……」
「範囲が広すぎるんだよ。おかげで僕まで世界史選択だ。僕は公民が得意だったのに」
ぼやく史郎に笑香はくすっと笑いを漏らした。何でもこなせてしまう彼にも得意不得意があったのだ。
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「そば……蕎麦屋なんて知らないな。待てよ……」
笑香がタオルを体に巻きつけ、持って来たキャリーケースから上着を引っ張り出していると、先に服を着終えた史郎が、机上に投げ出されたままの自分のスマホを手に取った。ベッドに腰かけ、誰かに電話をしているようだ。
──湯浅さんかな?
笑香がぼんやり思っていると、史郎は電話の相手に言った。
「──ああ、俺だけど。ちょっと聞きたいことが……」
笑香はぽかんと口を開けた。史郎が相手に切り出した言葉に思わずまじまじと彼を見る。
「うん。そう、それで……。ああ、それならわかる。──わかったよ、来月の練習メニュー、俺が代わりに考えるから。じゃ」
スマホを耳から離した史郎に、笑香は思わずたずねていた。
「……俺?」
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「仕方ないだろ。自然にそうなったんだ、友達相手と君とじゃ違うよ」
笑香は微笑んだ。史郎が以前の彼とは違って、自分の姿を取り繕わずに、今の学校で友人達と過ごしていることに安堵する。それだけでも、史郎がここで暮らしていることが彼にとっては良かったのだと思えた。
史郎がふっとその唇に笑みを浮かべて口を開いた。
「君にも言わなかったか? サッカー部の部長をやってる桜田っていうんだ。人懐こいやつで、編入生の僕にも遠慮なく声をかけて来て……。結局サッカー部の助っ人をしてるって言っただろ」
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