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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
68.懐古八景 28
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店で必要な物を買い込み、史郎のマンションへと帰る。目当ての物は確かにすべてスーパーマーケットにそろっていて、笑香は感心してしまった。
「あと、マカロンだっけ? それは僕が後で買って、来週持って行ってやるから」
ビニール袋をぶら下げた史郎にさりげない調子でそう言われ、笑香は彼の横顔を見直した。
どうやら彼が家に来ることに迷惑そうな態度を見せたのが、大分効いているらしい。今度は自分を「物でつる」という新しい手段を編み出した彼に、笑香はおかしさを隠し切れなかった。
二人でマンションにもどった後、笑香が部屋でキャリーケースの中身を整理していると、買った食材を片付け終わった史郎が部屋に入って来た。すわり込んでいる笑香の横に何も言わずに膝をつき、無造作にその手をのばして笑香の足首を捕まえる。
「え!? え、ちょっと……!」
なんの前触れもない彼の行動に、動揺した笑香はあわてて両手でスカートのすそを押さえた。
史郎はつかんだ足首を引きよせ、笑香の薄い靴下を下ろした。赤くこすれたかかとを眺め、大きな手のひらを離してつぶやく。
「足。やっぱり靴ずれができてる。ほら、絆創膏」
ぶっきらぼうにそれだけ伝え、持っていた絆創膏を二枚、笑香に手渡してくれる。
──史郎君、気づいてくれてたんだ。
思い起こせば、史郎はバスを降りた頃から笑香が歩く速度に合わせ、ゆっくり歩いていたような気がする。正体を明かす以前のような彼の優しさを前にして、笑香は少なからず感動した。立ち上がった史郎の顔を感謝の思いを込めて見つめる。
すると、史郎は唇の端をやや嫌らしくつり上げて言った。
「絆創膏、一枚につきキス一回ってことで。二枚だから二回だ。場所は僕が指定するから」
「……場所?」
感動が薄れてしまった笑香が眉をしかめると、史郎は完璧な笑顔で答えた。
「キスする場所が口だとは限らないだろ? 君は僕が教えてやらなきゃ、口がどこだかもわからないみたいだし」
言葉の意味が理解できずに笑香はまばたきを繰り返した。その後、以前史郎と行った水族館でのデートの際に、屋外で交わした彼との会話をやっと思い出して赤面する。
──まったく、本当にこの人は……。
「どうする? 絆創膏のお礼だったら、別に今でもいいんだけど。後がよければ宿題出して。ちゃんと持って来たんだろ?」
「あと、マカロンだっけ? それは僕が後で買って、来週持って行ってやるから」
ビニール袋をぶら下げた史郎にさりげない調子でそう言われ、笑香は彼の横顔を見直した。
どうやら彼が家に来ることに迷惑そうな態度を見せたのが、大分効いているらしい。今度は自分を「物でつる」という新しい手段を編み出した彼に、笑香はおかしさを隠し切れなかった。
二人でマンションにもどった後、笑香が部屋でキャリーケースの中身を整理していると、買った食材を片付け終わった史郎が部屋に入って来た。すわり込んでいる笑香の横に何も言わずに膝をつき、無造作にその手をのばして笑香の足首を捕まえる。
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なんの前触れもない彼の行動に、動揺した笑香はあわてて両手でスカートのすそを押さえた。
史郎はつかんだ足首を引きよせ、笑香の薄い靴下を下ろした。赤くこすれたかかとを眺め、大きな手のひらを離してつぶやく。
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ぶっきらぼうにそれだけ伝え、持っていた絆創膏を二枚、笑香に手渡してくれる。
──史郎君、気づいてくれてたんだ。
思い起こせば、史郎はバスを降りた頃から笑香が歩く速度に合わせ、ゆっくり歩いていたような気がする。正体を明かす以前のような彼の優しさを前にして、笑香は少なからず感動した。立ち上がった史郎の顔を感謝の思いを込めて見つめる。
すると、史郎は唇の端をやや嫌らしくつり上げて言った。
「絆創膏、一枚につきキス一回ってことで。二枚だから二回だ。場所は僕が指定するから」
「……場所?」
感動が薄れてしまった笑香が眉をしかめると、史郎は完璧な笑顔で答えた。
「キスする場所が口だとは限らないだろ? 君は僕が教えてやらなきゃ、口がどこだかもわからないみたいだし」
言葉の意味が理解できずに笑香はまばたきを繰り返した。その後、以前史郎と行った水族館でのデートの際に、屋外で交わした彼との会話をやっと思い出して赤面する。
──まったく、本当にこの人は……。
「どうする? 絆創膏のお礼だったら、別に今でもいいんだけど。後がよければ宿題出して。ちゃんと持って来たんだろ?」
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