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その後
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「そろそろ、兵を寄越せと言われる頃なのだよ」
パチパチと薪のはぜる音を聞きながら、寝椅子にゆったりと横たわった男が傍らのゴブレットを手に独りごちた。流れるような白金の髪をひとつに束ねた、未だ二十代半ばほどにしか見えない主人、この地を治める領主、シグルドだ。
シグルドは思わず顔を上げたオルランドにくすりと笑ってゴブレットのワインを飲み干し、空になったそれを振る。
「相手はもちろんローマの御大に忠実なる面々だとか。
師父オルランドはどう思う?」
長衣の裾をぐっと握り締めてオルランドは口元を引き結んだ。
教会の堕落をあげつらわれるようになって、いったい何年経ったのか。
「――主は、正しきものの味方です」
「つまらない答えだ。師父はあいかわらず清く正しい神の僕らしい」
ふん、と鼻を鳴らして、シグルドはゴブレットをポイと放った。オルランドは慌ててそれを受け止め、傍らのテーブルに置く。
大陸の南方で、教会と聖職者たちの糾弾に端を発する戦いが起こったのは、昨年のことだったか。
異教徒の討伐でもない、同じ神を信仰する者同士がなぜ争うのか。
「もっとも、師父はこのわたしの下僕でもあるわけだが……なあ、師父オルランド。お前に神の声は聞こえたか?」
「尊き神のお声など、そうそう聞こえるわけがありません」
「それは残念だ。此度の戦いのどちらの側に理があるのか……己の信徒同士が戦う様を眺めてどのような気分かと、神に訊いてみたいと思ったのだがな。
まあしかし、オルランドの言のとおり戦いに勝った側が正しいというなら、つまり神は戦いに飢えているというわけか」
眉をひそめて口を噤むオルランドに、シグルドはくつくつと笑う。
聖なる書物とありがたがっているが、所詮は神の子を自称する人間の言葉を記したものでしかない。その解釈のどうのこうの程度で、よくぞここまで争えるものだと、シグルドは感心する。
そこに、コツコツと扉が叩かれた。
シグルドが「入れ」と声を掛ける。
ギィ、と開いた扉の向こうにいたのは、若い娘を連れた使用人頭だった。
「彼女は……」
「税の代わりにと連れてこられた娘だ」
使用人頭に背を押された娘は、びくりと震えて一歩部屋へと踏み込んだ。その背後でばたりと扉が閉まり、慌てて振り返る。
くすんだ金の髪に痩せた身体と、そばかすの浮いた幼い顔。年の頃は、どう見ても十五がいいところか。
「娘、ここへおいで」
シグルドが立ち上がり、にこりと笑って手招いた。
娘がごくりと喉を鳴らす。シグルドの淡い水色の目に見つめられて、勝手に足が前へと進み出す。
「だ、旦那さま、あたし、ここで何を……」
「怯えることはない。お前の名は何という?」
「あ、あたし、ミア、です――あっ」
シグルドは手の届くところまで来たミアの腕を掴んで引き寄せると、あっという間に腕の中にミアを納めてしまった。
驚きと恐怖で硬直する娘の左胸を、シグルドの片手がするりと撫でる。
「ひっ」
「ずいぶんと痩せているようだ」
「領主殿、そのように婦女子にみだりに触れるなど、主が禁じておられ――」
「触れた程度で何かが起こるわけでも無かろうが。そもそも、この娘は納めるはずだった税の代わりにここへ来たのだが?」
「税の代わりとは、何を……」
「もちろん、わたしを楽しませるためだよ」
娘を背後から抱き締めた領主が、その耳元に口を寄せる。柔らかな耳朶を舌でくすぐり軽く食むと、娘はまた「ひ」と声を漏らした。
けれど、構わずに耳朶をくすぐり続けられて、娘はとうとう顔を赤らめて顔をうつ向けてしまう。
「領主殿」
「別に純潔を散らそうというわけではない。神は純潔にこだわっているのだろう? それに、無闇に家畜を損なうことは、わたしも望んでいない」
領主の手が、するりと帯を解く。
あちこちの紐を緩められ、娘はたちまち肌を露わにされていく。
「だ、旦那、さま……あたし、何を……」
目を潤ませて震える娘に、シグルドは、にいっと笑ってみせる。
娘の衣服はすっかり剥ぎ取られていた。
「領主殿!」
「わたしは“家畜”を大切に扱う主義だ。人間だって、牛や羊を大切に扱うではないか。なにしろ、家畜を無闇に損なえば己が飢えるのだからな」
慎ましく目を逸らしたまま、オルランドが咎めるように呼び掛けるが、シグルドは笑うだけだ。
「――ミア」
甘い声で囁いて、娘を抱えたままシグルドは寝椅子に腰を下ろす。
「怖がることはない。少し味見をするだけだ」
痩せた娘の身体には、あばらが浮いていた。
その上にほんのり膨らんだ胸の頂きをシグルドの指が掠めると、娘の身体がぴくんと震えて飛び上がった。
抱き締められた娘の首を、シグルドの舌が這う。
「あ……」
シグルドはゆっくりと娘の首を舐め上げていく。
思わず目をやれば、シグルドの目が笑みに細められていた。ひらめく赤い舌と唇の間に白く尖った歯がちらりと見える。
知らず、オルランドの喉がごくりと鳴った。慌ててまた目を逸らして、「領主殿」と呼びかける。
だが、シグルドに応える気は無いようだった。
娘の顔にはどこか恍惚としたような表情が浮かび、は、とほんのりと熱を感じる吐息がこぼれ落ちて、また、ふるりと身体が震える。
シグルドの指が触れている胸の頂きは、いつの間にか固く尖っていた。
「は、あ……っ」
するりとシグルドの指が滑り降りて、娘の片足を持ち上げる。
股を広げるように自分の膝に娘の脚を引っ掛けて、オルランドに笑みを向けながら、娘の秘めた場所に指を滑らせた。ぬるぬるとした液体が湧き出るその場所から、くちゅりとかすかな音が聞こえる。
「師父、この娘のここは、ずいぶんともの欲しそうだ」
「あ、あっ」
水音はすぐに大きくなっていった。
くちゅくちゅと掻き混ぜる音に、娘の喘ぐ声も混じり始める。
「師父、目を逸らしてどうした? この淫らな娘に、神の教えとやらを説いてやらなくても良いのか?」
「は、あっ……や、なんで……あたし……」
娘はシグルドの手を逃れようと、ひくひく痙攣する身体を捩る。だが、軽く押さえているだけのはずの手は、びくともしない。
「師父――オルランド」
はっと、オルランドが視線を戻す。
にやにやと笑うシグルドの目は血のように紅く、底光りしている。
「このまま達することもできずに嬲られるだけでは哀れだろう? オルランド、お前がミアに慈悲を与えてやれ」
「主、主よ……」
「神がどうすべきかを答えてくれるまで、娘にこのまま待てと? 師父は嗜虐趣味があるとみえる」
「あ、ひっ」
くつくつと笑いながら、シグルドは指先をほんの少しだけ内に沈めた。
娘の身体がひくんと跳ねる。
「さあ、オルランド。慈悲だよ。慈悲を与えてやるのだ」
シグルドが、また娘の首をぺろりと舐めた。
脚の間の秘めた場所からは、たらたらと透明な雫が溢れている。
オルランドはふらふらと引き寄せられて、娘の前に膝をついた。それから、少しの逡巡の後に、シグルドの指が示す場所へ顔を寄せて舌を伸ばす。
「んっ、あっ……ああっ、師父さま、そこぉっ!」
敏感な肉芽をぬるりと舐められて、娘の腰が跳ねた。湧き出た透明な粘液が、とろりとこぼれ落ちる。
ぬるり、ぬるりと、捏ねられ擽られて、娘はすぐにびくびくと痙攣する。欲情に蕩けた目がオルランドをうっとりと見下ろした。
「は、あ……もっと……」
娘の呟きに、シグルドがくすりと笑った。
「オルランド」
呼ばれて、オルランドがのろのろと顔を上げる。
その視線の先には、シグルドが娘の首に舌を這わせていた。
「美味しそうな娘だと思わないか?」
ごくり、とオルランドが喉を鳴らす。
「お前はしばらく食事をしていなかったな」
「それ、は……」
「遠慮することはない。それとも、ミアはこのままで構わないと?」
息を荒げた娘は、「もっと」とうわ言のように繰り返している。
シグルドは、その娘の首筋に牙の先を掠らせた。
「ひぁ……っ!」
娘が大きく背をしならせて、びくびくと痙攣する。
「ミア、師父におねだりをするといい。こんな半端は嫌だと、天国を見せてほしいと……おねだりがうまくいけば、師父が叶えてくれるだろう」
「あ……あたし……師父さま、あたし、もっと……さっきみたいな……ああ、師父さま。お願いです、師父さま」
娘の首に紅い色が滲んだ。
その紅と匂いに誘われて、また、オルランドの喉が鳴る。
娘の手が誘うように伸ばされて、オルランドの頬に触れる。
「師父さま、あたし……」
オルランドは立ち上がった。
娘から視線を外さず、覆い被さるようにしてその首元に口を寄せる。
「あ、師父さま……し……ひ、あ、あ、あああああ!」
* * *
ピシ、と音が鳴る。
小さなステンドグラスと磔刑の十字架に見下ろされ、祭壇の前で祈りを呟きながら、オルランドは自身を鞭打っていた。
「主よ、私は、また……」
悪魔の手に落ちてしまった自分の祈りは、天に届いているのか。
自分は、未だ神の子羊であるのか。
わからないのに、この自罰はやめられない。
革を固めた鞭で自身を力いっぱいに打つ。
本来なら、自分を眠れないほどの痛みで何日も苛むはずの傷なのに、悪魔に落とされたこの身体にはうっすらと跡がつくだけだ。
「師父」
急にかかった声に、オルランドはハッと振り向いた。
聖堂の入り口でシグルドが笑っていた。
「師父は相変わらずだ。それほど、己を鞭打つ行為は甘美らしい」
「そのようなものでは……」
「何年も何百年もやめられないほどに……そう、女の肉などよりもよほど甘美なのだろう? その痛みは」
「そのようなものではありません!」
くつくつと笑いながら歩み寄ったシグルドが、オルランドの前に膝をつく。
「本当に?」
シグルドの手が伸ばされた。
身を捩る間も無く、長衣の前を押し上げるオルランドのそれを、シグルドの指がするりと撫で上げる。
「師父の身体のほうが、よほど正直だ」
く、と歯を食いしばるオルランドの顎を持ち上げて喉を露わにすると、シグルドは襟元のボタンを外し、少し乱暴に押し広げ、首元までを曝け出させた。
「正直でない師父には、わたしが罰を与えなくてはな」
「う、あ……」
口を寄せたシグルドの吐息を感じて、オルランドの身体がぴくりと震える。
何かを期待するかのように、心臓の鼓動が跳ね上がり……その脈動の変化を感じたシグルドが、楽しげに笑って舌を這わせた。
続くちくりという痛みと途方も無い快楽に、オルランドはたちまち天の高みへと押し上げられてしまう。
手の鞭がぽろりと落ちる。
「あ……あ……主よ、私は……」
シグルドはすぐに離れて立ち上がる。
恍惚に顔を染めたオルランドがぼんやりと見上げると、紅い双眸が優しく笑むように細められていた。
パチパチと薪のはぜる音を聞きながら、寝椅子にゆったりと横たわった男が傍らのゴブレットを手に独りごちた。流れるような白金の髪をひとつに束ねた、未だ二十代半ばほどにしか見えない主人、この地を治める領主、シグルドだ。
シグルドは思わず顔を上げたオルランドにくすりと笑ってゴブレットのワインを飲み干し、空になったそれを振る。
「相手はもちろんローマの御大に忠実なる面々だとか。
師父オルランドはどう思う?」
長衣の裾をぐっと握り締めてオルランドは口元を引き結んだ。
教会の堕落をあげつらわれるようになって、いったい何年経ったのか。
「――主は、正しきものの味方です」
「つまらない答えだ。師父はあいかわらず清く正しい神の僕らしい」
ふん、と鼻を鳴らして、シグルドはゴブレットをポイと放った。オルランドは慌ててそれを受け止め、傍らのテーブルに置く。
大陸の南方で、教会と聖職者たちの糾弾に端を発する戦いが起こったのは、昨年のことだったか。
異教徒の討伐でもない、同じ神を信仰する者同士がなぜ争うのか。
「もっとも、師父はこのわたしの下僕でもあるわけだが……なあ、師父オルランド。お前に神の声は聞こえたか?」
「尊き神のお声など、そうそう聞こえるわけがありません」
「それは残念だ。此度の戦いのどちらの側に理があるのか……己の信徒同士が戦う様を眺めてどのような気分かと、神に訊いてみたいと思ったのだがな。
まあしかし、オルランドの言のとおり戦いに勝った側が正しいというなら、つまり神は戦いに飢えているというわけか」
眉をひそめて口を噤むオルランドに、シグルドはくつくつと笑う。
聖なる書物とありがたがっているが、所詮は神の子を自称する人間の言葉を記したものでしかない。その解釈のどうのこうの程度で、よくぞここまで争えるものだと、シグルドは感心する。
そこに、コツコツと扉が叩かれた。
シグルドが「入れ」と声を掛ける。
ギィ、と開いた扉の向こうにいたのは、若い娘を連れた使用人頭だった。
「彼女は……」
「税の代わりにと連れてこられた娘だ」
使用人頭に背を押された娘は、びくりと震えて一歩部屋へと踏み込んだ。その背後でばたりと扉が閉まり、慌てて振り返る。
くすんだ金の髪に痩せた身体と、そばかすの浮いた幼い顔。年の頃は、どう見ても十五がいいところか。
「娘、ここへおいで」
シグルドが立ち上がり、にこりと笑って手招いた。
娘がごくりと喉を鳴らす。シグルドの淡い水色の目に見つめられて、勝手に足が前へと進み出す。
「だ、旦那さま、あたし、ここで何を……」
「怯えることはない。お前の名は何という?」
「あ、あたし、ミア、です――あっ」
シグルドは手の届くところまで来たミアの腕を掴んで引き寄せると、あっという間に腕の中にミアを納めてしまった。
驚きと恐怖で硬直する娘の左胸を、シグルドの片手がするりと撫でる。
「ひっ」
「ずいぶんと痩せているようだ」
「領主殿、そのように婦女子にみだりに触れるなど、主が禁じておられ――」
「触れた程度で何かが起こるわけでも無かろうが。そもそも、この娘は納めるはずだった税の代わりにここへ来たのだが?」
「税の代わりとは、何を……」
「もちろん、わたしを楽しませるためだよ」
娘を背後から抱き締めた領主が、その耳元に口を寄せる。柔らかな耳朶を舌でくすぐり軽く食むと、娘はまた「ひ」と声を漏らした。
けれど、構わずに耳朶をくすぐり続けられて、娘はとうとう顔を赤らめて顔をうつ向けてしまう。
「領主殿」
「別に純潔を散らそうというわけではない。神は純潔にこだわっているのだろう? それに、無闇に家畜を損なうことは、わたしも望んでいない」
領主の手が、するりと帯を解く。
あちこちの紐を緩められ、娘はたちまち肌を露わにされていく。
「だ、旦那、さま……あたし、何を……」
目を潤ませて震える娘に、シグルドは、にいっと笑ってみせる。
娘の衣服はすっかり剥ぎ取られていた。
「領主殿!」
「わたしは“家畜”を大切に扱う主義だ。人間だって、牛や羊を大切に扱うではないか。なにしろ、家畜を無闇に損なえば己が飢えるのだからな」
慎ましく目を逸らしたまま、オルランドが咎めるように呼び掛けるが、シグルドは笑うだけだ。
「――ミア」
甘い声で囁いて、娘を抱えたままシグルドは寝椅子に腰を下ろす。
「怖がることはない。少し味見をするだけだ」
痩せた娘の身体には、あばらが浮いていた。
その上にほんのり膨らんだ胸の頂きをシグルドの指が掠めると、娘の身体がぴくんと震えて飛び上がった。
抱き締められた娘の首を、シグルドの舌が這う。
「あ……」
シグルドはゆっくりと娘の首を舐め上げていく。
思わず目をやれば、シグルドの目が笑みに細められていた。ひらめく赤い舌と唇の間に白く尖った歯がちらりと見える。
知らず、オルランドの喉がごくりと鳴った。慌ててまた目を逸らして、「領主殿」と呼びかける。
だが、シグルドに応える気は無いようだった。
娘の顔にはどこか恍惚としたような表情が浮かび、は、とほんのりと熱を感じる吐息がこぼれ落ちて、また、ふるりと身体が震える。
シグルドの指が触れている胸の頂きは、いつの間にか固く尖っていた。
「は、あ……っ」
するりとシグルドの指が滑り降りて、娘の片足を持ち上げる。
股を広げるように自分の膝に娘の脚を引っ掛けて、オルランドに笑みを向けながら、娘の秘めた場所に指を滑らせた。ぬるぬるとした液体が湧き出るその場所から、くちゅりとかすかな音が聞こえる。
「師父、この娘のここは、ずいぶんともの欲しそうだ」
「あ、あっ」
水音はすぐに大きくなっていった。
くちゅくちゅと掻き混ぜる音に、娘の喘ぐ声も混じり始める。
「師父、目を逸らしてどうした? この淫らな娘に、神の教えとやらを説いてやらなくても良いのか?」
「は、あっ……や、なんで……あたし……」
娘はシグルドの手を逃れようと、ひくひく痙攣する身体を捩る。だが、軽く押さえているだけのはずの手は、びくともしない。
「師父――オルランド」
はっと、オルランドが視線を戻す。
にやにやと笑うシグルドの目は血のように紅く、底光りしている。
「このまま達することもできずに嬲られるだけでは哀れだろう? オルランド、お前がミアに慈悲を与えてやれ」
「主、主よ……」
「神がどうすべきかを答えてくれるまで、娘にこのまま待てと? 師父は嗜虐趣味があるとみえる」
「あ、ひっ」
くつくつと笑いながら、シグルドは指先をほんの少しだけ内に沈めた。
娘の身体がひくんと跳ねる。
「さあ、オルランド。慈悲だよ。慈悲を与えてやるのだ」
シグルドが、また娘の首をぺろりと舐めた。
脚の間の秘めた場所からは、たらたらと透明な雫が溢れている。
オルランドはふらふらと引き寄せられて、娘の前に膝をついた。それから、少しの逡巡の後に、シグルドの指が示す場所へ顔を寄せて舌を伸ばす。
「んっ、あっ……ああっ、師父さま、そこぉっ!」
敏感な肉芽をぬるりと舐められて、娘の腰が跳ねた。湧き出た透明な粘液が、とろりとこぼれ落ちる。
ぬるり、ぬるりと、捏ねられ擽られて、娘はすぐにびくびくと痙攣する。欲情に蕩けた目がオルランドをうっとりと見下ろした。
「は、あ……もっと……」
娘の呟きに、シグルドがくすりと笑った。
「オルランド」
呼ばれて、オルランドがのろのろと顔を上げる。
その視線の先には、シグルドが娘の首に舌を這わせていた。
「美味しそうな娘だと思わないか?」
ごくり、とオルランドが喉を鳴らす。
「お前はしばらく食事をしていなかったな」
「それ、は……」
「遠慮することはない。それとも、ミアはこのままで構わないと?」
息を荒げた娘は、「もっと」とうわ言のように繰り返している。
シグルドは、その娘の首筋に牙の先を掠らせた。
「ひぁ……っ!」
娘が大きく背をしならせて、びくびくと痙攣する。
「ミア、師父におねだりをするといい。こんな半端は嫌だと、天国を見せてほしいと……おねだりがうまくいけば、師父が叶えてくれるだろう」
「あ……あたし……師父さま、あたし、もっと……さっきみたいな……ああ、師父さま。お願いです、師父さま」
娘の首に紅い色が滲んだ。
その紅と匂いに誘われて、また、オルランドの喉が鳴る。
娘の手が誘うように伸ばされて、オルランドの頬に触れる。
「師父さま、あたし……」
オルランドは立ち上がった。
娘から視線を外さず、覆い被さるようにしてその首元に口を寄せる。
「あ、師父さま……し……ひ、あ、あ、あああああ!」
* * *
ピシ、と音が鳴る。
小さなステンドグラスと磔刑の十字架に見下ろされ、祭壇の前で祈りを呟きながら、オルランドは自身を鞭打っていた。
「主よ、私は、また……」
悪魔の手に落ちてしまった自分の祈りは、天に届いているのか。
自分は、未だ神の子羊であるのか。
わからないのに、この自罰はやめられない。
革を固めた鞭で自身を力いっぱいに打つ。
本来なら、自分を眠れないほどの痛みで何日も苛むはずの傷なのに、悪魔に落とされたこの身体にはうっすらと跡がつくだけだ。
「師父」
急にかかった声に、オルランドはハッと振り向いた。
聖堂の入り口でシグルドが笑っていた。
「師父は相変わらずだ。それほど、己を鞭打つ行為は甘美らしい」
「そのようなものでは……」
「何年も何百年もやめられないほどに……そう、女の肉などよりもよほど甘美なのだろう? その痛みは」
「そのようなものではありません!」
くつくつと笑いながら歩み寄ったシグルドが、オルランドの前に膝をつく。
「本当に?」
シグルドの手が伸ばされた。
身を捩る間も無く、長衣の前を押し上げるオルランドのそれを、シグルドの指がするりと撫で上げる。
「師父の身体のほうが、よほど正直だ」
く、と歯を食いしばるオルランドの顎を持ち上げて喉を露わにすると、シグルドは襟元のボタンを外し、少し乱暴に押し広げ、首元までを曝け出させた。
「正直でない師父には、わたしが罰を与えなくてはな」
「う、あ……」
口を寄せたシグルドの吐息を感じて、オルランドの身体がぴくりと震える。
何かを期待するかのように、心臓の鼓動が跳ね上がり……その脈動の変化を感じたシグルドが、楽しげに笑って舌を這わせた。
続くちくりという痛みと途方も無い快楽に、オルランドはたちまち天の高みへと押し上げられてしまう。
手の鞭がぽろりと落ちる。
「あ……あ……主よ、私は……」
シグルドはすぐに離れて立ち上がる。
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