Fallen

ぎんげつ

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中篇

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 片手に固く十字架を握り締め、オルランドは顔を寄せようとする娘を遠ざけようと、必死に振り払っていた。
 そのふたりのようすに、領主はまたくすりと笑う。

「主とやらは全知全能だというが、なぜ人間に無駄な試練を課すのだろうな」
「何を……主を、冒瀆するつもりなのですか」
「いや? ただ、外からやってきたぽっと出が、全知全能などとはずいぶん大きく出たものだと不思議なだけだよ」

 領主の言い草に、オルランドは思い切り顔を顰める。神を貶める言葉は、見逃すべきものではなかった。この辺境の教化は、やはり十分でないらしい。

「主は、我らがより高みを目指し、より良きものとなれるよう……」
「ドリス、手伝ってあげよう」

 オルランドの言葉をろくに聞きもせず、領主は背後に回るとオルランドの腕をぐいと掴みあげた。
 細身でろくに鍛えてなさそうに見えるのに、その力は意外に強い。

「領主殿、何を……」
「どうにも往生際が悪い師父を、押さえ込んだだけだよ。
 ドリス。続きを」
「はい、シグルド様」

 しゅるりと音を立てて、腰紐を解いて落とす。チュニックを捲り上げ、トラウザーズの紐を緩め、瞬く間にオルランドを暴いていく。

「やめ、やめなさい! 不埒なことは、やめるんだ!」
「でも、師父様のここ、こんなに……」
「やめ……あ、ぅ……っ」

 勃ち上がり始めたそこに不意に触れられて、びくりと震える。押さえられた腕はびくともせず、娘が乗り上げた脚もうまく動かせない。
 瞬く間に痛いくらい膨れ上がったそこに、意識が集中してしまう。ちろりと唇を舐める娘の舌に視線を奪われて、ごくりと喉を鳴らしてしまう。

 娘がじっとオルランドを見つめ、はあっと息を吐いた。
 つ、と伸ばした指先にどくどく脈打つ太杭をゆっくりとなぞられ、声を上げそうになってオルランドを歯を食いしばる。

「ドリス、師父はずいぶんと興奮しておられるようだ」

 今度はぎゅっと握られる。溢れ出した雫を指先でぬりこめるように先端をこね回し、幹を擦られる。真っ赤に染まった顔に汗を浮かべ、オルランドは必死に堪えようと、ぶつぶつと祈りの言葉を呟いた。

「師父オルランド」

 耳にふっと息を吹きかけられて、またびくりと身体が震えた。

「口ではなんと言おうと、お前の身体はとても正直だ」
「あ……っは、う、あああっ」

 ぬるりと生温かく濡れたものが耳を這い、ちくりという刺激とぞくぞくと背を駆け上がる。
 どうしようもない衝動に、オルランドは反射的に“出てしまう”と思ったが遅かった。心臓がどくんと大きく鼓動を打ち、それに合わせてどくどくと噴出した白濁が娘の衣服を汚してしまった。

「おやおや、堪え性のない」
「師父様ったら」

 今、何が起こったのかと惚けるオルランドを、領主と娘はくすくす笑う。

「な、こんな……主よ、わ、私をお許し……」
「ドリス、服が汚れてしまったね。脱いだほうがいい」
「はい」

 何のためらいもなく、娘はさっさと服を脱ぎ捨ててしまう。一糸纏わぬ裸となった娘から、オルランドはさっと目を逸らした。

「師父も、この服はどうにも邪魔だ」

 腕を押さえたまま、抵抗するオルランドに頓着せず、領主が捲り上げたチュニックを乱暴に引っ張った。身体を軽々と持ち上げてチュニックもトラウザーズも半ば以上引き抜き、腕や脚に絡まったまま取り残す。

 何もかもを暴かれて心もとないというのに、股間のモノはそそり勃ったまま、露までを浮かべていた。

「どうやら師父は乱暴にされるほうが好きらしい」
「何を、そんな、そんなことは……」

 服を絡ませたままの腕を背後から押さえながら、領主が囁く。

「脚の痕は鞭で打ったものだね。それも、他人ではなく自分で。神に己の罪を告白しつつ己に罰を与えて……どうだった?」
「――どう?」

 焦りか動揺か、オルランドの背を汗が伝う。どくどくと心臓が脈打ち、そそり勃ったモノが痛いほどに張り詰めているのを感じる。
 膝を割って、娘が跪く。

「己自身を自らが罰するという行為は、とてもとても甘い快楽を伴うものではなかったかと、尋ねているのだ」

 オルランドの顔にカッと血が上る。
 心臓の鼓動が激しくなり、汗が滲む。

「師父オルランド。人間というものは、苦痛には抗えても快楽には抗えないものなのだと知っているか?」

 背後から腕が絡みついて、耳に低い囁きが落ちる。
 これは蛇の囁きだ。聞いてはいけない。
 そう思うのに、領主の声は甘く染み込んでいく。

「それとも、敬虔な神の使徒たる師父オルランドなら、耐えられるのかな」

 張り詰めた鋒に、やわらかく温かいものが触れた。反射的に視線を向けると、そこには自身に唇を寄せる娘がいて……。

「やっ、やめ、やめ……ああっ」

 唇を割って差し出された赤い舌が、ぬるり、ぬるりとオルランド自身を撫でる。

「う、は、やめ、ああっ、主よ、あああああ」

 びくびくと動く腰を止めることができない。もっと強い刺激が欲しくて、突き出そうとしてしまう。

「ドリス。すぐに果ててしまってはおもしろくないだろう。これで、根元を縛ってあげなさい」

 領主が髪を束ねていた幅広の紐をするりと解き、娘に渡す。こくりと頷いて受け取ると、娘はオルランドの根元にしっかりと巻き付けた。

「は、あっ、何を……」
「師父がすぐに終わってしまわないように、だよ」

 とたんに温かいものに包まれた。腰にへばりつくように蠢く娘の頭に、オルランドは混乱する。これは子を作るための行為でもなんでもなく、まさしく、神の禁じた姦淫そのものではないのか。

「んふ……師父様の、すてき……」

 犬か何かのように舐め上げながら、娘が呟く。こみ上げる何かが堰き止められて、じわじわと焦燥が募っていく。

「やめ……やめるん……く、あ、あ……頼む、やめてくれ……ああっ」

 ぱくりと咥えられ、唇で扱かれて、舌に撫でられ……張り詰めすぎて痛みすら感じる場所に、どんどん熱が溜まる。“出したい”という欲求は膨れ上がっていくのに、根元を縛る紐がそれを許さない。

 もう、濡れた粘液が擦れ合う粘つく音と、荒く息を吐く音、それから、自分の喉から漏れる呻きしか聞こえない。
 頭の中には赤い靄がかかったようだ。
 はあ、と吐息を漏らして、娘が熱に淀んだ視線を上げる。

「シグルド様、あたし、もう……」

 朱に染まった顔で、娘はじっと領主を見つめる。

「しかたない子だ」

 領主はオルランドを離れて、娘の背後へと回る。

「師父オルランド」

 脚を開くように後ろから抱え上げ、てらてらと濡れた股間を見せつけるように持ち上げた。はあはあと息を吐くだけのオルランドに突き付けるように掲げて、「これが、女という生き物だよ」と囁く。

「さあ、今度は師父がこの子に奉仕する番だ。この中心を、その舌で舐ってあげるといい――そう、そうやって、突き出して」

 領主の声に誘われるままに舌を突き出し、身体を折り曲げた。舌先がぷっくりと膨れた尖にほんの少し触れただけで、娘が高い声を上げる。
 その下ではくはくと蠢く小さな穴からこぽりと透明な液体が滴り落ちた。

「その穴が子種を注ぐ場所だよ。けれど、入れてはいけない。純潔を散らすことになってしまうからね。かわりに、この肉芽を可愛がってあげるんだ」

 ぽたぽたと滴る粘液を舐め取り、肉芽をくすぐるように舌を動かす。
 あ、あ、と悶えて上げる声に、勃ち上がったモノはますます痛みを増す。

「あ、はあっ、師父様、ああっ、気持ちいいっ! あああ」

 身を捩らせ、悲鳴のような嬌声をあげて娘はよがる。

「――未だ純潔だというのにこうもみだりがましいというのは、なかなかに良いものではないか、師父オルランド」

 わずかに腰を揺らし始めたオルランドを認めて、領主が囁く。

「純潔のまま、ここまで来たのだ。散らしてしまってはつまらないだろう?
 だから、入れてはいけないよ」

 くっくっと笑いながら、領主はオルランドの膝の上に娘を下ろす。
 対面で向かい合うように座らせると、娘はオルランドの身体に抱き着いた。そのまま息を荒げさせ、オルランドに濡れそぼった秘部を擦り付ける。

「師父様……師父様……」
「う、あ……っ」

 ぐちゅぐちゅと音を鳴らして腰を動かされ、込み上げるものはもう限界だ。ぞくぞくとする快楽と痛みと痺れとで、もう訳がわからない。

「は、あっ、やめ、やめ……っ、もう、あ、あ、あ……」

 譫言のように呻いて、がくがくと腰が動く。
 服を引っかけたまま腕を前に回し、娘を抱き締める。腰を押し付けて夢中で擦り合わせるのに、縛られたままのそこから放出するとこができない。

「は、あっ、もう、もう……っ」
「ああん、師父様、師父様……っ」
「――放ちたいかい?」

 いつの間にか、領主はまたオルランドの背後に回っていた。つつ、と指で首筋を撫で下ろしながら耳朶を食まれて、オルランドの背が震える。

「上手におねだりができたら、良いものをあげよう。神には到底与えられない、とても良いものを」
「は……」
「さあ、師父オルランド」
「お、ねがい、します……紐を……解いて……ああ、出そう、なのに……ああっ」

 ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ。複雑な形状の襞を擦り付けられて、快楽はこれ以上なくオルランドを苛んでいる。
 達したくて堪らないのに、紐がそれを許さない。

「おねがい、します……あっ、出したい……出したいんです」
「そう、そんなに」

 領主の手が、粘液に塗れたオルランド自身に伸びる。娘は夢中で腰を振り、擦り付け続けている場所に。
 膨れ上がった鋒を指先でつつき、幹を辿り、根元の結び目を軽く引く。それだけでオルランドの身体はびくびくと跳ねる。

「領主殿……あ、おねがいします……おねがいですから……あああああっ」

 首を舐められ、根元の戒めが緩んだ瞬間、ずぶりと首に突き刺さる衝撃と痛み、それから背すじを駆け抜ける快楽に、オルランドの意識は真っ白に塗り潰された。
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