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三日目 ー3
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その後も、茂みの中からくぐもった呻き声が次々と上がっていった。
襲撃者は結構な数、隠れていたようだ。
必死の面持ちで警戒していると、いつの間にかイリヴァーラは詠唱を終えて、馬ほどもあるような狼を2匹従えていた。
狼はすぐにこちらを伺っていた賊を嗅ぎだして、襲いかかる。
「ナイアラなら大丈夫。こういう隠れ場所の多いところは、あの子の独壇場だから」
イリヴァーラが私を安心させるようににっこりと笑う。
と、さっき倒れたカイルも回復したようだった。
立ち上がり、上を指差すと剣を抜き放ち、ふわりとまるで鳥のように、優雅に空中に舞い上がった。
「カイルが上から敵を見つけてくれるわ。あの剣は特別製だから、もう彼が魔法を食らうことはないわよ」
くすくすと笑いながら、イリヴァーラは私の肩をぽんぽんと叩いた。
「奇襲には少し焦ったけど、でも敵が私たちを見縊ってくれていてよかったわ」
そこからは、また一方的だった。
カイルが上から敵を炙り出し、ナイアラも潜んだ者を順番に見つけては忍び寄り、ヘスカンは援護と癒しの魔法でふたりの補助をやって、イリヴァーラが敵の魔術師の魔法を封じ込めて……彼らは4人で連携して戦うことにとても慣れているようだった。
さすが、チームを組んでいるだけある。
たぶん、皆それぞれの腕もとても良いのだろう。
様々な魔法や矢が飛び交っているけど、私の目には皆危なげなく戦っているように見えた。
それでもカイルが傷を負ってしまった時は怖かったけれど、すぐにヘスカンが治していた。
──ひと晩経って、ナイアラと話して、昨日は怖くて仕方ないだけだった戦いも、今日はもう少し冷静に見ていることができたようだ。
おかげで、そんなことを考える余裕もできていた。
人間は慣れる生き物なんだと、つくづく感じる。
「今回もやっぱり、カルトだったわね」
昨日も出てきたカルトという単語に、“カルト”というからには宗教団体なんだろうかと考える。
ということは、悪魔王というのは単純に悪魔の王様というわけじゃなくて、れっきとした一柱の神なんだろうか。
ヘスカンの表情は相変わらずさっぱりわからないけれど、カイルは渋面で頷いていた。
「都入りしても、ちょっと油断できなさそうだねえ?」
ナイアラの言葉に、全員が頷いていた。
「むしろ、もっと注意が必要かもしれないわね。着くまでに何か考えましょう」
“深淵の都”は、想像以上に巨大な町だった。
海に面した平原に築き上げられた、巨大な都市。ちょっとした日本の地方都市くらいの大きさはあるんじゃないだろうか。
何メートルあるのか、たぶん5、6階建てくらいのビルに相当しそうな高さの城壁に囲まれ、内側のいちばん小高い丘の上には大きな城がある。
街道の先は城壁に作られた門へと続き、そこには長い行列ができていた。
「もうすぐ日暮だし、だいぶ行列が伸びてるねえ」
「あれは都の外門だよ。この都を訪れる者は、ほぼ全員があの門から中に入るんだ」
「ほら、さっさと行って並ぶわよ」
都が見える場所まで来て、もう襲撃はないとようやく安心できたのか、皆の表情も少し和らいでいた。
「さて、明日からなんだけど」
宿に落ち着き、夕食を食べながらイリヴァーラが話を切り出した。
かなり大きな宿で食堂も広く、あちこち私たちのようなグループがいて、賑わっている。
ここは、主にこのあたりで活動する冒険者が利用する宿なのだという。そうは言ってもそこそこ値が張るほうなので、変にガラが悪いのが多くないのだとは、ナイアラの言だ。
「私とヘスカンは、たぶん知識と魔術の神の教会の図書館に入り浸りになると思うのよ。ほかにも、心当たりの魔術師を当たってみようとも考えてるし」
「あたしはあ、あちこち回って、いろいろ情報を仕入れてくるねえ。この町なら、カルトの話も集めやすいしい。今夜からさっそく動くんだあ」
「僕は……」
「だから、ルカはカイルにくっついててちょうだい」
「きょうか……え」
カイルの言葉を遮って、イリヴァーラが続けた。その横でヘスカンがうんうんと頷いている。
「ええと。私、ここでおとなしくしてるから……」
「だめよ。あなたをひとりにするわけにいかないの。4人の中で一番暇なのはカイルだから、彼があなたについてるのがいいわ」
部屋に閉じこもっていればいいかなと考えたけれど、それでもひとりになるのは断固アウトらしい。
「宿屋の部屋にいたところで、来るときは来るわ。だからあなたは絶対ひとりになっちゃいけないの。いいわね?
そういうわけよ、カイル。だからくれぐれもよろしく。天人で聖騎士のあなたにちょっかい出すやつはそうそういないと思うけど、くれぐれも気をつけて。
それと、明日からは聞き取りのほかにもうひとつ魔法をかけておくわ」
「あ、ああ……」
イリヴァーラの迫力に、カイルも押されている。
「教会に行く時も必ず連れて行くこと。そうね……手を離したらだめよ。わかっているわね?」
「え、手……」
「わかった」
戸惑う私とは裏腹に、拳をぐっと握りしめてカイルが頷いた。明日は本気で手を繋いだままになるのだろうか。
イリヴァーラを見ると、「これでひとまずは安心ね」と微笑みを返してくれた。
襲撃者は結構な数、隠れていたようだ。
必死の面持ちで警戒していると、いつの間にかイリヴァーラは詠唱を終えて、馬ほどもあるような狼を2匹従えていた。
狼はすぐにこちらを伺っていた賊を嗅ぎだして、襲いかかる。
「ナイアラなら大丈夫。こういう隠れ場所の多いところは、あの子の独壇場だから」
イリヴァーラが私を安心させるようににっこりと笑う。
と、さっき倒れたカイルも回復したようだった。
立ち上がり、上を指差すと剣を抜き放ち、ふわりとまるで鳥のように、優雅に空中に舞い上がった。
「カイルが上から敵を見つけてくれるわ。あの剣は特別製だから、もう彼が魔法を食らうことはないわよ」
くすくすと笑いながら、イリヴァーラは私の肩をぽんぽんと叩いた。
「奇襲には少し焦ったけど、でも敵が私たちを見縊ってくれていてよかったわ」
そこからは、また一方的だった。
カイルが上から敵を炙り出し、ナイアラも潜んだ者を順番に見つけては忍び寄り、ヘスカンは援護と癒しの魔法でふたりの補助をやって、イリヴァーラが敵の魔術師の魔法を封じ込めて……彼らは4人で連携して戦うことにとても慣れているようだった。
さすが、チームを組んでいるだけある。
たぶん、皆それぞれの腕もとても良いのだろう。
様々な魔法や矢が飛び交っているけど、私の目には皆危なげなく戦っているように見えた。
それでもカイルが傷を負ってしまった時は怖かったけれど、すぐにヘスカンが治していた。
──ひと晩経って、ナイアラと話して、昨日は怖くて仕方ないだけだった戦いも、今日はもう少し冷静に見ていることができたようだ。
おかげで、そんなことを考える余裕もできていた。
人間は慣れる生き物なんだと、つくづく感じる。
「今回もやっぱり、カルトだったわね」
昨日も出てきたカルトという単語に、“カルト”というからには宗教団体なんだろうかと考える。
ということは、悪魔王というのは単純に悪魔の王様というわけじゃなくて、れっきとした一柱の神なんだろうか。
ヘスカンの表情は相変わらずさっぱりわからないけれど、カイルは渋面で頷いていた。
「都入りしても、ちょっと油断できなさそうだねえ?」
ナイアラの言葉に、全員が頷いていた。
「むしろ、もっと注意が必要かもしれないわね。着くまでに何か考えましょう」
“深淵の都”は、想像以上に巨大な町だった。
海に面した平原に築き上げられた、巨大な都市。ちょっとした日本の地方都市くらいの大きさはあるんじゃないだろうか。
何メートルあるのか、たぶん5、6階建てくらいのビルに相当しそうな高さの城壁に囲まれ、内側のいちばん小高い丘の上には大きな城がある。
街道の先は城壁に作られた門へと続き、そこには長い行列ができていた。
「もうすぐ日暮だし、だいぶ行列が伸びてるねえ」
「あれは都の外門だよ。この都を訪れる者は、ほぼ全員があの門から中に入るんだ」
「ほら、さっさと行って並ぶわよ」
都が見える場所まで来て、もう襲撃はないとようやく安心できたのか、皆の表情も少し和らいでいた。
「さて、明日からなんだけど」
宿に落ち着き、夕食を食べながらイリヴァーラが話を切り出した。
かなり大きな宿で食堂も広く、あちこち私たちのようなグループがいて、賑わっている。
ここは、主にこのあたりで活動する冒険者が利用する宿なのだという。そうは言ってもそこそこ値が張るほうなので、変にガラが悪いのが多くないのだとは、ナイアラの言だ。
「私とヘスカンは、たぶん知識と魔術の神の教会の図書館に入り浸りになると思うのよ。ほかにも、心当たりの魔術師を当たってみようとも考えてるし」
「あたしはあ、あちこち回って、いろいろ情報を仕入れてくるねえ。この町なら、カルトの話も集めやすいしい。今夜からさっそく動くんだあ」
「僕は……」
「だから、ルカはカイルにくっついててちょうだい」
「きょうか……え」
カイルの言葉を遮って、イリヴァーラが続けた。その横でヘスカンがうんうんと頷いている。
「ええと。私、ここでおとなしくしてるから……」
「だめよ。あなたをひとりにするわけにいかないの。4人の中で一番暇なのはカイルだから、彼があなたについてるのがいいわ」
部屋に閉じこもっていればいいかなと考えたけれど、それでもひとりになるのは断固アウトらしい。
「宿屋の部屋にいたところで、来るときは来るわ。だからあなたは絶対ひとりになっちゃいけないの。いいわね?
そういうわけよ、カイル。だからくれぐれもよろしく。天人で聖騎士のあなたにちょっかい出すやつはそうそういないと思うけど、くれぐれも気をつけて。
それと、明日からは聞き取りのほかにもうひとつ魔法をかけておくわ」
「あ、ああ……」
イリヴァーラの迫力に、カイルも押されている。
「教会に行く時も必ず連れて行くこと。そうね……手を離したらだめよ。わかっているわね?」
「え、手……」
「わかった」
戸惑う私とは裏腹に、拳をぐっと握りしめてカイルが頷いた。明日は本気で手を繋いだままになるのだろうか。
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