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“神託の乙女”の物語
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「ねえ、アートゥ。それで乙女と聖騎士はどうなったの?」
「それは奥様、もちろん、末長く幸せに暮らしたのですよ」
僕は歌うように述べる。
「乙女は天へ帰らず、聖騎士の隣にいることを選びました。神の祝福を受けてふたりは末長く暮らしたのです」
「まあ……素敵だわ」
うっとりと目を伏せる奥様に一礼しながら、僕は、約束通り物語を語りに訪れた“神託の乙女”を思い返した。
「あのね、それで皆が、これから私を元いた世界に送り届けてくれるんです」
全てを語り終えた後、嬉しそうにそう述べる“乙女”の顔は、“これから”への希望と喜びで輝いていた。
傍らに立つ聖騎士を振り仰ぎ、微笑みを交わすと、また言葉を紡ぐ。
「そろそろ、皆も多元世界の冒険に出てみたかったところだから、ちょうどいいって」
彼女の仲間たちもまた、笑顔を見せていた。
別な現物質界を目指すには、通常、たくさんの世界を通る必要があるという。
つまり、時には悪なる生き物がうようよいる危険な世界を通らなければならないこともあれば、どこもかしこもが定命の生き物にとって危険な場所となっている世界を通らねばならないこともあるのだ。
熟練した冒険者にとってすら、多元世界を旅することは一筋縄では済まないものになるだろう。
きっと、とても困難で、しかも長い旅路が待っている。
「わかってます。でも、カイルも一緒だから、皆もいるから、大丈夫」
少し照れながら傍らに立つ聖騎士に寄り添う彼女の顔は微かに赤らんでいて……少々羨ましさを感じたことは否定できない。
「へえ? じゃあ、もしいつかこの先、君がこの世界へ戻ることがあったら、ぜひまた僕に話を聞かせてほしいな。
――君の新しい物語を」
「もちろん、あなたに一番に語りに来るって約束する。きっとまた戻ってくるから」
そうして、別れの言葉ではなく再会を約束する言葉と笑顔を残して、彼女は遠く次元世界の壁を越え、旅立って行った。
あの時見た、ほんの少しだけ不安に揺れる笑顔ではなく、心からの笑顔とともに。
「かくして“神託の乙女”の物語は終わり、ここからは新たなルカの物語が始まる、か」
彼女の前途に風と旅の神の加護がありますように。
「それは奥様、もちろん、末長く幸せに暮らしたのですよ」
僕は歌うように述べる。
「乙女は天へ帰らず、聖騎士の隣にいることを選びました。神の祝福を受けてふたりは末長く暮らしたのです」
「まあ……素敵だわ」
うっとりと目を伏せる奥様に一礼しながら、僕は、約束通り物語を語りに訪れた“神託の乙女”を思い返した。
「あのね、それで皆が、これから私を元いた世界に送り届けてくれるんです」
全てを語り終えた後、嬉しそうにそう述べる“乙女”の顔は、“これから”への希望と喜びで輝いていた。
傍らに立つ聖騎士を振り仰ぎ、微笑みを交わすと、また言葉を紡ぐ。
「そろそろ、皆も多元世界の冒険に出てみたかったところだから、ちょうどいいって」
彼女の仲間たちもまた、笑顔を見せていた。
別な現物質界を目指すには、通常、たくさんの世界を通る必要があるという。
つまり、時には悪なる生き物がうようよいる危険な世界を通らなければならないこともあれば、どこもかしこもが定命の生き物にとって危険な場所となっている世界を通らねばならないこともあるのだ。
熟練した冒険者にとってすら、多元世界を旅することは一筋縄では済まないものになるだろう。
きっと、とても困難で、しかも長い旅路が待っている。
「わかってます。でも、カイルも一緒だから、皆もいるから、大丈夫」
少し照れながら傍らに立つ聖騎士に寄り添う彼女の顔は微かに赤らんでいて……少々羨ましさを感じたことは否定できない。
「へえ? じゃあ、もしいつかこの先、君がこの世界へ戻ることがあったら、ぜひまた僕に話を聞かせてほしいな。
――君の新しい物語を」
「もちろん、あなたに一番に語りに来るって約束する。きっとまた戻ってくるから」
そうして、別れの言葉ではなく再会を約束する言葉と笑顔を残して、彼女は遠く次元世界の壁を越え、旅立って行った。
あの時見た、ほんの少しだけ不安に揺れる笑顔ではなく、心からの笑顔とともに。
「かくして“神託の乙女”の物語は終わり、ここからは新たなルカの物語が始まる、か」
彼女の前途に風と旅の神の加護がありますように。
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