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本編
悪魔じゃなくて、夢魔だから
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それはとてもとても小さな呼び声だった。
思わずしみじみと懐かしさを感じるほどに古典的で、今どきそんな呼び方をする奴なんていないだろうという方法で。
そもそもいったいどこで調べたのだと確認したくなるほどに、古臭く古式ゆかしい呼びかただったのだ。
決して気にするほど強いものではなかった。単なる物珍しさで、呼び出した奴を確認してやろうと思っただけだった。
「で、君が俺を呼んだのかな?」
ぽかんと間抜けな顔で口を開けたままこちらを見上げる“召喚主”に、俺はにっこり微笑んで一礼した。
ぱくぱくと声もなく喘ぐだけだった“主(あるじ)”は、どうにか気を取り直したのか、ごくりと唾を飲み込む。
「ほんとに、きた……ってかなんでTシャツにジーパン?」
それきり主は呆然としたまま動かない。このままでは埒があかない。
ぐるりと視線を巡らせれば、そばには古めかしい、変色して磨り減った革表紙の書物がひとつ置かれていた。
俺はひょいと拾い上げて、「こんなのまだあったんだ」と呟いた。
「ね、ねえ、ほんとに悪魔なの?」
「ん? 俺?」
俺の呟きにやっと我に返ったのか、主はいきなり身を乗り出した。
年の頃は20に満たない程度だろうか。日本人の平均よりはやや小さめの体格と、きょろきょろよく動く大きな目は、小動物のようでかわいらしい。
「そう。本の通りにやったら出てきたんだから、悪魔なんでしょう?」
「んー、そうとも言えるし、そうとも言えない」
「どういうこと?」
目の高さを合わせてしゃがみこむ俺に、胡乱な視線を向ける。もしかして期待はずれか、と顔に書いてあるかのようで、これもおもしろい。
ぐいっと、顔を近づけると、「え、ちょ!?」と驚き、仰け反るように避けた。赤くなった顔も、なかなかかわいいのではないだろうか。
「端的に説明すると、俺みたいなのを目の敵にしてる西の教会なら、俺のことを“悪魔”って呼んでいる。だけど、本物の“悪魔”を知ってる俺からすると、そんなおっかないものに認定されるのはちょっと勘弁ってところ」
「い、意味がわからない」
くすくす笑ってさらに近づくと、主はさらに仰け反った。もう、ほとんど俺にのしかかられているような格好だ。
「で、何か“悪魔”にお願いしたいことでもあった?」
にやにや笑いながらそう募ると、きょときょとせわしなく視線を泳がせ始めた。悪魔を呼ぼうというくらいだ、きっとロクな願いではなかったのだろう。
呼んではみたものの、本当に俺が現れたので怖気付いたというところか。
まあ、願いなんぞ言われたって、俺も困るのだが。
「まあ、それはどうでもいいんだけど、その前に飯を食べたいな」
「え、ご飯?」
「そう、ご飯」
くすくす笑って俺は主の口を塞ぐ。
俺の口を使って。
舌を差し込みねっとりじっとり絡め、口の中を味わう。主は慌てているのか、目を白黒させて手足をばたつかせるばかりだ。
「ん、いい味」
「な、なんで、何を」
「“夢魔”って聞いたことない?」
「むま? 馬じゃなくて?」
「やだなあ、馬並みって言いたいの?」
「へ、うまなみ?」
抱き起しながら訊いてみれば、ぽかんと首を傾げてこちらを見つめるようすもますます小動物じみていた。
いったいどれほど初心なのかと、よくよく観察してしまう。
「ああ、お嬢ちゃんってことか」
「は?」
「処女だろう? 男を知らない生娘が味わえるなんて、何十年ぶりかな」
俄然やる気が出てきた俺は、ほくほくと機嫌よく主を脱がしにかかった。
だが、主は俺の手を押さえようと、またバタバタと暴れ出す。
「なんで? なんでわかるの!?」
「言ったじゃん、俺は夢魔だって」
ぺろりと頬を舐めると、目を剥いて「だから夢魔って何!?」と主は叫んだ。
「処女かどうかなんて舐めただけでわかるって。それにしても、まさか夢魔を知らずに呼んだってこと?」
「だっ、だって、先輩が悪魔召喚の本だって言ってたから……」
「へえ? ほんとに知らないんだ?
……男に呼ばれれば女夢魔の姿で、女に呼ばれれば男夢魔の姿で現れ、めくるめく一夜の快楽をってのが、俺たち夢魔なんだけどな。
もちろん、その快楽と引き換えにちょっとばかり精気をいただくけど」
「そっ、そんなの!」
ひい、と声を上げて、主はどうにか俺の手を逃れようと再びもがき始める。だが、主の身体をがっちりと抑え込んだ俺の手は、びくともしない。
「とまあ、そんな御託はどうでもいいだろ? あんたは最初が俺でラッキーだよ。へたくそな人間に致されて破瓜の痛みばっかりで終わるんじゃなく、極上の快楽が約束されてるんだから」
にこにことそう告げながら服の隙間からするりと手を入れて、きゅっと乳房を握る。下着をずらし、やんわりと揉みしだく。
「ん……っ」
指で肌をなぞり、くすぐるように下乳から臍へと辿る。
「あっ」
「ね? ほら、触られるだけで気持ちいいだろう?」
「う、や……だっ」
「やだって言っても、快楽でぐだぐだにしちゃうけどね」
「あっ」
するする服を脱がせてさっさと裸にしてしまう。あれこれうるさいことが言えないように唇も塞ぐ。舌を絡めて捏ねまわして身体中を弄られて、すっかり蕩け切った表情にくすりと笑う。
夢魔、つまり淫魔の与える快楽に堕ちなかった人間なんて、見たことない。
「さあ、次はどこがいい? どこがもの足りない?」
横たわった身体をあちこち啄ばみながら訊くと、顔中真っ赤にしながらうんうん唸るだけだった。
「ここかな?」
真っ赤に熟れた果実のように丸く尖った乳首を、指先で軽く触れる。
「それとも、ここ?」
ぴくぴくと痙攣するお腹の表面を、くすぐるように撫でる。
「もしかして、もう欲しくなったとか?」
もじもじと擦り合わされる腿の間に指先だけを滑り込ませる。
あ、という声と湿った音に、またくつりと笑う。
「初めてとは思えないくらい濡れてるね」
今度は少し強く指を潜り込ませると、びくりと身体が跳ねた。
「ここ、気持ちいいだろう?」
膨らんでこりこりと弾力のある尖を捏ねると、あっという間に腰を悶えさせて善がりだす。あ、あ、と短く声を上げ、指先へと押し付けてくる。
「うん、かわいいね。そんなに気持ちいい? 気持ちいいなら、ちゃんと口に出して言ってごらん」
「あ、や、あ……」
「言わないならやめちゃうよ」
「あ、やめちゃ、や……」
「じゃあ、気持ちいいって言ってごらん」
ぱくぱくと喘ぐ主は、本当に小動物のようだ。
「ほら、本当にやめる前に、言って」
「……あっ、き……っ」
「ん?」
「きもち、い……っ、ああっ!」
「ほらね。ちゃんと口に出したほうが、気持ちいいだろう?」
はあはあと息を荒げて、主が小さく頷く。擦り合わせていた脚の力が緩み、腰を押し付けるような動きに変わる。
「ねえ、身体の奥にくすぶってる感覚、わかるかな?」
耳元で囁くと、主の身体が揺れた。
「君の、この欲張りな口が欲しい欲しいって言ってる声だよ」
「う……あっ」
中には入れず、入り口の周りをゆるゆると撫でるだけにする。
たらたらと、まるでよだれのようにあとからあとから粘液を垂らす蜜口の蠕動が、じわりと大きくなる。
「何が欲しいのかな? こんなにびちょびちょで、ねえ、何が欲しい?」
今度は舌先で身体を辿りながら下へと降りていった。舌の這う場所がぴくり、ぴくりと小さく痙攣する。
臍を舐めて、脇腹を甘噛みして、その下の薄い茂みにふっと息を吹きかけて……心待ちにしている場所は通り越して、今度は腿を舐め齧る。
「あ、あ、やあ、そこじゃなくて……いやあ」
悶える主に笑いながら、さらに脚を舐めていく。その間のぬらぬらと光る場所を見れば、よだれでぐっしょりだ。床には水たまりまでできている。
「ああ、よだれでめちゃくちゃ濡れてるよ。うねうね動いて、だらだら零して、そんなに欲しいんだ?」
「や、や、言わない、で」
「処女だなんて思えないくらい、いやらしいな」
「う、あ……」
「しかも、見られてますます零して濡れるなんて、とんだ変態だ」
「あ……っ」
がり、と脹脛を強めに齧ると、ひゅっと息を呑んで激しく腰が跳ねた。
腰が数度痙攣し、主の喉がひゅうひゅうと鳴る。
「あ……あ、ああっ……」
「あれ? まさか、肝心なところを全然触られてないのにいっちゃった? ただ、脚を齧られただけなのに、いっちゃったの?」
「っ、あ、そ、そんなわけ……あっあああっ」
必死に否定する主がおもしろくて、さっき噛んだ場所を舐める。
否定したって、伝わってくる味が、主がいったことを教えてくれるのに。
「やだなあ、君ってすごい淫乱。
初めてで、脚齧られていくなんて、どれだけなんだよ」
「あ、あ、いや、言わない、で、あっ」
「もう、欲しくて欲しくてしかたないんだろう? なら、ちゃんとおねだりしてごらんよ。淫乱な私を、どうかお腹いっぱいにしてくださいって」
主は真っ赤になった顔で俺を見つめる。潤んで充血した目でじっと見つめたまま、大きく吐息を漏らす。
「ほら、おねだりくらい、できるだろう? 俺は、淫乱な子は大好きだよ。ちゃんとできたら、満たしてあげるから」
「う……あ……」
「さあ」
何度か口をぱくぱくとして、それからようやく蚊の鳴くようなか細い声で「欲しいの、ちょうだい」と呟いた。
服を脱ぐと、ぶるんと飛び出したそれを見て主は一瞬息を呑んだ。
「怖い?」
少し引けてしまった主の腰を逃げられないように抑え、足の間に熱く猛りきったものを擦り付ける。
未知なる行為に少しだけ怯えてた主の顔はたちまち蕩けて、追いかけるように腰を揺らし始める。
ああ、本当にかわいい。
だから、指で解すなんてもったいないことはしない。せっかくの生娘なのだから、しっかりと味わわなくてはいけない。
つぷ、と先端を沈めると、「あ」と主が小さく声を上げた。
とたんに膣内がぐねぐねと、奥へ奥へと飲み込もうと蠢きだす。
「すごい欲張りな口だね。いっきに飲み込みたいって必死だよ」
耳元で囁くと、いやいやをするように首を振った。
「本当に淫乱な身体だよね。これじゃとても初めてなんて思えないな」
うるうると涙を溜めて、けれど欲望に煙った目で俺を見る。
「けど約束だ。お望みどおり、欲深なお嬢さんの奥の奥までみっちり、君が満足するくらいしっかり入れてあげようね」
めりめりとこじ開けるようにして、固く閉じた胎内へと突き進む。
誰も入ったことのない隘路なのだ。普通なら指1本がやっとというくらいに狭く、解さなければ男を受け入れるなんて到底無理なのだ。
なのに、固い蕾を無理やり開かれているはずの主が苦痛を感じることは絶対にない。それが、俺という種族の力なのだから。
「初めての男の味は、どう?」
「あ……あっ、すごい、すごい……」
「ぎゅうぎゅうに食い締めて、絶対離さないって言ってるよ」
「ん、あっ、ああっ」
「それじゃ、中をよく改めてみようか」
ゆっくりと腰を動かし始めると、たちまち主は身体を震わせた。意味をなさない喘ぎ声を上げ続け、口の端から本物のよだれがたらりと流れ落ちる。
繋がった部分を通して伝わってくるのは、とても甘美な味わいだ。
俺の背筋にも、ぞくぞくとした快楽が這い上がってくる。
いつにない興奮がやってくる。
主が反応する場所をしっかりと擦りあげ、ゆっくり、じわりじわりと攻め、びくびく痙攣する身体を抱きしめて、「どこがいい?」と尋ねる。
「ん、あ、あっぜんぶっ、ぜんぶっ!」
強すぎる快楽を逃がそうと、ぶんぶん頭を振る主に、笑みが漏れる。
「ねえ……そもそも俺に何を頼むつもりだったの?」
ぐりっと奥を突き擦ると、また痙攣で身体が震えた。そこから伝わる快楽の甘さといったら、本当にたまらない。
「あ……、せ、関口くんを……ああっ」
「ん?」
「んぅ、ふり、むかせたく……てっ、ああっ!」
「なんだ、男をモノにしたかったんだ?」
あ、あ、と喘ぎながら、主はこくこくと頷いた。
肉欲に潤み、端からぽろりと涙を零しながら俺を見上げて、それでも問うようにじっと視線を向ける、その強さもたまらない。
笑いながらぐるりと中を掻き回すと、またびくりと背を反らした。
「いやあ、残念だなあ。俺にそういうのは無理だよ」
「あ、えっ、あ、ああ、なっ……なんでっ!」
「言ったじゃないか、俺は夢魔だって」
ちゅ、と口を吸い、突き出された舌を絡め取って締め付ける。中がぎゅっと締まって、これもなかなかに心地よい。
「男を女狂いに、女を男狂いにすることは得意だよ。だけどそれ以外は無理」
笑いながら、ぴんと尖った乳首を軽く歯に挟んで引っ張る。
「ああ、もう身体中どこもかしこも感じるだろう?」
喉を指でなぞる。
「ほら、ここも」
顎を撫で上げて、頬にするりと触れる。
「ここもだ」
瞼をぺろりと舐めて、乱れた髪をかきあげるように指を通す。
「ここも、気持ちよくて仕方ないだろう?」
主は息も絶え絶えに喘ぎながら、身体中を真っ赤に染めて震わせる。
「あ、あ……や、やめちゃ、いやあ」
動きを止めた俺に縋るように手を伸ばし、また目尻からぽろりと涙を零す。
「ねえ、俺にしなよ」
ふ、と耳に息を吹きかけて、囁いた。
「気持ちいいだろう? 今まで知らなかった快楽をあげるよ」
は、は、と荒く喘ぐ口に指を入れ、舌を捏ねる。
「天国へ行かせてあげよう。君の身体に、かつてもこれからも味わえない快楽を刻んで、俺無しでいられないようにしてね」
「あ、んん……んぅっ」
「振り向かない男なんか忘れて、俺にしなよ」
ゆっくりと抜き挿しをして、主の一番感じるところを強く擦り上げる。
「ねえ、だから、頷いてごらん」
耳元で、低く囁く。
「俺にするって」
主の潤んだ目が、俺を見上げる。
思わずしみじみと懐かしさを感じるほどに古典的で、今どきそんな呼び方をする奴なんていないだろうという方法で。
そもそもいったいどこで調べたのだと確認したくなるほどに、古臭く古式ゆかしい呼びかただったのだ。
決して気にするほど強いものではなかった。単なる物珍しさで、呼び出した奴を確認してやろうと思っただけだった。
「で、君が俺を呼んだのかな?」
ぽかんと間抜けな顔で口を開けたままこちらを見上げる“召喚主”に、俺はにっこり微笑んで一礼した。
ぱくぱくと声もなく喘ぐだけだった“主(あるじ)”は、どうにか気を取り直したのか、ごくりと唾を飲み込む。
「ほんとに、きた……ってかなんでTシャツにジーパン?」
それきり主は呆然としたまま動かない。このままでは埒があかない。
ぐるりと視線を巡らせれば、そばには古めかしい、変色して磨り減った革表紙の書物がひとつ置かれていた。
俺はひょいと拾い上げて、「こんなのまだあったんだ」と呟いた。
「ね、ねえ、ほんとに悪魔なの?」
「ん? 俺?」
俺の呟きにやっと我に返ったのか、主はいきなり身を乗り出した。
年の頃は20に満たない程度だろうか。日本人の平均よりはやや小さめの体格と、きょろきょろよく動く大きな目は、小動物のようでかわいらしい。
「そう。本の通りにやったら出てきたんだから、悪魔なんでしょう?」
「んー、そうとも言えるし、そうとも言えない」
「どういうこと?」
目の高さを合わせてしゃがみこむ俺に、胡乱な視線を向ける。もしかして期待はずれか、と顔に書いてあるかのようで、これもおもしろい。
ぐいっと、顔を近づけると、「え、ちょ!?」と驚き、仰け反るように避けた。赤くなった顔も、なかなかかわいいのではないだろうか。
「端的に説明すると、俺みたいなのを目の敵にしてる西の教会なら、俺のことを“悪魔”って呼んでいる。だけど、本物の“悪魔”を知ってる俺からすると、そんなおっかないものに認定されるのはちょっと勘弁ってところ」
「い、意味がわからない」
くすくす笑ってさらに近づくと、主はさらに仰け反った。もう、ほとんど俺にのしかかられているような格好だ。
「で、何か“悪魔”にお願いしたいことでもあった?」
にやにや笑いながらそう募ると、きょときょとせわしなく視線を泳がせ始めた。悪魔を呼ぼうというくらいだ、きっとロクな願いではなかったのだろう。
呼んではみたものの、本当に俺が現れたので怖気付いたというところか。
まあ、願いなんぞ言われたって、俺も困るのだが。
「まあ、それはどうでもいいんだけど、その前に飯を食べたいな」
「え、ご飯?」
「そう、ご飯」
くすくす笑って俺は主の口を塞ぐ。
俺の口を使って。
舌を差し込みねっとりじっとり絡め、口の中を味わう。主は慌てているのか、目を白黒させて手足をばたつかせるばかりだ。
「ん、いい味」
「な、なんで、何を」
「“夢魔”って聞いたことない?」
「むま? 馬じゃなくて?」
「やだなあ、馬並みって言いたいの?」
「へ、うまなみ?」
抱き起しながら訊いてみれば、ぽかんと首を傾げてこちらを見つめるようすもますます小動物じみていた。
いったいどれほど初心なのかと、よくよく観察してしまう。
「ああ、お嬢ちゃんってことか」
「は?」
「処女だろう? 男を知らない生娘が味わえるなんて、何十年ぶりかな」
俄然やる気が出てきた俺は、ほくほくと機嫌よく主を脱がしにかかった。
だが、主は俺の手を押さえようと、またバタバタと暴れ出す。
「なんで? なんでわかるの!?」
「言ったじゃん、俺は夢魔だって」
ぺろりと頬を舐めると、目を剥いて「だから夢魔って何!?」と主は叫んだ。
「処女かどうかなんて舐めただけでわかるって。それにしても、まさか夢魔を知らずに呼んだってこと?」
「だっ、だって、先輩が悪魔召喚の本だって言ってたから……」
「へえ? ほんとに知らないんだ?
……男に呼ばれれば女夢魔の姿で、女に呼ばれれば男夢魔の姿で現れ、めくるめく一夜の快楽をってのが、俺たち夢魔なんだけどな。
もちろん、その快楽と引き換えにちょっとばかり精気をいただくけど」
「そっ、そんなの!」
ひい、と声を上げて、主はどうにか俺の手を逃れようと再びもがき始める。だが、主の身体をがっちりと抑え込んだ俺の手は、びくともしない。
「とまあ、そんな御託はどうでもいいだろ? あんたは最初が俺でラッキーだよ。へたくそな人間に致されて破瓜の痛みばっかりで終わるんじゃなく、極上の快楽が約束されてるんだから」
にこにことそう告げながら服の隙間からするりと手を入れて、きゅっと乳房を握る。下着をずらし、やんわりと揉みしだく。
「ん……っ」
指で肌をなぞり、くすぐるように下乳から臍へと辿る。
「あっ」
「ね? ほら、触られるだけで気持ちいいだろう?」
「う、や……だっ」
「やだって言っても、快楽でぐだぐだにしちゃうけどね」
「あっ」
するする服を脱がせてさっさと裸にしてしまう。あれこれうるさいことが言えないように唇も塞ぐ。舌を絡めて捏ねまわして身体中を弄られて、すっかり蕩け切った表情にくすりと笑う。
夢魔、つまり淫魔の与える快楽に堕ちなかった人間なんて、見たことない。
「さあ、次はどこがいい? どこがもの足りない?」
横たわった身体をあちこち啄ばみながら訊くと、顔中真っ赤にしながらうんうん唸るだけだった。
「ここかな?」
真っ赤に熟れた果実のように丸く尖った乳首を、指先で軽く触れる。
「それとも、ここ?」
ぴくぴくと痙攣するお腹の表面を、くすぐるように撫でる。
「もしかして、もう欲しくなったとか?」
もじもじと擦り合わされる腿の間に指先だけを滑り込ませる。
あ、という声と湿った音に、またくつりと笑う。
「初めてとは思えないくらい濡れてるね」
今度は少し強く指を潜り込ませると、びくりと身体が跳ねた。
「ここ、気持ちいいだろう?」
膨らんでこりこりと弾力のある尖を捏ねると、あっという間に腰を悶えさせて善がりだす。あ、あ、と短く声を上げ、指先へと押し付けてくる。
「うん、かわいいね。そんなに気持ちいい? 気持ちいいなら、ちゃんと口に出して言ってごらん」
「あ、や、あ……」
「言わないならやめちゃうよ」
「あ、やめちゃ、や……」
「じゃあ、気持ちいいって言ってごらん」
ぱくぱくと喘ぐ主は、本当に小動物のようだ。
「ほら、本当にやめる前に、言って」
「……あっ、き……っ」
「ん?」
「きもち、い……っ、ああっ!」
「ほらね。ちゃんと口に出したほうが、気持ちいいだろう?」
はあはあと息を荒げて、主が小さく頷く。擦り合わせていた脚の力が緩み、腰を押し付けるような動きに変わる。
「ねえ、身体の奥にくすぶってる感覚、わかるかな?」
耳元で囁くと、主の身体が揺れた。
「君の、この欲張りな口が欲しい欲しいって言ってる声だよ」
「う……あっ」
中には入れず、入り口の周りをゆるゆると撫でるだけにする。
たらたらと、まるでよだれのようにあとからあとから粘液を垂らす蜜口の蠕動が、じわりと大きくなる。
「何が欲しいのかな? こんなにびちょびちょで、ねえ、何が欲しい?」
今度は舌先で身体を辿りながら下へと降りていった。舌の這う場所がぴくり、ぴくりと小さく痙攣する。
臍を舐めて、脇腹を甘噛みして、その下の薄い茂みにふっと息を吹きかけて……心待ちにしている場所は通り越して、今度は腿を舐め齧る。
「あ、あ、やあ、そこじゃなくて……いやあ」
悶える主に笑いながら、さらに脚を舐めていく。その間のぬらぬらと光る場所を見れば、よだれでぐっしょりだ。床には水たまりまでできている。
「ああ、よだれでめちゃくちゃ濡れてるよ。うねうね動いて、だらだら零して、そんなに欲しいんだ?」
「や、や、言わない、で」
「処女だなんて思えないくらい、いやらしいな」
「う、あ……」
「しかも、見られてますます零して濡れるなんて、とんだ変態だ」
「あ……っ」
がり、と脹脛を強めに齧ると、ひゅっと息を呑んで激しく腰が跳ねた。
腰が数度痙攣し、主の喉がひゅうひゅうと鳴る。
「あ……あ、ああっ……」
「あれ? まさか、肝心なところを全然触られてないのにいっちゃった? ただ、脚を齧られただけなのに、いっちゃったの?」
「っ、あ、そ、そんなわけ……あっあああっ」
必死に否定する主がおもしろくて、さっき噛んだ場所を舐める。
否定したって、伝わってくる味が、主がいったことを教えてくれるのに。
「やだなあ、君ってすごい淫乱。
初めてで、脚齧られていくなんて、どれだけなんだよ」
「あ、あ、いや、言わない、で、あっ」
「もう、欲しくて欲しくてしかたないんだろう? なら、ちゃんとおねだりしてごらんよ。淫乱な私を、どうかお腹いっぱいにしてくださいって」
主は真っ赤になった顔で俺を見つめる。潤んで充血した目でじっと見つめたまま、大きく吐息を漏らす。
「ほら、おねだりくらい、できるだろう? 俺は、淫乱な子は大好きだよ。ちゃんとできたら、満たしてあげるから」
「う……あ……」
「さあ」
何度か口をぱくぱくとして、それからようやく蚊の鳴くようなか細い声で「欲しいの、ちょうだい」と呟いた。
服を脱ぐと、ぶるんと飛び出したそれを見て主は一瞬息を呑んだ。
「怖い?」
少し引けてしまった主の腰を逃げられないように抑え、足の間に熱く猛りきったものを擦り付ける。
未知なる行為に少しだけ怯えてた主の顔はたちまち蕩けて、追いかけるように腰を揺らし始める。
ああ、本当にかわいい。
だから、指で解すなんてもったいないことはしない。せっかくの生娘なのだから、しっかりと味わわなくてはいけない。
つぷ、と先端を沈めると、「あ」と主が小さく声を上げた。
とたんに膣内がぐねぐねと、奥へ奥へと飲み込もうと蠢きだす。
「すごい欲張りな口だね。いっきに飲み込みたいって必死だよ」
耳元で囁くと、いやいやをするように首を振った。
「本当に淫乱な身体だよね。これじゃとても初めてなんて思えないな」
うるうると涙を溜めて、けれど欲望に煙った目で俺を見る。
「けど約束だ。お望みどおり、欲深なお嬢さんの奥の奥までみっちり、君が満足するくらいしっかり入れてあげようね」
めりめりとこじ開けるようにして、固く閉じた胎内へと突き進む。
誰も入ったことのない隘路なのだ。普通なら指1本がやっとというくらいに狭く、解さなければ男を受け入れるなんて到底無理なのだ。
なのに、固い蕾を無理やり開かれているはずの主が苦痛を感じることは絶対にない。それが、俺という種族の力なのだから。
「初めての男の味は、どう?」
「あ……あっ、すごい、すごい……」
「ぎゅうぎゅうに食い締めて、絶対離さないって言ってるよ」
「ん、あっ、ああっ」
「それじゃ、中をよく改めてみようか」
ゆっくりと腰を動かし始めると、たちまち主は身体を震わせた。意味をなさない喘ぎ声を上げ続け、口の端から本物のよだれがたらりと流れ落ちる。
繋がった部分を通して伝わってくるのは、とても甘美な味わいだ。
俺の背筋にも、ぞくぞくとした快楽が這い上がってくる。
いつにない興奮がやってくる。
主が反応する場所をしっかりと擦りあげ、ゆっくり、じわりじわりと攻め、びくびく痙攣する身体を抱きしめて、「どこがいい?」と尋ねる。
「ん、あ、あっぜんぶっ、ぜんぶっ!」
強すぎる快楽を逃がそうと、ぶんぶん頭を振る主に、笑みが漏れる。
「ねえ……そもそも俺に何を頼むつもりだったの?」
ぐりっと奥を突き擦ると、また痙攣で身体が震えた。そこから伝わる快楽の甘さといったら、本当にたまらない。
「あ……、せ、関口くんを……ああっ」
「ん?」
「んぅ、ふり、むかせたく……てっ、ああっ!」
「なんだ、男をモノにしたかったんだ?」
あ、あ、と喘ぎながら、主はこくこくと頷いた。
肉欲に潤み、端からぽろりと涙を零しながら俺を見上げて、それでも問うようにじっと視線を向ける、その強さもたまらない。
笑いながらぐるりと中を掻き回すと、またびくりと背を反らした。
「いやあ、残念だなあ。俺にそういうのは無理だよ」
「あ、えっ、あ、ああ、なっ……なんでっ!」
「言ったじゃないか、俺は夢魔だって」
ちゅ、と口を吸い、突き出された舌を絡め取って締め付ける。中がぎゅっと締まって、これもなかなかに心地よい。
「男を女狂いに、女を男狂いにすることは得意だよ。だけどそれ以外は無理」
笑いながら、ぴんと尖った乳首を軽く歯に挟んで引っ張る。
「ああ、もう身体中どこもかしこも感じるだろう?」
喉を指でなぞる。
「ほら、ここも」
顎を撫で上げて、頬にするりと触れる。
「ここもだ」
瞼をぺろりと舐めて、乱れた髪をかきあげるように指を通す。
「ここも、気持ちよくて仕方ないだろう?」
主は息も絶え絶えに喘ぎながら、身体中を真っ赤に染めて震わせる。
「あ、あ……や、やめちゃ、いやあ」
動きを止めた俺に縋るように手を伸ばし、また目尻からぽろりと涙を零す。
「ねえ、俺にしなよ」
ふ、と耳に息を吹きかけて、囁いた。
「気持ちいいだろう? 今まで知らなかった快楽をあげるよ」
は、は、と荒く喘ぐ口に指を入れ、舌を捏ねる。
「天国へ行かせてあげよう。君の身体に、かつてもこれからも味わえない快楽を刻んで、俺無しでいられないようにしてね」
「あ、んん……んぅっ」
「振り向かない男なんか忘れて、俺にしなよ」
ゆっくりと抜き挿しをして、主の一番感じるところを強く擦り上げる。
「ねえ、だから、頷いてごらん」
耳元で、低く囁く。
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主の潤んだ目が、俺を見上げる。
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