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03.お前は何だ
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王族の男子はだいたい、十三から十四になるころには閨の教育を受ける。
もちろん、ナディアルも例外ではない。内々にではあったが、北のオルシュティン王国の末姫を輿入れさせるという話もあったくらいなのだから。
けれど、こんなのは知らない。
のし掛かられて押さえ込まれて、まるで立場が逆ではないか。
妃となる娘をどう抱くかは教えられても、こんな風に女からどう抱かれるかなんて教えられていなかった。
ナディアルは大きく目を見開いて、ごくりと喉を鳴らす。その表情を愛でているかのように、レギナは楽しそうに指を滑らせる。
ゆっくりと身体を辿る指先は、どんどん下へと移っていった。小さく浅く息を漏らして、ナディアルは、与えられる感触をどうにかやり過ごそうとする。
「これがそうなの」
「う、あ……やめ、ろ……」
わずかに唇を離して、レギナの手がとうとう辿り着いたそこを軽く握った。
ゆるゆると扱かれて、ナディアルのそれはたちまち固く勃ち上がる。手の中のものが帯びた熱を感じて、レギナはとろりと微笑を浮かべた。
「ナディアル、この身体はとても良くできているのよ。生殖器の造りは人間とほぼ同等で感覚もある。ちゃんと“感じる”こともできるの。本来の意味での生殖はともかく、交合することなら問題ないわ。
――ほら、ね?」
ナディアルの片手を握り、自分の脚の間へと導いた。すでに濡れそぼっていたそこは、ほんの少し触れただけでくちゅりと音を立てる。
「だからナディアル、わたしと愛を交わしましょう」
「愛、だと? 何、を……う、あっ」
猛ったものをあてがい、レギナはひと息に腰を落とした。熱くうねる襞に締め上げられて、ナディアルの背をぞくぞくと快感が走る。
「ああ……これが、“感じる”ってことなのね」
はあ、と熱い息を吐いて、レギナはうっとりと見下ろした。
「あなたも感じている? 顔が赤いわ。脈拍も速い。それに、わたしの中であなたの生殖器が震えているのも感じる。“出そう”という状態なのかしら」
少し腰を動かすだけで、レギナの細い身体の、そこばかり豊満に盛り上がった双球が重たげに揺れた。
「く、やめ……」
「いや」
ぐっと締め付けがきつくなる。
レギナは陶然とした表情でナディアルの口元を舐める。首筋を舐め、肩を齧り、胸を擽り……ナディアルの息が上がる。
「やめないわ。あなたのことを知ってから、ずっとあなたをわたしのものにしたかったの。だって、あなたはわたしの王子様なんだもの」
「お前は、いったい、何……なんだ」
「わたしのところに来たら教えてあげる」
腰を押しつけるように回しながら、レギナはまた笑う。きゅうきゅうと締められ扱かれて、堪えることもままならず、追い詰められてしまう。
「やめ、やめろ……いやだ、やめろ……あ、っ」
「あ……っ、これが、気持ちいいってことなのね」
はあはあと息を荒げるナディアルをねっとりと見つめながら、レギナが腰を大きく揺らした。最初はゆっくりと動き、だんだんと早めていく。あ、は、と声を漏らしながら、激しくナディアルを擦り上げた。
ギリギリと歯を食いしばってどうにか堪えていだけれど、もう限界だった。身体中に汗の粒が浮く。唸るような声をあげてレギナの奥を突く。
大きく突き上げて、蠢く襞に思い切り締め上げられて、背中が総毛立つほどにぞくぞくとする快楽が走り抜ける。
ああ、と、レギナがひと際大きな嬌声をあげる。
「く、ふ……っ」
どくどくと脈打ちながら奥に吐き出して、ナディアルは呆然と息を吐いた。ぴくりぴくりと震えて身体を押し付けたまま、レギナに抱き締められて。
「ああ……ナディアル、すてきよ。これが“達する”ってことなのね」
「お前は、本当に、何者なんだ」
ぽそりと呟いたナディアルにレギナは微笑み、それから深く口付けた。
「残念ね、時間切れだわ」
「時間切れ?」
「そう。でも、また来るわね。愛を交わすというのはいいものだもの。
――ねえ、ナディアル。あなたのために、これよりもっといい身体を用意して待っているわ。だから、早くわたしのところへ来てね」
とたんにレギナの顔からするりと表情が抜け落ちた。レギナはまたどこかに消えて、もとのエルストに戻ったのだろうか。
「エルスト、か」
「そうだ」
「離せ」
ようやく拘束を解かれて、ナディアルは息を吐いた。
身体を起こすと、未だ繋がったままだった場所から、ぐちゅ、と濡れた音がした。ぴくりとエルストの中が蠢き、ナディアルを軽く締め付ける。
眉をしかめて、ナディアルが見ると、上に座り込んだままのエルストは、何の表情も浮かべずに見返していた。
きり、と歯を軋ませて、ナディアルはエルストを押し倒す。さっきとは逆に、今度は自分が上からエルストを押さえつける。
叩きつけるように奥を抉ると、エルストが小さく息を漏らした。
何度も何度も突き上げるとすぐに内部の襞がうねり始める。表情は変わらないくせに、呼吸は忙しなくなり、身体がほんのりと朱に染まり、汗ばんでくる。
「――顔を、見せろ」
返事を待たず、ナディアルの目を覆う仮面に手を伸ばす。ぴったりと張り付いたそれを剥がすと、予想よりも少し幼い顔だった。
身体つきから二十歳は超えていると思ったのに、まだ十七か十八くらいか。自分とそこまで大きく離れていないように見えて、ナディアルは少し驚いた。
けれど、ぼんやりとした淡い灰色の目は、どこか虚ろな穴のようだ。
「なんだ、見られる顔じゃないか」
仮面を横に放って、腰を押さえ込む。
ぐちゅぐちゅと音を立てて擦り合わせると、無表情なはずのエルストの目がわずかに揺れて、喉から小さく声が漏れた。
「お前も感じるのか。あのレギナとやらはお前を作り物のように言ってたが、どうやら本当に、こういうところは人間と変わらないんだな」
ナディアルを捕まえている襞が、もっと奥へ咥え込もうと蠢く。
それを引き剥がすように腰を引いて、思い切り突き込むと、エルストの内部が歓喜するようにびくびくと痙攣した。
これは本当に作り物なのか?
生身の女と変わらないではないかと考えて、ナディアルは顔を顰める。
何度も奥を突くと、びくんと跳ねるようにエルストの腰が動いた。はくはくと口を動かして、落ち着かなげに視線を彷徨わせている。
「これ、は……」
エルストの小さな呟きに、ナディアルが目を眇める。
「これ……あ……っ」
「なんだ、声を出したって構わないんだぞ」
戸惑っているようなエルストに、ナディアルは笑った。
ひくひくと引き攣るように締め付けるそこは、もういきたいと言ってるように感じる。こんなにすぐに頂きへと押し上げられてしまったたのは、あの、レギナの余韻も残っていたせいだろう。
「おか、し……しゃだん、できな……あ、ああっ」
「いくなら、おとなしく“いく”と言え」
は、は、とナディアルも息を荒げながら腰を叩きつけた。泡立った粘液がぐちゅぐちゅと音を立てて隙間から溢れてくる。
「い、く?」
「いきたくないのか?」
「あっ、は……いく、あ……これ、いく……」
ナディアルもそろそろ限界だ。エルストの締め付けはきつく、そのうえ、うねるように扱いてくる。
二度目ではあっても、あまりもたなそうだ。
汗が散る。漏れそうな声を抑え、ふ、ふ、と息を吐き、抉り、擦り、突いて、とうとうエルストの身体が大きく跳ねた。きつく締め上げられて、奥深くへと押し付けたとたんに熱が弾ける。
「う、ふっ……」
ぽたぽたと汗が滴り落ちる。
どくどくと吐き出しながら、さっきは感じなかった充足感と、奇妙な征服感が満たされたような気がした。
無表情なりに呆然としているエルストに、ナディアルは、ふん、と笑ってキスを落とす。薄く開いたままの唇を塞ぎ、エルストの舌を絡め取る。
エルストはされるがままに、ただ口内を貪られる。
「お前は、レギナと何が違うんだ。お前がレギナなんじゃないのか」
「私は主人の手足であり、一部である。主人ではない」
やっぱり意味がわからない。
「レギナは、魔術師なのか」
「違う」
「――いったい何なんだ。お前たちは、何者なんだ」
「それに答える権限は、私にない」
ナディアルは、チ、と小さく舌打ちをする。
どうあっても答えないのか、と。
「そうか」
身体を起こし、背を向けてシーツに包まると、また眠りに落ちた。
* * *
夜が明けても、雨はまだ続いていた。
昨日から続いている結構な降りだ。これでは外を歩くなんて無理だろう。
乾いてごわついた服を着て、どうするつもりなのかとエルストを窺い見る。そのエルストは窓からじっと外を見つめていた。
「ナディアル」
「なんだ」
「外へ出る。だが、ナディアルはここを動くな」
「なぜだ」
「障害が発生した。排除する」
ナディアルは瞠目して外へと目をやった。
けれど、雨にけぶる町に人影は見当たらない。
「どこに……」
怪訝な表情になったナディアルには構わず、エルストはそっと部屋を出る。
ひたすら目を凝らしてみたが、やはり、ナディアルの目に怪しい影はひとつも見当たらなかった。
エルストが戻ったのは、昼を回った頃だった。
頭から爪先までずぶ濡れの泥だらけで、いったいどこで何をしてきたのかというほどの有様だ。
「ナディアル、ここを出なければならない」
どさりと置いた包みを開けて、着替えらしきものを取り出した。
「軍国が追い付いたのか」
「その通りだ」
エルストが衣服を差し出す。地味な、平民のような衣服だ。たしかに、くたびれているとはいえ、この王国の正装では目立つだろう。
服を受け取り、上着を脱ぎ捨てた。手伝おうとしたエルストの手を払い、「お前は自分の形をなんとかしろ」と返す。
用意を終え、頭からマントをすっぽりと被って廊下に出た。部屋の外に人の気配はなく、しんと静まり返っていた。
こうも静かなのは何故なのか。
訝しむ間も無く、ナディアルは腕を取られて雨の中へと連れ出される。
もちろん、ナディアルも例外ではない。内々にではあったが、北のオルシュティン王国の末姫を輿入れさせるという話もあったくらいなのだから。
けれど、こんなのは知らない。
のし掛かられて押さえ込まれて、まるで立場が逆ではないか。
妃となる娘をどう抱くかは教えられても、こんな風に女からどう抱かれるかなんて教えられていなかった。
ナディアルは大きく目を見開いて、ごくりと喉を鳴らす。その表情を愛でているかのように、レギナは楽しそうに指を滑らせる。
ゆっくりと身体を辿る指先は、どんどん下へと移っていった。小さく浅く息を漏らして、ナディアルは、与えられる感触をどうにかやり過ごそうとする。
「これがそうなの」
「う、あ……やめ、ろ……」
わずかに唇を離して、レギナの手がとうとう辿り着いたそこを軽く握った。
ゆるゆると扱かれて、ナディアルのそれはたちまち固く勃ち上がる。手の中のものが帯びた熱を感じて、レギナはとろりと微笑を浮かべた。
「ナディアル、この身体はとても良くできているのよ。生殖器の造りは人間とほぼ同等で感覚もある。ちゃんと“感じる”こともできるの。本来の意味での生殖はともかく、交合することなら問題ないわ。
――ほら、ね?」
ナディアルの片手を握り、自分の脚の間へと導いた。すでに濡れそぼっていたそこは、ほんの少し触れただけでくちゅりと音を立てる。
「だからナディアル、わたしと愛を交わしましょう」
「愛、だと? 何、を……う、あっ」
猛ったものをあてがい、レギナはひと息に腰を落とした。熱くうねる襞に締め上げられて、ナディアルの背をぞくぞくと快感が走る。
「ああ……これが、“感じる”ってことなのね」
はあ、と熱い息を吐いて、レギナはうっとりと見下ろした。
「あなたも感じている? 顔が赤いわ。脈拍も速い。それに、わたしの中であなたの生殖器が震えているのも感じる。“出そう”という状態なのかしら」
少し腰を動かすだけで、レギナの細い身体の、そこばかり豊満に盛り上がった双球が重たげに揺れた。
「く、やめ……」
「いや」
ぐっと締め付けがきつくなる。
レギナは陶然とした表情でナディアルの口元を舐める。首筋を舐め、肩を齧り、胸を擽り……ナディアルの息が上がる。
「やめないわ。あなたのことを知ってから、ずっとあなたをわたしのものにしたかったの。だって、あなたはわたしの王子様なんだもの」
「お前は、いったい、何……なんだ」
「わたしのところに来たら教えてあげる」
腰を押しつけるように回しながら、レギナはまた笑う。きゅうきゅうと締められ扱かれて、堪えることもままならず、追い詰められてしまう。
「やめ、やめろ……いやだ、やめろ……あ、っ」
「あ……っ、これが、気持ちいいってことなのね」
はあはあと息を荒げるナディアルをねっとりと見つめながら、レギナが腰を大きく揺らした。最初はゆっくりと動き、だんだんと早めていく。あ、は、と声を漏らしながら、激しくナディアルを擦り上げた。
ギリギリと歯を食いしばってどうにか堪えていだけれど、もう限界だった。身体中に汗の粒が浮く。唸るような声をあげてレギナの奥を突く。
大きく突き上げて、蠢く襞に思い切り締め上げられて、背中が総毛立つほどにぞくぞくとする快楽が走り抜ける。
ああ、と、レギナがひと際大きな嬌声をあげる。
「く、ふ……っ」
どくどくと脈打ちながら奥に吐き出して、ナディアルは呆然と息を吐いた。ぴくりぴくりと震えて身体を押し付けたまま、レギナに抱き締められて。
「ああ……ナディアル、すてきよ。これが“達する”ってことなのね」
「お前は、本当に、何者なんだ」
ぽそりと呟いたナディアルにレギナは微笑み、それから深く口付けた。
「残念ね、時間切れだわ」
「時間切れ?」
「そう。でも、また来るわね。愛を交わすというのはいいものだもの。
――ねえ、ナディアル。あなたのために、これよりもっといい身体を用意して待っているわ。だから、早くわたしのところへ来てね」
とたんにレギナの顔からするりと表情が抜け落ちた。レギナはまたどこかに消えて、もとのエルストに戻ったのだろうか。
「エルスト、か」
「そうだ」
「離せ」
ようやく拘束を解かれて、ナディアルは息を吐いた。
身体を起こすと、未だ繋がったままだった場所から、ぐちゅ、と濡れた音がした。ぴくりとエルストの中が蠢き、ナディアルを軽く締め付ける。
眉をしかめて、ナディアルが見ると、上に座り込んだままのエルストは、何の表情も浮かべずに見返していた。
きり、と歯を軋ませて、ナディアルはエルストを押し倒す。さっきとは逆に、今度は自分が上からエルストを押さえつける。
叩きつけるように奥を抉ると、エルストが小さく息を漏らした。
何度も何度も突き上げるとすぐに内部の襞がうねり始める。表情は変わらないくせに、呼吸は忙しなくなり、身体がほんのりと朱に染まり、汗ばんでくる。
「――顔を、見せろ」
返事を待たず、ナディアルの目を覆う仮面に手を伸ばす。ぴったりと張り付いたそれを剥がすと、予想よりも少し幼い顔だった。
身体つきから二十歳は超えていると思ったのに、まだ十七か十八くらいか。自分とそこまで大きく離れていないように見えて、ナディアルは少し驚いた。
けれど、ぼんやりとした淡い灰色の目は、どこか虚ろな穴のようだ。
「なんだ、見られる顔じゃないか」
仮面を横に放って、腰を押さえ込む。
ぐちゅぐちゅと音を立てて擦り合わせると、無表情なはずのエルストの目がわずかに揺れて、喉から小さく声が漏れた。
「お前も感じるのか。あのレギナとやらはお前を作り物のように言ってたが、どうやら本当に、こういうところは人間と変わらないんだな」
ナディアルを捕まえている襞が、もっと奥へ咥え込もうと蠢く。
それを引き剥がすように腰を引いて、思い切り突き込むと、エルストの内部が歓喜するようにびくびくと痙攣した。
これは本当に作り物なのか?
生身の女と変わらないではないかと考えて、ナディアルは顔を顰める。
何度も奥を突くと、びくんと跳ねるようにエルストの腰が動いた。はくはくと口を動かして、落ち着かなげに視線を彷徨わせている。
「これ、は……」
エルストの小さな呟きに、ナディアルが目を眇める。
「これ……あ……っ」
「なんだ、声を出したって構わないんだぞ」
戸惑っているようなエルストに、ナディアルは笑った。
ひくひくと引き攣るように締め付けるそこは、もういきたいと言ってるように感じる。こんなにすぐに頂きへと押し上げられてしまったたのは、あの、レギナの余韻も残っていたせいだろう。
「おか、し……しゃだん、できな……あ、ああっ」
「いくなら、おとなしく“いく”と言え」
は、は、とナディアルも息を荒げながら腰を叩きつけた。泡立った粘液がぐちゅぐちゅと音を立てて隙間から溢れてくる。
「い、く?」
「いきたくないのか?」
「あっ、は……いく、あ……これ、いく……」
ナディアルもそろそろ限界だ。エルストの締め付けはきつく、そのうえ、うねるように扱いてくる。
二度目ではあっても、あまりもたなそうだ。
汗が散る。漏れそうな声を抑え、ふ、ふ、と息を吐き、抉り、擦り、突いて、とうとうエルストの身体が大きく跳ねた。きつく締め上げられて、奥深くへと押し付けたとたんに熱が弾ける。
「う、ふっ……」
ぽたぽたと汗が滴り落ちる。
どくどくと吐き出しながら、さっきは感じなかった充足感と、奇妙な征服感が満たされたような気がした。
無表情なりに呆然としているエルストに、ナディアルは、ふん、と笑ってキスを落とす。薄く開いたままの唇を塞ぎ、エルストの舌を絡め取る。
エルストはされるがままに、ただ口内を貪られる。
「お前は、レギナと何が違うんだ。お前がレギナなんじゃないのか」
「私は主人の手足であり、一部である。主人ではない」
やっぱり意味がわからない。
「レギナは、魔術師なのか」
「違う」
「――いったい何なんだ。お前たちは、何者なんだ」
「それに答える権限は、私にない」
ナディアルは、チ、と小さく舌打ちをする。
どうあっても答えないのか、と。
「そうか」
身体を起こし、背を向けてシーツに包まると、また眠りに落ちた。
* * *
夜が明けても、雨はまだ続いていた。
昨日から続いている結構な降りだ。これでは外を歩くなんて無理だろう。
乾いてごわついた服を着て、どうするつもりなのかとエルストを窺い見る。そのエルストは窓からじっと外を見つめていた。
「ナディアル」
「なんだ」
「外へ出る。だが、ナディアルはここを動くな」
「なぜだ」
「障害が発生した。排除する」
ナディアルは瞠目して外へと目をやった。
けれど、雨にけぶる町に人影は見当たらない。
「どこに……」
怪訝な表情になったナディアルには構わず、エルストはそっと部屋を出る。
ひたすら目を凝らしてみたが、やはり、ナディアルの目に怪しい影はひとつも見当たらなかった。
エルストが戻ったのは、昼を回った頃だった。
頭から爪先までずぶ濡れの泥だらけで、いったいどこで何をしてきたのかというほどの有様だ。
「ナディアル、ここを出なければならない」
どさりと置いた包みを開けて、着替えらしきものを取り出した。
「軍国が追い付いたのか」
「その通りだ」
エルストが衣服を差し出す。地味な、平民のような衣服だ。たしかに、くたびれているとはいえ、この王国の正装では目立つだろう。
服を受け取り、上着を脱ぎ捨てた。手伝おうとしたエルストの手を払い、「お前は自分の形をなんとかしろ」と返す。
用意を終え、頭からマントをすっぽりと被って廊下に出た。部屋の外に人の気配はなく、しんと静まり返っていた。
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訝しむ間も無く、ナディアルは腕を取られて雨の中へと連れ出される。
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