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あなたは運命のひとだから
前編
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「ロクサーヌ、あなたは僕の運命の女だから、絶対、僕に黙って何処かへいってしまってはだめだからね?」
ロクサーヌがシリル・リヴィエールにそう言われたのは、彼が10歳、彼女が16歳の時だった。父に連れられて訪れたリヴィエール公爵のお屋敷で、ロクサーヌが次代の森番になるのだと、公爵に紹介された日のことだ。
だが、ただの森番の娘であるロクサーヌは、自分のいったい何がどう、公爵家三男坊の運命なのかと首を傾げてしまった。
しかしすぐに、これは子供特有の空想か何かなのではないかと思い直し、できるだけ丁寧な態度で微笑んだのだ。
きっと、騎士とお姫様ごっこのようなものなのだろうと、そう考えて。
「光栄です、シリル様」
「本気にしていないね? だめだよ、約束だからね?」
「はい、わかりました」
シリルは何度も繰り返し、ようやく納得したのか、にっこりと笑ってロクサーヌに力いっぱい抱き付いた。
そんなシリルを、公爵が困ったように見つめていた。その表情は、シリルはまだまだ子供だと言ってるようで、ロクサーヌはなんだか微笑ましいと思う。
それに、公爵家の御令息に気に入ってもらえたなら、きっと僥倖だろう。さらに言えば、シリルはきらきら輝く明るい金の髪に翠玉もかくやという瞳の、まるで天使のように愛らしい子供なのだ。嫌われるよりもずっといい。
* * *
「ロクサーヌ、ひさしぶりだね!」
主人の屋敷に呼び出されて慌てて来てみれば、シリルが帰宅していた。
11の歳に適性を見出され、13の歳で王都の魔術師学院に入学したシリルは、入学後2年でめきめきと頭角を現した。あと1、2年もすれば見習いから正式な魔術師になれるだろう。これは習得の難しい魔術という分野では、なかなかに優秀だと言える。
背が伸びて声も幾分か低くなったけれど、天使のような容貌は変わらない。ついでに、ロクサーヌへの態度も、はじめて会った時からまったく変わらない。
目線がロクサーヌよりもほんの少しだけ上になったけれど、子供のころのようにしっかりとロクサーヌを抱き締めてくる。
まるで、弟の成長を見ているようだ。
抱き締める力もすっかり強くなって、あと数年もすれば、シリルも立派な成人の男なのだなと感慨深い。
「シリル様もずいぶんご立派になられました。もう少しで正式な魔術師にもなれると聞いております。楽しみですね」
「早くここに戻りたくて、頑張ったんだ」
にっこりと頷くシリルに釣られて、ロクサーヌも顔をほころばせる。
「きっと旦那様もお喜びですよ」
「ロクサーヌは? どう? 嬉しい?」
「はい、もちろん嬉しいです」
「そう」
ふふ、とシリルは笑いながら、ロクサーヌの手を引いて長椅子に座った。
テーブルには、既に茶器の用意がされている。
「ロクサーヌ、ゆっくり話をしたいな」
「はい」
今日はもう、特にこれといった仕事はなかったはずだ。シリルのところに長居することになっても大丈夫だろう。
ロクサーヌはさっと頭の中で確認する。シリルの要望が優先なのはもちろんでも、それでも放置できないことはあるのだ。
シリルが手ずからカップに注いだお茶から、花のような香りが立ち昇った。嗅いだことのない甘い香りに、ロクサーヌは肩の力が抜けるような気がする。
「良い香りですね。とても甘くて、ふわふわするようで」
「王都で手に入れたんだ。ロクサーヌはお茶が好きだろう? さあ、飲んで」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えまして」
くすくすと笑いながらシリルが勧めてくるお茶の香りを堪能するようにひと口含む。口の中から鼻へと抜けるように、花よりもずっとずっと甘い香りが広がり、思わず、ほう、と息を吐いた。そのようすを嬉しそうに眺めていたシリルも、ゆっくりとお茶を含む。
それから、ここへ呼ばれた時はいつもそうするように、シリルが王都へ行っていた間の出来事を話しながら、ゆっくりとお茶を味わった。
「ところでロクサーヌ」
「はい」
空になったカップをテーブルに戻すと、シリルが姿勢を改めるように小さく身じろぎをした。
ほんの少しだけ声の調子が変わった気がして、ロクサーヌはわずかに首を傾げる。何か機嫌を損ねてしまうようなことがあっただろうか?
「ロクサーヌは、お見合いをするそうだね」
「え、はい……その、もう21ですし、嫁き遅れと言っていい歳ですから」
ロクサーヌは、少し恥ずかしそうに顔を俯ける。
このあたりの平民の娘は、早くて16か17、遅くても20を迎える前に相手を見つけて結婚する。なのに、自分はそんな縁にさっぱり恵まれず、もう21にもなってしまったのだ。このままでは、行かず後家と呼ばれるようになり、後添いの話しか来なくなってしまう。
さすがに焦って探してはみたものの、自力ではどうにもならず……父の知り合いの伝手をたどってようやく紹介してもらえることが決まったのだ。
苦笑するような微笑みを浮かべるロクサーヌに、しかし、シリルはなぜか顔を顰めてみせた。
「なぜ、お見合いなんかするの? 昔、約束したよね?」
「え? はい?」
約束?
ロクサーヌはきょとんと目を丸くする。
約束、約束……とぶつぶつ呟いて、ようやく、幼いシリルにはじめて会った日のことを思い出した。
「でも、シリル様。私は結婚してもここを離れないつもりですが」
「ここさえ離れなきゃ、僕のことなんてどうでもいいと思ってるの?」
「そんなことはありません」
シリルがのしかかるように迫ってくる。わずかに目が潤み、ほんのりと頬を紅潮させて、眉根を寄せて。
自分の見合いの、いったい何がまずかったのかと必死に考えながら、ロクサーヌは言葉を探して……はあ、とひとつ大きく息を吐いた。
心なしか、その吐息に熱がこもっていたように感じて、どきりとする。
それに、急に暑くなってきたように感じられて、つ、と汗が背を伝う。
シリルがきゅっとロクサーヌを抱き締め、体重をかけてくる。シリルの体重くらいなら苦にならず支えられるはずの、ロクサーヌの腕に力が入らない。
入らないどころか、身体に回されたシリルの腕の感触が妙に艶かしく感じられて……革の服越しなのに、触れたところがじんと痺れるようで……。
「あ、あの、シリル様……」
「ロクサーヌ、何処にも行かないって約束したよね? 忘れたの?」
「ですから、私はこちらを離れませんと……」
「なら、どうして僕から離れようとするの? あなたは僕の運命の女なのに」
「あの、その、運命って……んっ」
急に唇を塞がれて、ロクサーヌは狼狽えてしまう。
主家の子息に手を出すなんて、言語道断だ。
なのに、シリルの唇が甘くて、差し込まれた舌は柔らかくて、絡めあうととても気持ちよくて……心臓の音が高鳴り、頭の中にカッと血がのぼる。
すぐに離れなければならないのに、唇は相変わらず吸いついたまま離れられない。不意に背を撫でられ、震える身体をシリルに押し付けてしまう。
鼓動はますます激しくなり、触れられたすべての場所どころか、身体中が内側から疼き始めて、ロクサーヌはようやく何かがおかしいことに気づいた。この疼きは、もしかして……。
「シリル、さま、まさか、お茶に……」
唇がわずかに離れた隙に囁くと、シリルが蕩けるように笑った。
「うん」
「けど、シリル様も、同じものを……」
「うん、僕も飲んだよ。ロクサーヌと一緒に、身体の芯まで蕩けたいから」
「そんな、媚薬、なんて」
はあ、とシリルが熱の籠った吐息を漏らし、また、唇を塞ぐ。手があちこち這い回り、ロクサーヌの服を緩めていく。
太ももに擦り付けられたシリルの腰に熱く昂ぶった固いものを感じて、ぴくりとまた身体が震える。
いけないと思うのに、身体の疼きが止まらない。
「……あ、んっ」
「ロクサーヌ……っ」
はあはあと息を荒げて、シリルは夢中で服を脱がせていく。あらわになったロクサーヌの肌はしっとり汗ばんでいて、柔らかくて、触れた手のひらに吸い付くようで……シリルは首からゆっくりと舌を這わせていった。
「あ、シリル、さまっ……だ、だめ……あっ」
「ロクサーヌ、きれいだね」
双球をそっと手で持ち上げて、その先端に触れる。最初はおそるおそる確かめるように、それから圧し潰すように、次はこね回すようにして、指先で摘んで、そっと引っ張って、舌で転がして……。
そのどれもが疼きを大きくたまらなくするばかりで、ロクサーヌは身悶えする。ああ、ああと声を上げて、シリルの身体に縋ってしまう。
「柔らかい。こんなに柔らかいんだね。すごく柔らかいのに、弾力があって、ここは固くて……僕、ずっとロクサーヌに触れたかったんだ」
「シリル、さま」
「早く成人を迎えて、ロクサーヌが僕をちゃんと相手として見てくれるようになるのを、とても楽しみにしてたんだよ」
「あ……っ」
胸の先端を齧られて、びくりと身体が跳ねる。脚の間から微かに水音が立ち、どうしようもなく濡れていることを教える。
「けれど、ロクサーヌが見合いをするって聞いて……だから、急いで戻って来たんだ。どうして待っていてくれなかったの、ロクサーヌ」
「そん、な……森番は、続ける、のに……」
「だめだよロクサーヌ。わからないふりはしないで」
「ぅ、あっ!」
がりりと噛まれて、思わず身体を反らせてしまった。
それに合わせるかのように、シリルの片手がするりと身体を撫で下ろし、ロクサーヌの秘められた場所へと至る。
今度こそ、くちゅりとはっきりした水音が上がり、たちまちロクサーヌの顔が羞恥に赤く染まった。
「あ、やっ、シリルさま、そこは……あっ」
「ああ、ロクサーヌ、こんなに濡れてる。ねえ、ロクサーヌは僕がはじめて? もちろん、はじめてだよね? 僕はロクサーヌがはじめてなんだ。最初はロクサーヌといっしょがいいって、ずっと思ってた」
「あ、の、シリル、さま……っ」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて肌を吸いながら、シリルの頭が下がって行く。
たちまちその唇が齎すえもいわれぬ気持ちよさに、ロクサーヌは、自分の身体がどんどん融け崩れてしまうように感じて身悶えた。
ロクサーヌがシリル・リヴィエールにそう言われたのは、彼が10歳、彼女が16歳の時だった。父に連れられて訪れたリヴィエール公爵のお屋敷で、ロクサーヌが次代の森番になるのだと、公爵に紹介された日のことだ。
だが、ただの森番の娘であるロクサーヌは、自分のいったい何がどう、公爵家三男坊の運命なのかと首を傾げてしまった。
しかしすぐに、これは子供特有の空想か何かなのではないかと思い直し、できるだけ丁寧な態度で微笑んだのだ。
きっと、騎士とお姫様ごっこのようなものなのだろうと、そう考えて。
「光栄です、シリル様」
「本気にしていないね? だめだよ、約束だからね?」
「はい、わかりました」
シリルは何度も繰り返し、ようやく納得したのか、にっこりと笑ってロクサーヌに力いっぱい抱き付いた。
そんなシリルを、公爵が困ったように見つめていた。その表情は、シリルはまだまだ子供だと言ってるようで、ロクサーヌはなんだか微笑ましいと思う。
それに、公爵家の御令息に気に入ってもらえたなら、きっと僥倖だろう。さらに言えば、シリルはきらきら輝く明るい金の髪に翠玉もかくやという瞳の、まるで天使のように愛らしい子供なのだ。嫌われるよりもずっといい。
* * *
「ロクサーヌ、ひさしぶりだね!」
主人の屋敷に呼び出されて慌てて来てみれば、シリルが帰宅していた。
11の歳に適性を見出され、13の歳で王都の魔術師学院に入学したシリルは、入学後2年でめきめきと頭角を現した。あと1、2年もすれば見習いから正式な魔術師になれるだろう。これは習得の難しい魔術という分野では、なかなかに優秀だと言える。
背が伸びて声も幾分か低くなったけれど、天使のような容貌は変わらない。ついでに、ロクサーヌへの態度も、はじめて会った時からまったく変わらない。
目線がロクサーヌよりもほんの少しだけ上になったけれど、子供のころのようにしっかりとロクサーヌを抱き締めてくる。
まるで、弟の成長を見ているようだ。
抱き締める力もすっかり強くなって、あと数年もすれば、シリルも立派な成人の男なのだなと感慨深い。
「シリル様もずいぶんご立派になられました。もう少しで正式な魔術師にもなれると聞いております。楽しみですね」
「早くここに戻りたくて、頑張ったんだ」
にっこりと頷くシリルに釣られて、ロクサーヌも顔をほころばせる。
「きっと旦那様もお喜びですよ」
「ロクサーヌは? どう? 嬉しい?」
「はい、もちろん嬉しいです」
「そう」
ふふ、とシリルは笑いながら、ロクサーヌの手を引いて長椅子に座った。
テーブルには、既に茶器の用意がされている。
「ロクサーヌ、ゆっくり話をしたいな」
「はい」
今日はもう、特にこれといった仕事はなかったはずだ。シリルのところに長居することになっても大丈夫だろう。
ロクサーヌはさっと頭の中で確認する。シリルの要望が優先なのはもちろんでも、それでも放置できないことはあるのだ。
シリルが手ずからカップに注いだお茶から、花のような香りが立ち昇った。嗅いだことのない甘い香りに、ロクサーヌは肩の力が抜けるような気がする。
「良い香りですね。とても甘くて、ふわふわするようで」
「王都で手に入れたんだ。ロクサーヌはお茶が好きだろう? さあ、飲んで」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えまして」
くすくすと笑いながらシリルが勧めてくるお茶の香りを堪能するようにひと口含む。口の中から鼻へと抜けるように、花よりもずっとずっと甘い香りが広がり、思わず、ほう、と息を吐いた。そのようすを嬉しそうに眺めていたシリルも、ゆっくりとお茶を含む。
それから、ここへ呼ばれた時はいつもそうするように、シリルが王都へ行っていた間の出来事を話しながら、ゆっくりとお茶を味わった。
「ところでロクサーヌ」
「はい」
空になったカップをテーブルに戻すと、シリルが姿勢を改めるように小さく身じろぎをした。
ほんの少しだけ声の調子が変わった気がして、ロクサーヌはわずかに首を傾げる。何か機嫌を損ねてしまうようなことがあっただろうか?
「ロクサーヌは、お見合いをするそうだね」
「え、はい……その、もう21ですし、嫁き遅れと言っていい歳ですから」
ロクサーヌは、少し恥ずかしそうに顔を俯ける。
このあたりの平民の娘は、早くて16か17、遅くても20を迎える前に相手を見つけて結婚する。なのに、自分はそんな縁にさっぱり恵まれず、もう21にもなってしまったのだ。このままでは、行かず後家と呼ばれるようになり、後添いの話しか来なくなってしまう。
さすがに焦って探してはみたものの、自力ではどうにもならず……父の知り合いの伝手をたどってようやく紹介してもらえることが決まったのだ。
苦笑するような微笑みを浮かべるロクサーヌに、しかし、シリルはなぜか顔を顰めてみせた。
「なぜ、お見合いなんかするの? 昔、約束したよね?」
「え? はい?」
約束?
ロクサーヌはきょとんと目を丸くする。
約束、約束……とぶつぶつ呟いて、ようやく、幼いシリルにはじめて会った日のことを思い出した。
「でも、シリル様。私は結婚してもここを離れないつもりですが」
「ここさえ離れなきゃ、僕のことなんてどうでもいいと思ってるの?」
「そんなことはありません」
シリルがのしかかるように迫ってくる。わずかに目が潤み、ほんのりと頬を紅潮させて、眉根を寄せて。
自分の見合いの、いったい何がまずかったのかと必死に考えながら、ロクサーヌは言葉を探して……はあ、とひとつ大きく息を吐いた。
心なしか、その吐息に熱がこもっていたように感じて、どきりとする。
それに、急に暑くなってきたように感じられて、つ、と汗が背を伝う。
シリルがきゅっとロクサーヌを抱き締め、体重をかけてくる。シリルの体重くらいなら苦にならず支えられるはずの、ロクサーヌの腕に力が入らない。
入らないどころか、身体に回されたシリルの腕の感触が妙に艶かしく感じられて……革の服越しなのに、触れたところがじんと痺れるようで……。
「あ、あの、シリル様……」
「ロクサーヌ、何処にも行かないって約束したよね? 忘れたの?」
「ですから、私はこちらを離れませんと……」
「なら、どうして僕から離れようとするの? あなたは僕の運命の女なのに」
「あの、その、運命って……んっ」
急に唇を塞がれて、ロクサーヌは狼狽えてしまう。
主家の子息に手を出すなんて、言語道断だ。
なのに、シリルの唇が甘くて、差し込まれた舌は柔らかくて、絡めあうととても気持ちよくて……心臓の音が高鳴り、頭の中にカッと血がのぼる。
すぐに離れなければならないのに、唇は相変わらず吸いついたまま離れられない。不意に背を撫でられ、震える身体をシリルに押し付けてしまう。
鼓動はますます激しくなり、触れられたすべての場所どころか、身体中が内側から疼き始めて、ロクサーヌはようやく何かがおかしいことに気づいた。この疼きは、もしかして……。
「シリル、さま、まさか、お茶に……」
唇がわずかに離れた隙に囁くと、シリルが蕩けるように笑った。
「うん」
「けど、シリル様も、同じものを……」
「うん、僕も飲んだよ。ロクサーヌと一緒に、身体の芯まで蕩けたいから」
「そんな、媚薬、なんて」
はあ、とシリルが熱の籠った吐息を漏らし、また、唇を塞ぐ。手があちこち這い回り、ロクサーヌの服を緩めていく。
太ももに擦り付けられたシリルの腰に熱く昂ぶった固いものを感じて、ぴくりとまた身体が震える。
いけないと思うのに、身体の疼きが止まらない。
「……あ、んっ」
「ロクサーヌ……っ」
はあはあと息を荒げて、シリルは夢中で服を脱がせていく。あらわになったロクサーヌの肌はしっとり汗ばんでいて、柔らかくて、触れた手のひらに吸い付くようで……シリルは首からゆっくりと舌を這わせていった。
「あ、シリル、さまっ……だ、だめ……あっ」
「ロクサーヌ、きれいだね」
双球をそっと手で持ち上げて、その先端に触れる。最初はおそるおそる確かめるように、それから圧し潰すように、次はこね回すようにして、指先で摘んで、そっと引っ張って、舌で転がして……。
そのどれもが疼きを大きくたまらなくするばかりで、ロクサーヌは身悶えする。ああ、ああと声を上げて、シリルの身体に縋ってしまう。
「柔らかい。こんなに柔らかいんだね。すごく柔らかいのに、弾力があって、ここは固くて……僕、ずっとロクサーヌに触れたかったんだ」
「シリル、さま」
「早く成人を迎えて、ロクサーヌが僕をちゃんと相手として見てくれるようになるのを、とても楽しみにしてたんだよ」
「あ……っ」
胸の先端を齧られて、びくりと身体が跳ねる。脚の間から微かに水音が立ち、どうしようもなく濡れていることを教える。
「けれど、ロクサーヌが見合いをするって聞いて……だから、急いで戻って来たんだ。どうして待っていてくれなかったの、ロクサーヌ」
「そん、な……森番は、続ける、のに……」
「だめだよロクサーヌ。わからないふりはしないで」
「ぅ、あっ!」
がりりと噛まれて、思わず身体を反らせてしまった。
それに合わせるかのように、シリルの片手がするりと身体を撫で下ろし、ロクサーヌの秘められた場所へと至る。
今度こそ、くちゅりとはっきりした水音が上がり、たちまちロクサーヌの顔が羞恥に赤く染まった。
「あ、やっ、シリルさま、そこは……あっ」
「ああ、ロクサーヌ、こんなに濡れてる。ねえ、ロクサーヌは僕がはじめて? もちろん、はじめてだよね? 僕はロクサーヌがはじめてなんだ。最初はロクサーヌといっしょがいいって、ずっと思ってた」
「あ、の、シリル、さま……っ」
ちゅ、ちゅ、と音を立てて肌を吸いながら、シリルの頭が下がって行く。
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