クソイケメンな吟遊詩人にはじめてを奪われて無職になったので、全力で追いかけて責任取らせます

ぎんげつ

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岩小人の町

どうしてこうなったのか

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 本当にどうしてこうなった。こいつ頭おかしいんじゃないか。
 長椅子を挟んでじりじりと対峙しながら、ミーケルは考える。

 もしかしなくても、今後ずっと、エルヴィラと一緒にいる限り、毎晩この調子で襲われるということなのか。

 どうやってこの状況を逃れよう。
 自分が使える魔法は?
 ここを逃れた後はどうすればいい?

 必死で考えを巡らせていると、急にエルヴィラが構えを解き、眉尻を下げる。
 困ったような顔で、じっと上目遣いにミーケルを見上げる。

「なあ……そんなに私じゃ嫌なのか?」
「嫌とかそういう問題じゃないね」

 ミーケルは警戒したまま、そんなエルヴィラに渋面を向ける。

「──だいたいなんで僕なんだよ。男ならもっと他にいるだろう? よりによって、どうして僕なんだ」
「だって、私は、もうミケ以外とキスしたくないんだ」

 しおしおと項垂れてぽつりと呟くエルヴィラの姿が、ミーケルの心臓に刺さる。

「だから、はじめても、ミケがいい。ミケじゃなきゃ、嫌だ」

 じっと見つめるエルヴィラの目が潤む。

 ああ、どうして――本当にどうして、こんなことになったんだ!

「あああっ、もう!」

 ずかずかと、腹立たしげに足音を響かせて、ミーケルはエルヴィラへと近づいた。
 ぐいっと抱き寄せて、額を合わせるように顔を近づける。

「――どれだけ追いかけられたって、僕は絶対責任なんか取らないよ。どうなったって知らないからね」

 そう告げて、ミーケルは返事なんて待たずにエルヴィラの唇を塞いだ。



 ちゅ、ちゅくと音を鳴らしながら舌を絡められて、それに応えようとエルヴィラも必死に舌を絡める。

 吸われたり、軽く歯を立てられたり……ほんとうに、あんなに気持ち悪いと思っていたことが、今はぜんぜん気持ち悪くない。
 むしろうっとりするようなぞくぞくするような、不思議な感覚に恍惚としてしまう。

 いったいいつから、どうしてこんな風になっていたんだろう。

 だんだんと身体の力が抜けて立っていられなくなってしまったエルヴィは、ミーケルの身体に縋り付く。
 ミーケルの目がふっと笑むように細められた。とても優しく微笑まれたように感じて、エルヴィラもつられて笑ってしまう。

 キスをしながら掬い上げられるように横抱きに抱かれて、少し慌ててしまう。

「ん、んん……」

  そのままベッドの上に連れて行かれて寝かされた。のしかかるように上に覆い被さったミーケルの顔が近づき、さらにキスをされる。

 思えば、彼とはキスばっかりだ。けれど、こんなに身体が熱くなったのは初めてじゃないだろうか。

「ん……」

 夜着の紐が解かれた。
 襟ぐりが広げられて、ミーケルの手でゆっくり下ろされる。
 前はただ怖いだけだったのに、今は怖くない。ただ、ドキドキする。

「……ん、っ……は」

 ミーケルの顔が、だんだんと下りていく。首にキスをして、肩にキスをして……ミーケルの唇があちこち触れるたび、背中にぞくっとする何かが走る。

 つい、ミーケルに回した腕に力を込めてしまうと、「それじゃ、動けないよ」と笑いながら囁かれ、片手を彼の手に取られてしまった。
 ぎゅっと指を絡めて握られて、これはこれでドキドキする。

 さっきからドキドキしすぎなんじゃないかと、エルヴィラは少し心配になってしまう。

 片手はエルヴィラの手を握りながら、もう片方の手で、ミーケルは器用にエルヴィラを裸にしていった。
 さすがに慣れているなと考えて、エルヴィラの鳩尾のあたりが少しだけきゅっと締め付けられるように苦しくなる。

 ミーケルの自由にしていい……とは言っても、やっぱり彼が他の女の人のところへ行ってしまうのは嫌だ。

「また泣いてるの? ここまで来てヤるのが怖くなった? やっぱりやめる?」

 くく、と笑いながらそう言われて、エルヴィラは首を振った。いつの間にか目が潤んでいたみたいだった。

「そうじゃ、なくて……そ、その、ミケが、他の女の人のところに行ってしまったらって……嫌だって思って……なんだか、悲しくなって……」

 ミーケルは一瞬、驚いたように瞠目する。
 それから、なぜだかぎゅっと抱き締められて、笑われた。

「――君ってほんとうに馬鹿だね。何、先走ってるのさ。そもそも僕らは恋人でも何でもないじゃないか」

 そんなことを囁かれたって解せない。
 自分が馬鹿なことは知ってるけど、それでも納得できない。
 だって、ほんとうに嫌なんだ。

「いいじゃないか。だって、嫌なものは嫌なんだ」

 ミーケルはまた笑ってエルヴィラの頬にひとつキスをする。

「それじゃ、君のはじめてを貰う代わりにひとつ約束してあげるよ。
 僕を流れる血にかけて、君のことが嫌いになって、顔も見たくなくなるまで、他の女の子のところには行かない」
「――え?」
「今のとこ、そこまで君を嫌いなわけじゃないしね」
「う、うん……うれしい」

 そんなこと約束してくれるなんて思わなかった。
 とにかく、ミーケルに嫌われない限り、彼がエルヴィラ以外の女の子のところへ行ってしまうことはないのか。

「その代わり、もう絶対に止めない。交換条件だからね」
「だ、大丈夫だ」

 ミーケルのきらきらと透き通った翠玉エメラルドの目をじっと見つめながら、エルヴィラは頷く。嫌いじゃないという言葉にほっとして、安堵の吐息を漏らす。
 ミーケルはくすりと笑ってもう一度キスをすると、また下へ向かった。
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