クソイケメンな吟遊詩人にはじめてを奪われて無職になったので、全力で追いかけて責任取らせます

ぎんげつ

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三首竜の町

詩人の好奇心

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 エルヴィラは思わずミーケルの顔を覗き込んだ。
 ミーケルは笑ってぽんぽんとエルヴィラの頭を叩く。

「どこに行くかわかっていて言ってるのか?」
「殿下は私を何だとお思いですか? それに」

 呆気に取られたアルフォンソ王太子の目の前で、ミーケルは袖口に手を突っ込んだ。いったい何をと問いただそうとする騎士団長を制して栗鼠のままのアライトを引っ張り出し、テーブルの上に置く。

「僕が行くことになれば、もれなく彼も付いてきますよ」
「えっ? 俺も!?」
「これは?」

 アルフォンソ王太子が怪訝そうに栗鼠へと目を落とす。視線を受けて、アライトはおろおろとミーケルと王太子を見比べた後、栗鼠のままぺこりとお辞儀をした。

「これでもこいつは竜なんです」

 微笑みを浮かべたまま、ミーケルが告げた。
 アルフォンソ王太子もファビオ騎士団長も思い切り眉を顰め、「竜?」と繰り返して 顔を見合わせた。



「なあ、ミケ。ほんとうに行くのか?」
「行くよ。僕は詩人だよ? 伝説を目の当たりにできるかもしれないチャンスなのに、見逃すわけないだろう?」

 段取りは後ほど連絡すると言い残して王太子たちが去った後、ミーケルは少々浮かれているようだった。
 けれど、エルヴィラはどうにも気乗りがしない。

「何があるのかわからないんだぞ。ミケが危ない目にあったらどうするんだ?」
「君が護ってくれるんじゃないの?」

 ミーケルがくすくすと笑いながらエルヴィラを引き寄せた。

「君は僕の護衛騎士なんだろ?」

 おいでと言われるままに、エルヴィラは抱き寄せられる。

「あの城跡でも君が護ってくれるんだろう? なら問題はないよね?」
「そうだけど」
「じゃあこの話はこれで決定だ」

 また背中をトントンと叩かれて、エルヴィラはぎゅうと抱きつく。

「ミケが危ない目に遭うのはやだ」
「君がいれば大丈夫だろう?」

 見上げるエルヴィラに、ミーケルはキスを落とす。
 それでも不安が解消しないのか、エルヴィラの表情は曇ったままだ。

「そんなに心配しないでよ。前にいちど言わなかったっけ? 僕の家系は強運なんだよ。だから大丈夫だって」
「――うん」

 不承不承、どうにか頷くエルヴィラに、ミーケルはもう一度キスをした。

「俺ちょっと外見てくるな」

 小さく囁いて、アライトはそっと窓から外へと抜け出した。


 * * *


 ミーケルとエルヴィラ、そしてアライトは、そのまま公爵家の屋敷に留め置かれた。宿に置きっぱなしだった荷物は、いつの間にか公爵家の使用人が運んできていた。

 問題の城跡に乗り込んだのは、そこからさらに二日後だ。

 前日には騎士団長率いる騎士たちと魔術師長率いる魔術師たちが協力し、城跡の周囲に陣取る邪教徒たちの掃討にあたったのだとか。
 こっそりと見に行ったアライトが、「おれも参加したかった」と興奮混じりに語ってくれた。

 邪教徒とはいえ、騎士たちのように専門的な戦闘訓練を受けているわけでもなく、邪竜神の司祭も数えるほどしかいなかったようで、それほど苦戦はしなかったらしい。

「ま、そうは言っても真打が中にいるかもしれないしな」

 見物から戻ってくると、相変わらず栗鼠の姿のままがりがり果物を齧りつつ、アライトは肩を竦めた。



 そして、突入当日。

 現在の王城の前に趣き、王太子殿下率いる騎士たちと合流した。邪信徒の残党を警戒して、結構な人数だ。

「中の浅いところにいる残党は彼らに掃討を任せ、我々は先へ進む」

 ファビオ騎士団長に説明され、エルヴィラは頷く。

「竜はどこに?」
「ミケのポケットの中に。奴らに知られないほうが良いと判断してだ。それに、中の広さがわからないからな」
「なるほど」

 ファビオ騎士団長も頷く。

「では、ミーケル殿には殿下のそばに控えて戴き、まんいちの場合には殿下と共に脱出するよう頼みたい」
「了解しました」

 外向けの微笑みを浮かべながら、ミーケルはアライトの入ったポケットを軽く叩く。
 アライトは小さく吐息を漏らしつつ、ミーケルはほんとうに言われたとおりにするんだろうか、などと考えた。

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