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湖水の町
いつもと違う
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ひとしきり唇を吸われて最後にぺろりと舐められて、エルヴィラはもう一度「ミケ?」と呼びかけた。
「そんなに驚いた顔をして、どうしたの」
「だって、ミケがなんだかいつもと違う」
「そう?」
くすくすと笑いながら、ミーケルがまたキスをする。
「僕は何をこんなに必死になっているんだろうね」
「ミケが、必死?」
「そうだよ。あの決闘の時以上に必死だ」
こつんと額を合わせたミーケルになおもじっと見つめられて、エルヴィラは不思議そうに、微かに首を傾げた。
「――子供、作ろうか」
「ミケ?」
「欲しいって言っただろう?」
むう、とエルヴィラの眉間に皺がよる。
「ミケ、やっぱり、何かおかしいぞ」
「おかしくないよ。
君だって、あの時、“お前と私の子供なんだからふたりで育てようと迫るつもりだ”って言ってただろう? あれと一緒だよ」
「あ、あれは……」
エルヴィラの顔がかっと赤くなる。
「あの時はあの時だ。今のミケはいつもと違うから、ちゃんと落ち着いて、ちゃんと考えたほうがいいと思うんだ」
「いつもと一緒だよ」
微笑むミーケルに、エルヴィラはますます顔を顰めた。
やっぱり何かおかしい。ミーケルは変に焦ってる。
「わかってるのか? 子供ができたら、旅は無理だ。飽きたと騒いでも、子供が大きくなるまでひとつの場所に留まらなきゃならないんだぞ」
「わかってるよ。僕を何だと思ってるのさ」
「ミケだ」
即答されたミーケルが鼻白んだように顔を顰め、今度はエルヴィラが笑う。
「だから、ミケがちゃんと考えて、しばらく留まってもいいって思えてからでいい。
無理することはないんだ。私はちゃんとミケにくっ付いて歩くんだから。私だって、ミケから離れるなんて考えられないくらい捕まってるんだぞ」
エルヴィラはミーケルの唇をちょんと啄ばむようにキスをする。
「だって、私はミケのことが大好きなんだ」
「……なんだかいつもと逆だ」
「たまにはいいじゃないか」
エルヴィラがあはっと笑い……ふと伺うようにミーケルを見上げて頬を触る。
「……けど、ミケがいいと思ったら、いつでもいいんだからな……子供、作るのは」
ミーケルがぷっと噴き出した。エルヴィラの頭を抱えて抱き締めて、身を震わせて笑い出した。何がそんなにおかしいのかと、エルヴィラの眉間にくっきりと皺ができるくらいに、くつくつと笑い続けている。
ミーケルはこんなに笑い上戸だったっけ?
そんなことを考えるくらい笑い続けて、エルヴィラの頭をわしわしと搔き回す。
「な、なんでそんなに笑うんだ」
「ああもう」
何か恥ずかしいことでも言ったかと、眉根を寄せたまま真っ赤になって顔を上げようとするエルヴィラに、ミーケルは笑いながらキスを降らせた。
頭にも顔にも首にも肩にも、顔の届く場所全部にたくさんのキスを降らせた。
「エルヴィラ」
「なんだ?」
笑い続け、キスを降らせ続けるミーケルを、赤い顔のままのエルヴィラが不思議そうに、怪訝そうにじっと見つめる。
「エルヴィラ、君が僕の唯一でよかった」
「な、なんだ急に」
ミーケルは肩に顔を埋め、まだ笑い続けながら、今度は首筋を齧りだす。
「み、ミケ、どうしたんだ、ミケ」
「エルヴィラ」
「う?」
首をつっと撫でられて、エルヴィラの背にあらぬ感覚が走った。
この流れはもしかして……と思うまでもなく、ミーケルが両手でエルヴィラの顔を挟み、自分のほうを向かせる。
「エルヴィラ、やっぱり、今作ろうか」
「え、な……」
「僕らの子供」
「え」
ぽかんとするエルヴィラを押し倒して、ミーケルはまたキスをする。
「な、いいのか、何年も同じ町にじっとしてないといけないんだぞ」
「構わないよ。君との子供のためなら、全然構わない」
頬を撫で、耳を擽りながら騎士服の襟元を緩めていく。
いいんだろうか、いいのかな……とおろおろ考えているうちにどんどん脱がされて、あっという間にほとんど下着だけにされてしまった。
いったい何がどうしてしまったのか、上機嫌でエルヴィラを脱がせながら、ミーケルはあちこちにキスをし続けている。
まるでキス魔になってしまったみたいだ。
――もう、ミーケルが良いって言うんだからいいか。
エルヴィラだってミーケルとの子供が欲しいのだし。
ミーケルとの間にできる子供は、いったいどんな子になるんだろうか。うんと強い騎士でも、ミーケルのような吟遊詩人でもいいな。
ついそんなことを考えて、エルヴィラはにひゃにひゃと笑い出し……いつにも増して緩みきったエルヴィラの笑顔に、ミーケルも嬉しそうに目を細める。
「何をそんなに笑ってるの」
「ミケと私の子は、どんな子になるかなって考えたんだ」
小さく瞠目して、すぐにミーケルは蕩けるような笑みを浮かべる。
「ずいぶん気が早いんだね」
「だって、ミケに似れば立派な詩人だし、私に似れば立派な騎士なんだ。どっちに転んでも将来有望だぞ。絶対すごい子になるに決まってる」
「たしかに」
笑いながら愛しげにひとつキスを落としてミーケルが覗き込む。そのミーケルの顔を見つめながら、エルヴィラはふと考えた。
これからできるふたりの子供も、ミーケルやシェイファラルのようなきれいな翠玉の目で生まれてくるのかな、と。
「そんなに驚いた顔をして、どうしたの」
「だって、ミケがなんだかいつもと違う」
「そう?」
くすくすと笑いながら、ミーケルがまたキスをする。
「僕は何をこんなに必死になっているんだろうね」
「ミケが、必死?」
「そうだよ。あの決闘の時以上に必死だ」
こつんと額を合わせたミーケルになおもじっと見つめられて、エルヴィラは不思議そうに、微かに首を傾げた。
「――子供、作ろうか」
「ミケ?」
「欲しいって言っただろう?」
むう、とエルヴィラの眉間に皺がよる。
「ミケ、やっぱり、何かおかしいぞ」
「おかしくないよ。
君だって、あの時、“お前と私の子供なんだからふたりで育てようと迫るつもりだ”って言ってただろう? あれと一緒だよ」
「あ、あれは……」
エルヴィラの顔がかっと赤くなる。
「あの時はあの時だ。今のミケはいつもと違うから、ちゃんと落ち着いて、ちゃんと考えたほうがいいと思うんだ」
「いつもと一緒だよ」
微笑むミーケルに、エルヴィラはますます顔を顰めた。
やっぱり何かおかしい。ミーケルは変に焦ってる。
「わかってるのか? 子供ができたら、旅は無理だ。飽きたと騒いでも、子供が大きくなるまでひとつの場所に留まらなきゃならないんだぞ」
「わかってるよ。僕を何だと思ってるのさ」
「ミケだ」
即答されたミーケルが鼻白んだように顔を顰め、今度はエルヴィラが笑う。
「だから、ミケがちゃんと考えて、しばらく留まってもいいって思えてからでいい。
無理することはないんだ。私はちゃんとミケにくっ付いて歩くんだから。私だって、ミケから離れるなんて考えられないくらい捕まってるんだぞ」
エルヴィラはミーケルの唇をちょんと啄ばむようにキスをする。
「だって、私はミケのことが大好きなんだ」
「……なんだかいつもと逆だ」
「たまにはいいじゃないか」
エルヴィラがあはっと笑い……ふと伺うようにミーケルを見上げて頬を触る。
「……けど、ミケがいいと思ったら、いつでもいいんだからな……子供、作るのは」
ミーケルがぷっと噴き出した。エルヴィラの頭を抱えて抱き締めて、身を震わせて笑い出した。何がそんなにおかしいのかと、エルヴィラの眉間にくっきりと皺ができるくらいに、くつくつと笑い続けている。
ミーケルはこんなに笑い上戸だったっけ?
そんなことを考えるくらい笑い続けて、エルヴィラの頭をわしわしと搔き回す。
「な、なんでそんなに笑うんだ」
「ああもう」
何か恥ずかしいことでも言ったかと、眉根を寄せたまま真っ赤になって顔を上げようとするエルヴィラに、ミーケルは笑いながらキスを降らせた。
頭にも顔にも首にも肩にも、顔の届く場所全部にたくさんのキスを降らせた。
「エルヴィラ」
「なんだ?」
笑い続け、キスを降らせ続けるミーケルを、赤い顔のままのエルヴィラが不思議そうに、怪訝そうにじっと見つめる。
「エルヴィラ、君が僕の唯一でよかった」
「な、なんだ急に」
ミーケルは肩に顔を埋め、まだ笑い続けながら、今度は首筋を齧りだす。
「み、ミケ、どうしたんだ、ミケ」
「エルヴィラ」
「う?」
首をつっと撫でられて、エルヴィラの背にあらぬ感覚が走った。
この流れはもしかして……と思うまでもなく、ミーケルが両手でエルヴィラの顔を挟み、自分のほうを向かせる。
「エルヴィラ、やっぱり、今作ろうか」
「え、な……」
「僕らの子供」
「え」
ぽかんとするエルヴィラを押し倒して、ミーケルはまたキスをする。
「な、いいのか、何年も同じ町にじっとしてないといけないんだぞ」
「構わないよ。君との子供のためなら、全然構わない」
頬を撫で、耳を擽りながら騎士服の襟元を緩めていく。
いいんだろうか、いいのかな……とおろおろ考えているうちにどんどん脱がされて、あっという間にほとんど下着だけにされてしまった。
いったい何がどうしてしまったのか、上機嫌でエルヴィラを脱がせながら、ミーケルはあちこちにキスをし続けている。
まるでキス魔になってしまったみたいだ。
――もう、ミーケルが良いって言うんだからいいか。
エルヴィラだってミーケルとの子供が欲しいのだし。
ミーケルとの間にできる子供は、いったいどんな子になるんだろうか。うんと強い騎士でも、ミーケルのような吟遊詩人でもいいな。
ついそんなことを考えて、エルヴィラはにひゃにひゃと笑い出し……いつにも増して緩みきったエルヴィラの笑顔に、ミーケルも嬉しそうに目を細める。
「何をそんなに笑ってるの」
「ミケと私の子は、どんな子になるかなって考えたんだ」
小さく瞠目して、すぐにミーケルは蕩けるような笑みを浮かべる。
「ずいぶん気が早いんだね」
「だって、ミケに似れば立派な詩人だし、私に似れば立派な騎士なんだ。どっちに転んでも将来有望だぞ。絶対すごい子になるに決まってる」
「たしかに」
笑いながら愛しげにひとつキスを落としてミーケルが覗き込む。そのミーケルの顔を見つめながら、エルヴィラはふと考えた。
これからできるふたりの子供も、ミーケルやシェイファラルのようなきれいな翠玉の目で生まれてくるのかな、と。
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