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第一章 彼の母代わり
2.シエラは男の子!?
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「とりあえず一年、いや半年で構わないからその子の面倒を見てほしいのです。引き受けてくれますか?」
司祭様は私の心を覗くみたいに目をじっと見た。
「はい、是非やらせてください。その子をきっと愛に溢れた子に育て上げます」
小さい子供は好きだし、一緒にお祈りをしたりお菓子作りをしたりきっと楽しいだろうと思った。
「そう、では修道院の敷地内にある林を抜けた先の小屋にシエラと一緒に引っ越してください。数年前まで門番が住んでいたのをそのままにしてあるので、すぐにでも暮らせますから」
どうして引っ越しが必要なのか、不思議に思った。
「修道院の私の部屋で面倒を見るのではだめなのでしょうか?」
「女子修道院は男子禁制ですよ」
シエラは男の子なのか。名前の雰囲気からなんとなく女の子だと思っていたのだが。
「……男子と言っても小さい子ですよね?」
「シエラは十六歳の少年です」
想像していたよりも大きい子だ。
十歳で孤児院を出て女子修道院に移って以来、女性ばかりに囲まれて生活してきた私に、十六歳の少年と一緒に暮らして面倒を見ることなんてできるのか。
「あの……、十六歳というと私と三歳しか離れていません。私が母代わりをするのは難しいように思うのですが。……それに十六歳というともうほとんど大人ではないですか」
「シスターアイネ、僕はあなたになら出来ると信じているから頼んでいるのです。彼には母なる愛情が必要なのです。年齢なんて関係ないでしょう、真の博愛とはそういうものですよ」
「司祭様がおっしゃるなら……」
正直、自信などないが、今更出来ませんなんて言って司祭様をがっかりさせたくなかった。
呆気に取られる私の前で司祭様が一瞬、横を向いて悪魔のように口元を釣り上げたように見えたような気がした。
しかしそれは窓越しの月明かりと祭壇のろうそくだけで聖堂の中が薄暗く不思議な影を作っているせいだろう。
優しい司祭様がそんな顔をするはずがないのだから。
司祭様は私の心を覗くみたいに目をじっと見た。
「はい、是非やらせてください。その子をきっと愛に溢れた子に育て上げます」
小さい子供は好きだし、一緒にお祈りをしたりお菓子作りをしたりきっと楽しいだろうと思った。
「そう、では修道院の敷地内にある林を抜けた先の小屋にシエラと一緒に引っ越してください。数年前まで門番が住んでいたのをそのままにしてあるので、すぐにでも暮らせますから」
どうして引っ越しが必要なのか、不思議に思った。
「修道院の私の部屋で面倒を見るのではだめなのでしょうか?」
「女子修道院は男子禁制ですよ」
シエラは男の子なのか。名前の雰囲気からなんとなく女の子だと思っていたのだが。
「……男子と言っても小さい子ですよね?」
「シエラは十六歳の少年です」
想像していたよりも大きい子だ。
十歳で孤児院を出て女子修道院に移って以来、女性ばかりに囲まれて生活してきた私に、十六歳の少年と一緒に暮らして面倒を見ることなんてできるのか。
「あの……、十六歳というと私と三歳しか離れていません。私が母代わりをするのは難しいように思うのですが。……それに十六歳というともうほとんど大人ではないですか」
「シスターアイネ、僕はあなたになら出来ると信じているから頼んでいるのです。彼には母なる愛情が必要なのです。年齢なんて関係ないでしょう、真の博愛とはそういうものですよ」
「司祭様がおっしゃるなら……」
正直、自信などないが、今更出来ませんなんて言って司祭様をがっかりさせたくなかった。
呆気に取られる私の前で司祭様が一瞬、横を向いて悪魔のように口元を釣り上げたように見えたような気がした。
しかしそれは窓越しの月明かりと祭壇のろうそくだけで聖堂の中が薄暗く不思議な影を作っているせいだろう。
優しい司祭様がそんな顔をするはずがないのだから。
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