わかる私とわからないあなた

ごーや

文字の大きさ
2 / 2

わかる私

しおりを挟む
    私は生まれつき体が弱かった。だから、お外で遊べなかったの。ずっとお家の中でひとりぼっちだった。でも、ある時、町のお人形屋さんが私によく似たお人形さんを作ってくれたの。それがあなたよ。とっても嬉しかった。友達のいなかった私にとって初めてのお友だちができたんだもの。たとえお人形さんであってもね。だから、私はあなたをたくさん大事にしたわ。一緒におままごとをしたり、お本も読んだ。そんな毎日が楽しかった。でも、どんな楽しい毎日でも私の病気は治まらなかった。むしろ悪くなっているのが私自身でも分かるくらい。動くことも辛くなってきて、だんだん一日中寝て過ごすことも増えてきた時、コックさんが綺麗な果物をデザートに出してくれたの。その果物は、どんな病気も治すと言われているらしいのだけど、私は正直信じてはいなかった。今まで色んなものを試した。東西南北のあらゆるものを試した。でも、変わらなかった。だから、信じてはいなかった。その時の私は、病気が治ることよりもあなたと話したい、そう思っていたの。そう思いながら果物を食べ終えた時、私は今までにないくらい息が苦しくなった。喉が締めつけられて、声もかすれ声しか出せない。まるで誰かの手で喉を握りつぶされているように感じたわ。私はもう…。そう思った時、あなたが光りだしたの。その光がおさまったかと思うと、そこには動くあなたがいたわ。あなたは、
「ねぇ、今日は何をして遊ぶ?」
そう言ってくれた。私は苦しいのか嬉しいのか分からなくなって、
「あなたが私になって、お友だちをたくさん作ってね。」
って。そう言ったつもりだったのだけど、声にならなかったみたい。私は死んでしまった。一緒に“本当の意味で”遊びたかったなぁ。あなたはなんで私が動かなくなってしまったのか不思議そうだった。命に終わりが来ることなんてあなたは分からないから。でも、私の想いが伝わったのか、あなたは私を部屋の奥のお庭に置いた。そこに石を置いてね。あなたなりの弔いなのかしらね。でも私は幽霊になってしまったから、そこにはいないわよー。なんて、聞こえてるわけないわね。
    それから、あなたはお友だちを作るようになった。あの光る果物のおかげなのかしら。病気を治す、ではなく願いを叶える、なのかもしれないわね。あなたは、町のみんなとお友だちになった。でも、私は心配だわ。このままだと、悪い人ともお友だちになってしまいそう。私たちのお家はお屋敷だから、もしもの事があるかもしれない。でも、私は幽霊だからあなたを助けてあげられない。誰か助けに来てくれないかしら。って、さすがに心配しすぎよね。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

さよなら聖女様

やなぎ怜
ファンタジー
聖女さまは「かわいそうな死にかた」をしたので神様から「転生特典」を貰ったらしい。真偽のほどは定かではないものの、事実として聖女さまはだれからも愛される存在。私の幼馴染も、義弟も――婚約者も、みんな聖女さまを愛している。けれども私はどうしても聖女さまを愛せない。そんなわたしの本音を見透かしているのか、聖女さまは私にはとても冷淡だ。でもそんな聖女さまの態度をみんなは当たり前のものとして受け入れている。……ただひとり、聖騎士さまを除いて。 ※あっさり展開し、さくっと終わります。 ※他投稿サイトにも掲載。

処理中です...