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24. ダブルベット
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「ゆりっち、ヤバイ、ヤバイ」
カイからのLINEを見てる間に、本人が飛び込んできた。
「なに、どうしたの」
「大家のばあちゃん、ボケっちゃてるわ。不動産屋に連絡し忘れてダブルブッキング」
「なに?よくわかんないよ」
事情を詳しく聞くと、カイが更新を伝えていたにも関わらず、大家が不動産屋に連絡しなかったため、新しい入居者が決まってしまったということだ。
利用している沿線は、大学のキャンパスが多い。
このアパートも、古い割には掲載後、すぐに埋まるほどの人気物件である。
学生にとっては、格安の家賃は何ものにも代えがたい魅力に違いない。
「えーー、次の人いつ引っ越してくるの?」
「あさって」
「なにそれ、どうするのよー」
「緊急避難先、ここ」
カイは床に人差し指を差して懇願している。
「しょうがないなぁ~」
やったー!宝くじでも当たったかのような喜びようである。
翌日、会社に行ってる間に、カイは一人で引っ越しを済ませた。
大きめのダンボールが、2つ部屋の隅に置かれていた。
必要最小限だと言っていたが、洋服など分かりやすく仕訳けてある。
要領の悪い私と違って、てきぱきと手際よく荷解きをこなす。
このカラーボックス使うねとか言って、小物をしまっていた。
「この間、テーブルとか処分したから、荷物少ないめ、楽ちん」
ウキウキ気分で言われても、これは"おままごと"じゃないんだよ。
「部屋狭いけど、ベットはダブルにしなくちゃね」
はぁ~なんでそうなる、どこでなにをなにしてそうなった。
その日のうちに、カイはネットショップでダブルベッドをポチってしまった。
数日後には、一部屋の大半がベットの異様な光景が出来上がった。
「睡眠は大事だし、別の意味でもベットは大事」
カイの言葉に深い意味はないのかもしれない。
ちょっとドキマギして、慌ててキッチンに行って洗い物をする。
手伝いに来たカイの右手が肩に触れると、鼓動が高まった。
「いまベットの使い心地、試す?」
「そんなことは致しません」
「え~そんなことってどんなこと~」
「洗い物の邪魔です」
追い払って、洗い物を再開する。
普通の幸せ、普通の時間。
カイが与えてくれたもの、高価なものでも珍しいものでもない。
手を伸ばせば、そこにあったのに手にできなかったもの。
恋愛に関しては百戦錬磨のカイにとって、たぶん私は簡単な女だ。
カイが意図しなくても、その言葉一つに何気ない仕草に、喜んだり泣いたりして、
まるで子供のようだ。
だけど、いまは彼が優しく揺らすゆりかごに身を委ねていたいと思う。
隣りにいること、そばにいることが大事でしょとカイが言った。
そんなこと私が一番わかってるよ。
「やっぱ、硬いスプリングにして良かったネ」
「そうだね」硬い、硬くないの判別はつかなかったが、一応、同意はしといた。
「ねぇ、ゆりっちって○沢まさみに似てない?」
いきなり、何を大それたことをほざいているのだ。
恐れ多くも、あれほどの美人女優に似てるなどと、血迷ったか。
謝れ、○沢まさみ様に謝れ。
「下から見ると、やっぱ似てる」
事を致した後に、じっくり顔を観察して言うな。
正面でも下からでも、片鱗もないわ。
「まっ、○沢まさみを下から見たことないんだけどね」
「やめてくれないかなぁ、そうやってジッと見るの。落ち着かないんだよ。その顔」
「いまさら、取り替えられないじゃん」
「じゃあ、この間のお面でも被ってて」
「あれ、メルカリで売った、もうない」
そうやって邪険に扱わないと、君は遠慮なく踏み込んでくる。
心の中をザワつかせ、私を変えていく。
知らないでしょ、私を変えられるのは君だけなんだってこと。
難易度高めの<レベル93>
カイからのLINEを見てる間に、本人が飛び込んできた。
「なに、どうしたの」
「大家のばあちゃん、ボケっちゃてるわ。不動産屋に連絡し忘れてダブルブッキング」
「なに?よくわかんないよ」
事情を詳しく聞くと、カイが更新を伝えていたにも関わらず、大家が不動産屋に連絡しなかったため、新しい入居者が決まってしまったということだ。
利用している沿線は、大学のキャンパスが多い。
このアパートも、古い割には掲載後、すぐに埋まるほどの人気物件である。
学生にとっては、格安の家賃は何ものにも代えがたい魅力に違いない。
「えーー、次の人いつ引っ越してくるの?」
「あさって」
「なにそれ、どうするのよー」
「緊急避難先、ここ」
カイは床に人差し指を差して懇願している。
「しょうがないなぁ~」
やったー!宝くじでも当たったかのような喜びようである。
翌日、会社に行ってる間に、カイは一人で引っ越しを済ませた。
大きめのダンボールが、2つ部屋の隅に置かれていた。
必要最小限だと言っていたが、洋服など分かりやすく仕訳けてある。
要領の悪い私と違って、てきぱきと手際よく荷解きをこなす。
このカラーボックス使うねとか言って、小物をしまっていた。
「この間、テーブルとか処分したから、荷物少ないめ、楽ちん」
ウキウキ気分で言われても、これは"おままごと"じゃないんだよ。
「部屋狭いけど、ベットはダブルにしなくちゃね」
はぁ~なんでそうなる、どこでなにをなにしてそうなった。
その日のうちに、カイはネットショップでダブルベッドをポチってしまった。
数日後には、一部屋の大半がベットの異様な光景が出来上がった。
「睡眠は大事だし、別の意味でもベットは大事」
カイの言葉に深い意味はないのかもしれない。
ちょっとドキマギして、慌ててキッチンに行って洗い物をする。
手伝いに来たカイの右手が肩に触れると、鼓動が高まった。
「いまベットの使い心地、試す?」
「そんなことは致しません」
「え~そんなことってどんなこと~」
「洗い物の邪魔です」
追い払って、洗い物を再開する。
普通の幸せ、普通の時間。
カイが与えてくれたもの、高価なものでも珍しいものでもない。
手を伸ばせば、そこにあったのに手にできなかったもの。
恋愛に関しては百戦錬磨のカイにとって、たぶん私は簡単な女だ。
カイが意図しなくても、その言葉一つに何気ない仕草に、喜んだり泣いたりして、
まるで子供のようだ。
だけど、いまは彼が優しく揺らすゆりかごに身を委ねていたいと思う。
隣りにいること、そばにいることが大事でしょとカイが言った。
そんなこと私が一番わかってるよ。
「やっぱ、硬いスプリングにして良かったネ」
「そうだね」硬い、硬くないの判別はつかなかったが、一応、同意はしといた。
「ねぇ、ゆりっちって○沢まさみに似てない?」
いきなり、何を大それたことをほざいているのだ。
恐れ多くも、あれほどの美人女優に似てるなどと、血迷ったか。
謝れ、○沢まさみ様に謝れ。
「下から見ると、やっぱ似てる」
事を致した後に、じっくり顔を観察して言うな。
正面でも下からでも、片鱗もないわ。
「まっ、○沢まさみを下から見たことないんだけどね」
「やめてくれないかなぁ、そうやってジッと見るの。落ち着かないんだよ。その顔」
「いまさら、取り替えられないじゃん」
「じゃあ、この間のお面でも被ってて」
「あれ、メルカリで売った、もうない」
そうやって邪険に扱わないと、君は遠慮なく踏み込んでくる。
心の中をザワつかせ、私を変えていく。
知らないでしょ、私を変えられるのは君だけなんだってこと。
難易度高めの<レベル93>
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