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32. ドリカムの「決戦は金曜日」
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商店街の福引で2等のワインが当たった。
高級ワインではないが、ただで頂けるのはどんな物でも嬉しい。
急遽、献立は赤ワインに合うビーフストロガノフにした。
ちょっと値段の張る牛肉を奮発したのは言うまでもない。
ビーフストロガノフはカイの大好物である。
案の定、バターライスと共にお代わりして満足げである。
開けたワインはオーストリア産のぶどう品種”ツヴァイゲルト種”を使ったもので、スクリューキャップなので残しても大丈夫だ。
私もカイもお酒には弱い。
体質的に合わないとかで、カイはほとんど飲まないけど私は嗜む程度に飲む。
からみ酒か泣き上戸であるらしい。
大音量のドリカムの”決戦は金曜日”と大号泣に、お風呂からカイが飛び出してきた。
慌てたので下半身のバスタオルが落ちそうである。上半身は水が滴るイイ男だ。
「どうしたの、なに、なに?」
「うわーーーん、カイどこに行ってた、早くそこに座れ」
「さっき、風呂入るって言ったでしょ。取りあえずボリューム絞ろう」
カイはプレイヤーの音量を低くした。
「オチた時は、この曲に決まってるの!」
「わかった、わかった。いま着替え持ってくるから、さみぃーし」
ユニ○ロでお揃いで買ったスミ黒のスウェットの上下セットアップを着てきた。
「で、なに」
「あのね、トラウマ・・・」
「あっ、待って長くなりそうなので、水取ってくる」
髪を乾かすようにタオルで拭きながら、プリンとエビアンを手に戻ってきた。
「大学の時に友達とディズニー行った時の話なんだけど。20周年のアニバーサリーなんかで、すんごい混んで入場制限がかかったんだ。だから当日券は販売中止になっちゃちゃって。
私たちはコンビニでチケット買ってあったから良かったんだけど、ゲートのとこで女の子が泣いてるの。たぶん慰めてるおばあちゃんと二人で来てたんだと思う。もうシンデレラの衣装着てて、おばあちゃんがシーに行こうと言っても泣きじゃくるだけ。当たり前だよ、あの子はアリエルに会いに来たんじゃない、シンデレラに会いに来たんだから。私、次の日のチケット持ってた。ホテルでチケット買えるのも知ってた。なのにチケットを譲ることが出来なかった。なぜだと思う、割引で買ったチケットだからって躊躇したんだ。貧しいんだよ、貧しいのは心なんだよ、うえーーーん、謝りたい、今からでもごめんねって言いたいよーーー」
「なんだよ、それって泣くところなの」
「泣くに決まってんだろ。夢の国を前にして、あの子の夢ズタズタにしたんだから、うあーーーん、ごめーーーん」
「ゆりっちが悪いんじゃないだろ。もう20年も昔のことだし笑い話になってるさ、え!あっ、ゆりっち、こんなに飲んじゃったの。どうもおかしいと思った。もうお終いだからね」
そう言って、ほとんどカラになりかけたワインの瓶を片していた。
ベットに寝かされて、隣りに添い寝したカイの顔がおぼろげに見える。
カイの声が遠くに聞こえるようになってきた。
声が小さすぎて解読不能。
「俺もゆりっちに謝ることがある。今回の引っ越しの件、俺が仕掛けた。あまりにも上手くいったので、謝るタイミングがなかった、ごめん・・・今度ちゃんと謝るから」
しばらく耳元で何か言ってた気がするけど、よく覚えていない。
騙されたいのか、騙されたふりをしたいのか。
今はわからないけど、きっと、それも幸せの一部。
カイの仕掛けた罠なら、私は何度でも嵌まって見せるよ。
ちゃんと聞こえてたんだね<レベル55>
高級ワインではないが、ただで頂けるのはどんな物でも嬉しい。
急遽、献立は赤ワインに合うビーフストロガノフにした。
ちょっと値段の張る牛肉を奮発したのは言うまでもない。
ビーフストロガノフはカイの大好物である。
案の定、バターライスと共にお代わりして満足げである。
開けたワインはオーストリア産のぶどう品種”ツヴァイゲルト種”を使ったもので、スクリューキャップなので残しても大丈夫だ。
私もカイもお酒には弱い。
体質的に合わないとかで、カイはほとんど飲まないけど私は嗜む程度に飲む。
からみ酒か泣き上戸であるらしい。
大音量のドリカムの”決戦は金曜日”と大号泣に、お風呂からカイが飛び出してきた。
慌てたので下半身のバスタオルが落ちそうである。上半身は水が滴るイイ男だ。
「どうしたの、なに、なに?」
「うわーーーん、カイどこに行ってた、早くそこに座れ」
「さっき、風呂入るって言ったでしょ。取りあえずボリューム絞ろう」
カイはプレイヤーの音量を低くした。
「オチた時は、この曲に決まってるの!」
「わかった、わかった。いま着替え持ってくるから、さみぃーし」
ユニ○ロでお揃いで買ったスミ黒のスウェットの上下セットアップを着てきた。
「で、なに」
「あのね、トラウマ・・・」
「あっ、待って長くなりそうなので、水取ってくる」
髪を乾かすようにタオルで拭きながら、プリンとエビアンを手に戻ってきた。
「大学の時に友達とディズニー行った時の話なんだけど。20周年のアニバーサリーなんかで、すんごい混んで入場制限がかかったんだ。だから当日券は販売中止になっちゃちゃって。
私たちはコンビニでチケット買ってあったから良かったんだけど、ゲートのとこで女の子が泣いてるの。たぶん慰めてるおばあちゃんと二人で来てたんだと思う。もうシンデレラの衣装着てて、おばあちゃんがシーに行こうと言っても泣きじゃくるだけ。当たり前だよ、あの子はアリエルに会いに来たんじゃない、シンデレラに会いに来たんだから。私、次の日のチケット持ってた。ホテルでチケット買えるのも知ってた。なのにチケットを譲ることが出来なかった。なぜだと思う、割引で買ったチケットだからって躊躇したんだ。貧しいんだよ、貧しいのは心なんだよ、うえーーーん、謝りたい、今からでもごめんねって言いたいよーーー」
「なんだよ、それって泣くところなの」
「泣くに決まってんだろ。夢の国を前にして、あの子の夢ズタズタにしたんだから、うあーーーん、ごめーーーん」
「ゆりっちが悪いんじゃないだろ。もう20年も昔のことだし笑い話になってるさ、え!あっ、ゆりっち、こんなに飲んじゃったの。どうもおかしいと思った。もうお終いだからね」
そう言って、ほとんどカラになりかけたワインの瓶を片していた。
ベットに寝かされて、隣りに添い寝したカイの顔がおぼろげに見える。
カイの声が遠くに聞こえるようになってきた。
声が小さすぎて解読不能。
「俺もゆりっちに謝ることがある。今回の引っ越しの件、俺が仕掛けた。あまりにも上手くいったので、謝るタイミングがなかった、ごめん・・・今度ちゃんと謝るから」
しばらく耳元で何か言ってた気がするけど、よく覚えていない。
騙されたいのか、騙されたふりをしたいのか。
今はわからないけど、きっと、それも幸せの一部。
カイの仕掛けた罠なら、私は何度でも嵌まって見せるよ。
ちゃんと聞こえてたんだね<レベル55>
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