58 / 64
第58話
しおりを挟む
ゴードンと婚約破棄してから、私の生活は一変した。
まず彼の家から出て行って、小さなワンルームを借りて住まいを移した。商会へは仕事の引継ぎと言うよりも、学校帰りのカガリを教育するためだけに通っているようなものだ。
心の中ではどうだか知らないけれど、表面上カガリは好意的だった。とにかく勉強熱心で、教えたことをスポンジが水を吸うように吸収する。
噂のせいか、どうしても職員の目と当たりが厳しく、何かと顔を合わせる機会の多い実母もアレだったけれど――まあ、全て予想の範囲内なので気にならない。母が流した噂は真っ赤な嘘ばかりで、いちいち腹を立てていても仕方がないのだ。
しかし、母が荒唐無稽なことを言っていても周囲の者が庇ってくれない辺り、どうも私は元々同僚や上司から好かれていないらしかった。それは己の不徳の致すところでもあるし、甘んじて受けるしかないだろう。
ちなみにゴードンとは、仲の良い幼馴染に――戻れるはずもなく。つかず離れず、ずっと微妙な関係性が続いている。
冷たく突き放すべきだと分かっていても、不安げな瞳を見る度に心が折れた。だからと言って手放しに受け入れられる訳でもないし、嫌な言い方をすればお互い都合の良い関係に落ち着いた。
どちらかが寂しさに耐えきれなくなったら体を重ねて、翌日には何事もなかったかのように離れて。心の寂しさが埋められないなら、せめて体だけでも――なんて。
ただ子宮がなくなっただけで、そういった行為までできなくなった訳ではないのだ。
お陰で異性の職員から頻繁にセクハラされるようになってしまったが、絶対に間違いが起きない体だからこその安心感。隠れてコソコソ逢瀬を重ねていたとしても、何も起きないのだから大目に見て欲しい。
それが虚しくもあり、この上ない安らぎでもあり……なんとも複雑な気分である。
――ということを魔女に言う度、これでもかと渋い顔をされるのが分かっていても辞められなかった。本当に心が弱くて嫌になるけれど、私もゴードンもとっくの昔から共依存状態だったのだ。
魔女と出会ったのが23歳の時。そこから半年経った頃、ついに彼女の名前がレンファということを知った。友人らしく『レン』と愛称で呼べば、彼女はほんの少し唇を尖らせて「男性の名前みたい」と呟いた。その後はにかむように「まあ良いですけど」と言っていたから、不快な訳ではないと思う。
そこから更に数年経つと、レンは少しずつ私に心を開いて色んな話をしてくれた。
まず『不老不死の魔女』について。詳しいところはよく分からないけれど、どうも彼女は何百年も昔から生きている状態らしい。ただし不滅なのは、精神だけだ。
正しくは『不死の魔女』であって、体は普通の人間と同じように老い滅びる。けれど生を終えたかと思えば、記憶を有したまま何度でもこの世界に生まれ直してしまう。
変わるのは髪色や肌色、目の色ぐらいで、基本的な顔立ちと性別は変わらない。赤ん坊からやり直すたびに新しい名付けをされるけれど、いちいち覚え直すのが面倒になって最初の「レンファ」を名乗るようになったらしい。
なぜそんなことが起きるのかと言えば、それは彼女が魔女だから――ではなく、遥か昔に受けた呪術が原因なのだそうだ。
今は失われた術らしいけれど、最初の人生で、とある男に呪われてしまったらしい。その呪いこそが精神の不滅、繰り返す転生だ。
彼女が『ゴミクズ』を求めるのは、呪いを受けた際に解き方として「ゴミクズを愛せ」と告げられたから。彼女の家の地下には呪いを解くための陣があって、そこに物を入れると跡形もなく消失するのだと言う。
正解を引き当てれば呪いは解けるが、何百年も転生しているのを見るにハズレしか引いたことがないのだろう。
ゴミクズが何かの暗喩なのか、ゴミそのものなのか。正解が分からぬまま永遠に世界に取り残されている。やがて自分1人の価値観では正解を探せないと諦めて、魔女を名乗りながら薬の対価にゴミクズを集めているらしい。
内容に驚きすぎたせいか――その話を聞いた時、私は馬鹿正直に「世界一可哀相だわ、レンの傍ってなんて居心地が良いのかしら……」と呟いてしまった。
本当に申し訳ないけれど、彼女と比べたら私の悩みなんて酷くちっぽけで、一度でも死を望んだことさえ馬鹿馬鹿しくなったからだ。
――だって、レンは死にたくても死ねない。その苦しみたるや、想像がつかなかった。以前、彼女の目が冷たくなった理由はそこに帰結するのだろう。
レンはポカンと呆けた顔をした後に吹き出して、私の前で初めて声を上げて笑った。
ひとしきり笑った後、浮いた涙を指先で拭いながら「心の中ではどう思おうと自由ですけれど、普通、本人の目の前でそんな酷いことを言いますか? ある意味真摯で、おかしい人」と言われて、平身低頭して謝った。
結局、何度も転生を繰り返したレンの懐が深すぎるせいか、私はいとも簡単に許された。それどころか「裏表がなさすぎて、かえって安心できます」と、数年越しにやっと正式な友人として認められたのだ。
ただ、レンは嫌と言うほど人生を積み重ねているので、そもそも生きる意志が希薄だった。今回の人生で与えられた体は、生まれつき喘息もちだが――死にたいという願いに反する延命治療が、何よりも嫌いらしい。
だから症状を和らげる薬を所持していない。治すつもりもない。どうせ死んでも、また蘇るのだから。
次に与えられるのが健康体であることを期待する方が、よっぽど有意義だと言った。
ちなみに、解呪の陣が敷かれた彼女の家そのものにも『永遠』の呪いがかけられているようだ。だからこの家は季節関係なく、例え冬に森が枯れても年中真緑のツタに覆われている。
レンは生まれ直すたびこの森に――陣があるこの家へ還ってくるのだと言う。そうしてゴミクズを集めて、陣に入れて、正解を探して――死んで、生まれ直して、また森へ還ってくる。
何百年も探し続けているのに正解が分からないのだから、私が手伝ったところで結果は変わらないだろう。ただ、少しでも彼女の手助けがしたいと思った。
レンが不幸すぎて、彼女の傍は居心地が良いと言うだけでない。生き方を示してくれた友人に、ほんの少しで良いから恩返しがしたかったのだ。
だから私は自然と、カガリの勉強が終わったら町を出てこの森に住もうと決めた。『魔女の家』まで続く轍のスタート地点、森の入口辺りに居を構えて、森の番人を名乗るのはどうだろうか――。
虚弱な今のレンが、あとどれくらい生きられるのか分からない。そして次のレンが何歳で森までやって来るのかも分からない。けれど、きっと幼い姿では魔女として信憑性がなく、危険も多いだろう。
少しでも彼女が健やかに生きられるように、保護者のような真似ができれば良い。
それから私は、素人ながら小さな家を設計した。長い月日をかけて基礎から造って、完成すればそこを終の棲家にしようと思ったのだ。
完成するまではレンの家を間借りして――もちろん「狭いのに」と迷惑そうな顔をされたけれど――月に何度か町へ出かけて、必要なものを買い集める生活を続けた。町の中傷から離れられるし、ゴードンからも物理的に離れられるし、病弱ながら細々と生きる友人と話すのも楽しかった。
しかしある日、これまでの人生で最大と言っても過言ではない事件が起こってしまったのだ。
まず彼の家から出て行って、小さなワンルームを借りて住まいを移した。商会へは仕事の引継ぎと言うよりも、学校帰りのカガリを教育するためだけに通っているようなものだ。
心の中ではどうだか知らないけれど、表面上カガリは好意的だった。とにかく勉強熱心で、教えたことをスポンジが水を吸うように吸収する。
噂のせいか、どうしても職員の目と当たりが厳しく、何かと顔を合わせる機会の多い実母もアレだったけれど――まあ、全て予想の範囲内なので気にならない。母が流した噂は真っ赤な嘘ばかりで、いちいち腹を立てていても仕方がないのだ。
しかし、母が荒唐無稽なことを言っていても周囲の者が庇ってくれない辺り、どうも私は元々同僚や上司から好かれていないらしかった。それは己の不徳の致すところでもあるし、甘んじて受けるしかないだろう。
ちなみにゴードンとは、仲の良い幼馴染に――戻れるはずもなく。つかず離れず、ずっと微妙な関係性が続いている。
冷たく突き放すべきだと分かっていても、不安げな瞳を見る度に心が折れた。だからと言って手放しに受け入れられる訳でもないし、嫌な言い方をすればお互い都合の良い関係に落ち着いた。
どちらかが寂しさに耐えきれなくなったら体を重ねて、翌日には何事もなかったかのように離れて。心の寂しさが埋められないなら、せめて体だけでも――なんて。
ただ子宮がなくなっただけで、そういった行為までできなくなった訳ではないのだ。
お陰で異性の職員から頻繁にセクハラされるようになってしまったが、絶対に間違いが起きない体だからこその安心感。隠れてコソコソ逢瀬を重ねていたとしても、何も起きないのだから大目に見て欲しい。
それが虚しくもあり、この上ない安らぎでもあり……なんとも複雑な気分である。
――ということを魔女に言う度、これでもかと渋い顔をされるのが分かっていても辞められなかった。本当に心が弱くて嫌になるけれど、私もゴードンもとっくの昔から共依存状態だったのだ。
魔女と出会ったのが23歳の時。そこから半年経った頃、ついに彼女の名前がレンファということを知った。友人らしく『レン』と愛称で呼べば、彼女はほんの少し唇を尖らせて「男性の名前みたい」と呟いた。その後はにかむように「まあ良いですけど」と言っていたから、不快な訳ではないと思う。
そこから更に数年経つと、レンは少しずつ私に心を開いて色んな話をしてくれた。
まず『不老不死の魔女』について。詳しいところはよく分からないけれど、どうも彼女は何百年も昔から生きている状態らしい。ただし不滅なのは、精神だけだ。
正しくは『不死の魔女』であって、体は普通の人間と同じように老い滅びる。けれど生を終えたかと思えば、記憶を有したまま何度でもこの世界に生まれ直してしまう。
変わるのは髪色や肌色、目の色ぐらいで、基本的な顔立ちと性別は変わらない。赤ん坊からやり直すたびに新しい名付けをされるけれど、いちいち覚え直すのが面倒になって最初の「レンファ」を名乗るようになったらしい。
なぜそんなことが起きるのかと言えば、それは彼女が魔女だから――ではなく、遥か昔に受けた呪術が原因なのだそうだ。
今は失われた術らしいけれど、最初の人生で、とある男に呪われてしまったらしい。その呪いこそが精神の不滅、繰り返す転生だ。
彼女が『ゴミクズ』を求めるのは、呪いを受けた際に解き方として「ゴミクズを愛せ」と告げられたから。彼女の家の地下には呪いを解くための陣があって、そこに物を入れると跡形もなく消失するのだと言う。
正解を引き当てれば呪いは解けるが、何百年も転生しているのを見るにハズレしか引いたことがないのだろう。
ゴミクズが何かの暗喩なのか、ゴミそのものなのか。正解が分からぬまま永遠に世界に取り残されている。やがて自分1人の価値観では正解を探せないと諦めて、魔女を名乗りながら薬の対価にゴミクズを集めているらしい。
内容に驚きすぎたせいか――その話を聞いた時、私は馬鹿正直に「世界一可哀相だわ、レンの傍ってなんて居心地が良いのかしら……」と呟いてしまった。
本当に申し訳ないけれど、彼女と比べたら私の悩みなんて酷くちっぽけで、一度でも死を望んだことさえ馬鹿馬鹿しくなったからだ。
――だって、レンは死にたくても死ねない。その苦しみたるや、想像がつかなかった。以前、彼女の目が冷たくなった理由はそこに帰結するのだろう。
レンはポカンと呆けた顔をした後に吹き出して、私の前で初めて声を上げて笑った。
ひとしきり笑った後、浮いた涙を指先で拭いながら「心の中ではどう思おうと自由ですけれど、普通、本人の目の前でそんな酷いことを言いますか? ある意味真摯で、おかしい人」と言われて、平身低頭して謝った。
結局、何度も転生を繰り返したレンの懐が深すぎるせいか、私はいとも簡単に許された。それどころか「裏表がなさすぎて、かえって安心できます」と、数年越しにやっと正式な友人として認められたのだ。
ただ、レンは嫌と言うほど人生を積み重ねているので、そもそも生きる意志が希薄だった。今回の人生で与えられた体は、生まれつき喘息もちだが――死にたいという願いに反する延命治療が、何よりも嫌いらしい。
だから症状を和らげる薬を所持していない。治すつもりもない。どうせ死んでも、また蘇るのだから。
次に与えられるのが健康体であることを期待する方が、よっぽど有意義だと言った。
ちなみに、解呪の陣が敷かれた彼女の家そのものにも『永遠』の呪いがかけられているようだ。だからこの家は季節関係なく、例え冬に森が枯れても年中真緑のツタに覆われている。
レンは生まれ直すたびこの森に――陣があるこの家へ還ってくるのだと言う。そうしてゴミクズを集めて、陣に入れて、正解を探して――死んで、生まれ直して、また森へ還ってくる。
何百年も探し続けているのに正解が分からないのだから、私が手伝ったところで結果は変わらないだろう。ただ、少しでも彼女の手助けがしたいと思った。
レンが不幸すぎて、彼女の傍は居心地が良いと言うだけでない。生き方を示してくれた友人に、ほんの少しで良いから恩返しがしたかったのだ。
だから私は自然と、カガリの勉強が終わったら町を出てこの森に住もうと決めた。『魔女の家』まで続く轍のスタート地点、森の入口辺りに居を構えて、森の番人を名乗るのはどうだろうか――。
虚弱な今のレンが、あとどれくらい生きられるのか分からない。そして次のレンが何歳で森までやって来るのかも分からない。けれど、きっと幼い姿では魔女として信憑性がなく、危険も多いだろう。
少しでも彼女が健やかに生きられるように、保護者のような真似ができれば良い。
それから私は、素人ながら小さな家を設計した。長い月日をかけて基礎から造って、完成すればそこを終の棲家にしようと思ったのだ。
完成するまではレンの家を間借りして――もちろん「狭いのに」と迷惑そうな顔をされたけれど――月に何度か町へ出かけて、必要なものを買い集める生活を続けた。町の中傷から離れられるし、ゴードンからも物理的に離れられるし、病弱ながら細々と生きる友人と話すのも楽しかった。
しかしある日、これまでの人生で最大と言っても過言ではない事件が起こってしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる