62 / 70
番外編②
4 エヴァンシュカとアデルート4
しおりを挟む
「――騎士と結婚したいから男の護衛騎士を雇って欲しい!? ……いくら可愛いルディの頼みでも こればかりは聞けんな、男なんて近付けてルディに手を出されたらどうする? 打ち首一択じゃぞ!!」
「お父さま……」
わたくしはアデルお姉さまと一緒にお父さまのところまで行って、早速 騎士と結婚したいとお願いいたしましたわ。
この世界のどこかに居るはずの「絵本の騎士」を探して、わたくしの専属騎士にして欲しいと。
けれどもお父さまは首を縦に振ってくださいません。
困りましたわ……いくらわたくしが可愛がられているとは言っても、最高権力者であるお父さまが頷かない限りは何もできませんの。
わたくしが何かしらの功績を立てて、特別な権限でも持っていれば話は違いましたのに――赤ちゃんの無力を嘆くばかりですわ……!
わたくしがメソメソしていると、付き添いのアデルお姉さまが味方してくださいました。
「……陛下、ルディはまだ3つですよ。手を出すだなんてそんな事……そもそもそんな問題のある男は「絵本の騎士」ではありません。初めの選別で弾かれるでしょう」
「歳なんて関係あるもんか! ルディは可愛すぎるんじゃて! 男は皆ケダモノぞ!!」
「落ち着いてくださいよ、ケダモノ陛下」
「ケダモノ陛下とは何じゃ!! 相変わらずお前は可愛げのない娘よのう、アデル!」
「男は皆ケダモノと仰ったじゃありませんか。父親もケダモノなら、他にどんなケダモノが護衛騎士についたって構わないのではありませんか、どれもこれも一緒ですよ」
「父親の揚げ足をとるでないわ! ……ええい違わい、話をすり替えようとするな!」
お父さまはぷりぷりと憤慨されていて、このままではわたくしのお願いごとは叶いそうにありませんわ。
でもつい先ほどアデルお姉さまと無茶なワガママを言わない、駄々をこねない、「絵本の騎士」に相応しい淑女になると約束したばかりですもの。
ここは一旦諦めて、まずはわたくしが何かしらの権限を得られるように動いた方がいいのかしら……そうしてわたくし自身の力で騎士を探して、護衛に任命してしまえば――いいえ、でもそんな事ができるようになるまで一体どれだけの時間がかかるかしら。
絵本のお姫様より大人になってしまうのでは……あまり大人になってしまったら、絵本の騎士もわたくしの事なんか好きになってくださらないのではないかしら。
わたくしよく、アデルお姉さまがリサお姉さまから叱咤激励を受けていらっしゃるのを目にするのよ。
「10代の今は「月の女神」なんて持て囃されていても、お前が30代にもなれば誰も見向きもしなくなるわよ! 悔しかったら早く結婚して宮から出て行きなさい! 一体いつまでエヴァンシュカのお守りをする気なの、わたくし達の邪魔になっているのが分からないのかしら!?」と。
きっとリサお姉さまは、アデルお姉さまが嫁き遅れる事を心配して、あえて厳しい言葉をお掛けになられるのだわ。
わたくしも20代、30代と歳を重ねるごとに魅力が半減していくのかしら……騎士を捕まえるならば期限はいつまで?
貴族は10代のうちに結婚する事が多いし、やはり20歳になるまでよね。
わたくしがうーんと悩んでいる間にも、アデルお姉さまとお父さまの話し合いは進められています。
「何がそんなにお嫌なのですか、ルディにも分かりやすく簡潔に話してください」
「うぐっ……そ、そんなもん、ルディがお嫁に行くなんて許せるはずなかろうが! ルディは一生ワシと一緒にお城で暮らすんだもん!」
「だもん、ではありませんよ」
「王族の護衛を任せられる騎士なんか、そもそも家柄の良い者しかおらぬわ。そんな男と結婚するなど……家を盛り立てるために嫁いで来いと言うに決まっとる! 婿養子以外 断固拒否じゃ!」
「――わ、わたくしが結婚したいのは家柄の良い騎士ではなくて「絵本の騎士」ですわ……」
わたくしが意見すれば、お父さまは「そもそも絵本の騎士って何なんじゃ」と首を傾げられましたわ。説明しようとすると、アデルお姉さまが横から「とりあえずこれに目を通してみてください」と仰って絵本を渡しました。
お父さまが絵本を眺めていらっしゃる間に、お姉さまはわたくしと目線を合わせるようにして片膝をつきましたわ。
そうしてわたくしにだけ聞こえるようなお声で囁きます。
「……ルディ、契約書を作ると言っていましたよね、今の内に作成してしまいなさい」
「え? ですが……」
「わたくしに考えがありますから、ルディが思う契約を書面に記すのです。許可をするかどうかは陛下次第ですが、やってみる価値はあるでしょう」
まだお父さまの許しを得ていないのに、先んじて契約書を作成する事に意味があるのかしら?
でも他でもないアデルお姉さまが仰る事だものね……?
わたくしは首を傾げながらも、お姉さまに渡された紙と万年筆で必死に契約書を作成する事にいたしました。
「お父さま……」
わたくしはアデルお姉さまと一緒にお父さまのところまで行って、早速 騎士と結婚したいとお願いいたしましたわ。
この世界のどこかに居るはずの「絵本の騎士」を探して、わたくしの専属騎士にして欲しいと。
けれどもお父さまは首を縦に振ってくださいません。
困りましたわ……いくらわたくしが可愛がられているとは言っても、最高権力者であるお父さまが頷かない限りは何もできませんの。
わたくしが何かしらの功績を立てて、特別な権限でも持っていれば話は違いましたのに――赤ちゃんの無力を嘆くばかりですわ……!
わたくしがメソメソしていると、付き添いのアデルお姉さまが味方してくださいました。
「……陛下、ルディはまだ3つですよ。手を出すだなんてそんな事……そもそもそんな問題のある男は「絵本の騎士」ではありません。初めの選別で弾かれるでしょう」
「歳なんて関係あるもんか! ルディは可愛すぎるんじゃて! 男は皆ケダモノぞ!!」
「落ち着いてくださいよ、ケダモノ陛下」
「ケダモノ陛下とは何じゃ!! 相変わらずお前は可愛げのない娘よのう、アデル!」
「男は皆ケダモノと仰ったじゃありませんか。父親もケダモノなら、他にどんなケダモノが護衛騎士についたって構わないのではありませんか、どれもこれも一緒ですよ」
「父親の揚げ足をとるでないわ! ……ええい違わい、話をすり替えようとするな!」
お父さまはぷりぷりと憤慨されていて、このままではわたくしのお願いごとは叶いそうにありませんわ。
でもつい先ほどアデルお姉さまと無茶なワガママを言わない、駄々をこねない、「絵本の騎士」に相応しい淑女になると約束したばかりですもの。
ここは一旦諦めて、まずはわたくしが何かしらの権限を得られるように動いた方がいいのかしら……そうしてわたくし自身の力で騎士を探して、護衛に任命してしまえば――いいえ、でもそんな事ができるようになるまで一体どれだけの時間がかかるかしら。
絵本のお姫様より大人になってしまうのでは……あまり大人になってしまったら、絵本の騎士もわたくしの事なんか好きになってくださらないのではないかしら。
わたくしよく、アデルお姉さまがリサお姉さまから叱咤激励を受けていらっしゃるのを目にするのよ。
「10代の今は「月の女神」なんて持て囃されていても、お前が30代にもなれば誰も見向きもしなくなるわよ! 悔しかったら早く結婚して宮から出て行きなさい! 一体いつまでエヴァンシュカのお守りをする気なの、わたくし達の邪魔になっているのが分からないのかしら!?」と。
きっとリサお姉さまは、アデルお姉さまが嫁き遅れる事を心配して、あえて厳しい言葉をお掛けになられるのだわ。
わたくしも20代、30代と歳を重ねるごとに魅力が半減していくのかしら……騎士を捕まえるならば期限はいつまで?
貴族は10代のうちに結婚する事が多いし、やはり20歳になるまでよね。
わたくしがうーんと悩んでいる間にも、アデルお姉さまとお父さまの話し合いは進められています。
「何がそんなにお嫌なのですか、ルディにも分かりやすく簡潔に話してください」
「うぐっ……そ、そんなもん、ルディがお嫁に行くなんて許せるはずなかろうが! ルディは一生ワシと一緒にお城で暮らすんだもん!」
「だもん、ではありませんよ」
「王族の護衛を任せられる騎士なんか、そもそも家柄の良い者しかおらぬわ。そんな男と結婚するなど……家を盛り立てるために嫁いで来いと言うに決まっとる! 婿養子以外 断固拒否じゃ!」
「――わ、わたくしが結婚したいのは家柄の良い騎士ではなくて「絵本の騎士」ですわ……」
わたくしが意見すれば、お父さまは「そもそも絵本の騎士って何なんじゃ」と首を傾げられましたわ。説明しようとすると、アデルお姉さまが横から「とりあえずこれに目を通してみてください」と仰って絵本を渡しました。
お父さまが絵本を眺めていらっしゃる間に、お姉さまはわたくしと目線を合わせるようにして片膝をつきましたわ。
そうしてわたくしにだけ聞こえるようなお声で囁きます。
「……ルディ、契約書を作ると言っていましたよね、今の内に作成してしまいなさい」
「え? ですが……」
「わたくしに考えがありますから、ルディが思う契約を書面に記すのです。許可をするかどうかは陛下次第ですが、やってみる価値はあるでしょう」
まだお父さまの許しを得ていないのに、先んじて契約書を作成する事に意味があるのかしら?
でも他でもないアデルお姉さまが仰る事だものね……?
わたくしは首を傾げながらも、お姉さまに渡された紙と万年筆で必死に契約書を作成する事にいたしました。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる