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番外編②
6 エヴァンシュカとハイド
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「……ルディ、万年筆を肌に刺すのは よくありません。インクが皮膚の下に染みこんで取れなくなるんですよ、今後は禁止です」
「まあ! ごめんなさいアデルお姉さま……わたくしもっと思慮深い淑女になりますわ。「絵本の騎士」に相応しいように」
「あと一応、陛下にも謝ってくださいね。アレたぶん寿命7年ぐらい縮まってますから」
お父さまが呼びつけたお医者は、わたくしの親指を消毒して包帯で固定したあと、何故か倒れてしまわれたお父さまの処置にかかりきりになってしまいましたの。
お姉さま曰く「絶叫して血圧が上がったのでしょう」とのことですが……「血圧」とは何なのかしら? とっても気になるわ。
――いけない、まずはお父さまに謝らなければ。
せっかく「絵本の騎士」を認められたんだもの、あとは騎士を探しながらわたくし自身が最高の淑女になるだけですわ。
わたくしは横になっているお父さまの元まで駆け寄って、青い顔を覗き込みました。
「お父さま、驚かせてしまってごめんなさい……そして騎士と自由恋愛を認めて下さったこと、心から感謝いたしますわ」
「ルディ……もう自分の身体を傷付けるようなマネはせんでくれ……ワシ死ぬ……」
「はい、二度といたしません。それでお父さま、早速護衛騎士を探したいのですが――」
胸を躍らせながらお父さまに進言すれば、何故か首を傾げられてしまいましたの。
「……はて、護衛騎士? なんのことかの」
「えっ?」
「ワシが許可したのは、ルディが己の力で結婚相手を探す事と自由恋愛だけじゃ。護衛騎士をつけることについて許可した覚えはないのう」
「ええ! ……で、でも、「絵本の騎士」を見つけ出しても護衛にできないのでは、わたくしと恋に落ちないのではありませんか……!? 護衛以外で騎士と王女に接点はありますの? 一体どうすれば……」
わたくしがオロオロ狼狽えていると、あとからやって来たアデルお姉さまが呆れたご様子で「陛下……」とため息交じりに呟かれましたわ。
でも確かに言われてみれば、わたくしったら契約書に護衛騎士の文言をひとつも入れておりませんわね……ああ、もっと時間があれば気付けたでしょうに。
限られた時間で作成したものですから、あの契約書は穴だらけですの。
「自由恋愛を許可しているのですから護衛をつけるくらい良いではありませんか、一体何が気に入らないのです」
「ならん! だってこの契約書 護衛騎士について書いておるか? 「男を傍に侍らせます」と書いておるか? ん? 探すのは自由じゃが雇うかどうか決めるのはワシじゃあ! あー、女の騎士であればいくらでも付けてよいぞ、ガハハ!」
「大人げない……」
「何とでも言えい! ――そうじゃ、そんなに「絵本の騎士」を傍に置きたいならアデルがなれば良いではないか」
「……はい?」
「アデルお姉さまが騎士に……? でもお父さま、お姉さまはお姉さまで、騎士ではありませんわ」
突然なされた提案に、わたくしとアデルお姉さまは顔を見合わせましたわ。
お父さまったらおかしなことを仰るのね、お姉さまはわたくしと同じ女性だから、騎士になったところで結婚できませんのに……いえ、それはまあ結婚できるものならばしたいですわよ? だってこんなに好きなんですもの。
「アデルは独り芝居が得意じゃろう。お前の考えた物語のせいでルディが毒されたんじゃ、お前が責任取って「絵本の騎士」になれ」
「……陛下、まさかわたくしに騎士を「演じろ」と仰るのですか」
「うむ。……そうしてとりあえずルディの欲を満たせば、適当なところで飽きるじゃろうて……」
「なるほど、「本物」が現れるまでの繋ぎ――――噛ませ犬という訳ですね……面白い、わたくし主役級よりも脇役の方が俄然燃えるのですよ」
「……何を燃えておるのか知らんが、任せたぞ。ルディもよいな? とりあえず「絵本の騎士」とやらが見つかるまでアデルの騎士で我慢せい。……騎士で「アデル」はおかしいか、デル……いや、ハイディマリー……「ハイド」、騎士を演じる時はハイドじゃ」
「ハイド……何だかとっても格好いいお名前ですわ、男の人みたいで素敵ですお姉さま」
アデルという愛称も綺麗な響きで大好きでしたけれど、いつも凛としていらっしゃるお姉さまにはハイドという愛称もお似合いね。
でもお姉さまが騎士になるって具体的にどういう事なのかしら。
お姉さまは元々わたくしの教育係をしながら、侍女のアメリと共にわたくしが危ない目に遭わぬよういつも見守ってくださいました。
それって結局は、今まで通りの生活が続くということではなくて……?
お姉さまが騎士になると聞いて知らずの内に舞い上がりましたけれど、早合点してしまったかしら。
お父さまったら、ただわたくしを煙に巻いて丸め込もうとしていらっしゃるだけなのかも知れませんわ。
ここで駄々をこねるのは単なるワガママ? それとも必要最低限のお願いごと?
どうすべきか悩んでいると、いつの間にやらアデルお姉さままで紙を取り出して何かを書き記し始めました。
しばらくしてから紙をお父さまに渡せば、女神のごとく美しい笑顔と美声で内容を読み上げます。
「わたくしの分の契約書です。判はのちほど押しますのでご確認くださいますか」
契約書の内容はこうです。
・ハイディマリー・ラムベア・アデルート・フォン・ハイドランジアは騎士「ハイド」としてエヴァンシュカ・リアイス・トゥルーデル・フォン・ハイドランジア王女に仕える。
・ハイドは一介の騎士であり王女にあらず。騎士として扱うこと。
・絵本の騎士ハイドとしての役作りは当人に一任し、外野は指示をしないこと。
・契約期間はエヴァンシュカ王女が婚姻を結ぶまでとする。
・「アデルート」は契約期間中 一切の公務を行わず、「引きこもりの王女」として表舞台から去る。期間中アデルートに婚姻を強制しないこと。
全て読み上げ終えたアデルお姉さまは、最後にハッキリとした口調で「これらの契約が履行されなければ騎士を演じることはできません」と告げましたわ。
お父様はまた難しい顔をして契約書を見つめながら、大きなため息を吐き出しました。
「アデル……ここまで周到にする必要があるか? 演じるとは言っても、ルディが飽きるまでのお遊び程度で良いんじゃて……いつも一人芝居であやしておるじゃろう、あれぐらいで――――」
「いいえ、「演じろ」と命じられた以上お遊びではいけません。わたくしにも矜持がございますので」
「うぐぐぐ……ああもう分かった分かった、好きにせい!」
「はい、好きにさせていただきます」
お姉さまはニッコリ笑って、「さあルディ、お部屋に帰って絵本の続きを読みましょうね」と優しく囁いてくださいました。
お姉さまのお陰でわたくしのお願いごとが全て叶ったわ!
本物の騎士ではなくてアデルお姉さまのお芝居だけれど、でも平気。だってわたくしアデルお姉さまが大好きなんだもの。
◆
――――その翌日。
長く美しかった灰銀色の髪を短く切って、真っ黒い騎士服に身を包んだアデルお姉さま……ことハイドが朝食会場に現れると、お父さまは「未婚の王女が髪切るとか聞いてないワシーーーー!」と絶叫したのち泡を噴いて失神なさいました。
他に数名いらっしゃったお兄さまやお姉さま方も仰天して、口々に何かを仰っておられましたわ。……けれどもう、わたくしの耳には何も入っておりませんでした。
だってアデルお姉さまの男装が――いいえ、騎士のハイドがあまりにも素敵だったんですもの!!
やっぱりわたくしアデルお姉さまが誰よりも大好きよ。ああ、お姉さまが本当に「ハイド」だったら良かったのに。そうであれば迷わずに結婚したのに、神様はなんて残酷なのかしら。
お姉さまはそれ以来わたくしのことを「ルディ」とは呼ばなくなってしまったけれど……でも全く寂しくないわ。
朝から晩までわたくしの傍に居て下さるから。
「――ハイドと結婚するにはどうすれば良いのかしら……」
「いけませんよエヴァ王女、わたくしはどうあっても貴女を愛することができないのですから」
「どうしていつもハッキリ断言なさるのよ!」
「もう19歳なんですよ、いい加減 現実を見ましょうね王女様。そんなに夢見がちでは「絵本の騎士」が現れた時に笑われてしまいますよ」
「……その「絵本の騎士」を作り出した張本人の癖に……」
――数日後に19歳の誕生日を迎えるわたくしの「本物の騎士」が現れるのは、もう少しあとのお話。
「まあ! ごめんなさいアデルお姉さま……わたくしもっと思慮深い淑女になりますわ。「絵本の騎士」に相応しいように」
「あと一応、陛下にも謝ってくださいね。アレたぶん寿命7年ぐらい縮まってますから」
お父さまが呼びつけたお医者は、わたくしの親指を消毒して包帯で固定したあと、何故か倒れてしまわれたお父さまの処置にかかりきりになってしまいましたの。
お姉さま曰く「絶叫して血圧が上がったのでしょう」とのことですが……「血圧」とは何なのかしら? とっても気になるわ。
――いけない、まずはお父さまに謝らなければ。
せっかく「絵本の騎士」を認められたんだもの、あとは騎士を探しながらわたくし自身が最高の淑女になるだけですわ。
わたくしは横になっているお父さまの元まで駆け寄って、青い顔を覗き込みました。
「お父さま、驚かせてしまってごめんなさい……そして騎士と自由恋愛を認めて下さったこと、心から感謝いたしますわ」
「ルディ……もう自分の身体を傷付けるようなマネはせんでくれ……ワシ死ぬ……」
「はい、二度といたしません。それでお父さま、早速護衛騎士を探したいのですが――」
胸を躍らせながらお父さまに進言すれば、何故か首を傾げられてしまいましたの。
「……はて、護衛騎士? なんのことかの」
「えっ?」
「ワシが許可したのは、ルディが己の力で結婚相手を探す事と自由恋愛だけじゃ。護衛騎士をつけることについて許可した覚えはないのう」
「ええ! ……で、でも、「絵本の騎士」を見つけ出しても護衛にできないのでは、わたくしと恋に落ちないのではありませんか……!? 護衛以外で騎士と王女に接点はありますの? 一体どうすれば……」
わたくしがオロオロ狼狽えていると、あとからやって来たアデルお姉さまが呆れたご様子で「陛下……」とため息交じりに呟かれましたわ。
でも確かに言われてみれば、わたくしったら契約書に護衛騎士の文言をひとつも入れておりませんわね……ああ、もっと時間があれば気付けたでしょうに。
限られた時間で作成したものですから、あの契約書は穴だらけですの。
「自由恋愛を許可しているのですから護衛をつけるくらい良いではありませんか、一体何が気に入らないのです」
「ならん! だってこの契約書 護衛騎士について書いておるか? 「男を傍に侍らせます」と書いておるか? ん? 探すのは自由じゃが雇うかどうか決めるのはワシじゃあ! あー、女の騎士であればいくらでも付けてよいぞ、ガハハ!」
「大人げない……」
「何とでも言えい! ――そうじゃ、そんなに「絵本の騎士」を傍に置きたいならアデルがなれば良いではないか」
「……はい?」
「アデルお姉さまが騎士に……? でもお父さま、お姉さまはお姉さまで、騎士ではありませんわ」
突然なされた提案に、わたくしとアデルお姉さまは顔を見合わせましたわ。
お父さまったらおかしなことを仰るのね、お姉さまはわたくしと同じ女性だから、騎士になったところで結婚できませんのに……いえ、それはまあ結婚できるものならばしたいですわよ? だってこんなに好きなんですもの。
「アデルは独り芝居が得意じゃろう。お前の考えた物語のせいでルディが毒されたんじゃ、お前が責任取って「絵本の騎士」になれ」
「……陛下、まさかわたくしに騎士を「演じろ」と仰るのですか」
「うむ。……そうしてとりあえずルディの欲を満たせば、適当なところで飽きるじゃろうて……」
「なるほど、「本物」が現れるまでの繋ぎ――――噛ませ犬という訳ですね……面白い、わたくし主役級よりも脇役の方が俄然燃えるのですよ」
「……何を燃えておるのか知らんが、任せたぞ。ルディもよいな? とりあえず「絵本の騎士」とやらが見つかるまでアデルの騎士で我慢せい。……騎士で「アデル」はおかしいか、デル……いや、ハイディマリー……「ハイド」、騎士を演じる時はハイドじゃ」
「ハイド……何だかとっても格好いいお名前ですわ、男の人みたいで素敵ですお姉さま」
アデルという愛称も綺麗な響きで大好きでしたけれど、いつも凛としていらっしゃるお姉さまにはハイドという愛称もお似合いね。
でもお姉さまが騎士になるって具体的にどういう事なのかしら。
お姉さまは元々わたくしの教育係をしながら、侍女のアメリと共にわたくしが危ない目に遭わぬよういつも見守ってくださいました。
それって結局は、今まで通りの生活が続くということではなくて……?
お姉さまが騎士になると聞いて知らずの内に舞い上がりましたけれど、早合点してしまったかしら。
お父さまったら、ただわたくしを煙に巻いて丸め込もうとしていらっしゃるだけなのかも知れませんわ。
ここで駄々をこねるのは単なるワガママ? それとも必要最低限のお願いごと?
どうすべきか悩んでいると、いつの間にやらアデルお姉さままで紙を取り出して何かを書き記し始めました。
しばらくしてから紙をお父さまに渡せば、女神のごとく美しい笑顔と美声で内容を読み上げます。
「わたくしの分の契約書です。判はのちほど押しますのでご確認くださいますか」
契約書の内容はこうです。
・ハイディマリー・ラムベア・アデルート・フォン・ハイドランジアは騎士「ハイド」としてエヴァンシュカ・リアイス・トゥルーデル・フォン・ハイドランジア王女に仕える。
・ハイドは一介の騎士であり王女にあらず。騎士として扱うこと。
・絵本の騎士ハイドとしての役作りは当人に一任し、外野は指示をしないこと。
・契約期間はエヴァンシュカ王女が婚姻を結ぶまでとする。
・「アデルート」は契約期間中 一切の公務を行わず、「引きこもりの王女」として表舞台から去る。期間中アデルートに婚姻を強制しないこと。
全て読み上げ終えたアデルお姉さまは、最後にハッキリとした口調で「これらの契約が履行されなければ騎士を演じることはできません」と告げましたわ。
お父様はまた難しい顔をして契約書を見つめながら、大きなため息を吐き出しました。
「アデル……ここまで周到にする必要があるか? 演じるとは言っても、ルディが飽きるまでのお遊び程度で良いんじゃて……いつも一人芝居であやしておるじゃろう、あれぐらいで――――」
「いいえ、「演じろ」と命じられた以上お遊びではいけません。わたくしにも矜持がございますので」
「うぐぐぐ……ああもう分かった分かった、好きにせい!」
「はい、好きにさせていただきます」
お姉さまはニッコリ笑って、「さあルディ、お部屋に帰って絵本の続きを読みましょうね」と優しく囁いてくださいました。
お姉さまのお陰でわたくしのお願いごとが全て叶ったわ!
本物の騎士ではなくてアデルお姉さまのお芝居だけれど、でも平気。だってわたくしアデルお姉さまが大好きなんだもの。
◆
――――その翌日。
長く美しかった灰銀色の髪を短く切って、真っ黒い騎士服に身を包んだアデルお姉さま……ことハイドが朝食会場に現れると、お父さまは「未婚の王女が髪切るとか聞いてないワシーーーー!」と絶叫したのち泡を噴いて失神なさいました。
他に数名いらっしゃったお兄さまやお姉さま方も仰天して、口々に何かを仰っておられましたわ。……けれどもう、わたくしの耳には何も入っておりませんでした。
だってアデルお姉さまの男装が――いいえ、騎士のハイドがあまりにも素敵だったんですもの!!
やっぱりわたくしアデルお姉さまが誰よりも大好きよ。ああ、お姉さまが本当に「ハイド」だったら良かったのに。そうであれば迷わずに結婚したのに、神様はなんて残酷なのかしら。
お姉さまはそれ以来わたくしのことを「ルディ」とは呼ばなくなってしまったけれど……でも全く寂しくないわ。
朝から晩までわたくしの傍に居て下さるから。
「――ハイドと結婚するにはどうすれば良いのかしら……」
「いけませんよエヴァ王女、わたくしはどうあっても貴女を愛することができないのですから」
「どうしていつもハッキリ断言なさるのよ!」
「もう19歳なんですよ、いい加減 現実を見ましょうね王女様。そんなに夢見がちでは「絵本の騎士」が現れた時に笑われてしまいますよ」
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