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 また同じ時間に遡ってしまった。
 

 そもそもどういうこと? 【宝剣セーブ・ザ・クイーン】の力って勇者の冒険を記録してるんでしょ?
 何で私まで一緒に遡ってんの!?
 そりゃ確かに勇者が旅に出る直前にこの宝剣の力を使うために儀式みたいなのをやったけど……それがもしかしてダメだったの!?


 あの後勇者にそこと無く聞いてみたら遡っていることをまったく知らなかった。
 私と違い勇者はただ死に戻っているだけなのだ。

「王女様、今日のレッスンは……」

 侍女のソフラに言われ私はげんなりしてしまう。
 何で3回も同じレッスンを受けなきゃいけないのか。

 もう完璧だ。先読みして指導係の上をいってやった。

 さすがにもう遡ることはないはず、死に戻りなんてそう何度も起こるはずがない。

「あのソフラ……ステーキはちょっと」

「申し訳ありません。今日は他の食材が手に入らなかったんです。でも珍しいですね、王女様が大好きな肉を拒否するなんて」

 3日連続サーロインステーキは無理だっつーの。
 こちらはうら若き王国始まって以来の最高の美姫だぞ! 3日連続ニンニクたっぷりのサーロインなんて食べちゃダメでしょ!
 まぁ遡ったら少なくとも満腹は持ち越せないんだけど……。


 そして今日も遡った。


 ※3回目


 これは……呪いだ。
【宝剣セーブ・ザ・クイーン】が発する呪いなのである。



 死に戻り3回目。

 まずは勇者達がなぜ死ぬのかを探ることにした。
 しかし、私は王国始まって以来の最高の美姫、不用意に外へ出られない。
 となると……死に戻った瞬間に勇者にアドバイスをするしかないのだ。

 そしてもう一つ気付いたことがある。

 私は死に戻ることを他の人に伝えられないという枷が存在していた。。
 伝えようとすると声はかき消され、文字は書けない。勘の良い人にまわりくどく伝えるとその矢先その人の記憶は消去されてしまった。

 やっぱ呪いでしょ!?

 というわけで王城の書物庫へ行った私。
 幸いにも特別な血統のため感覚が鋭いこともあり、【猿でも分かる千里眼の習得の仕方】で千里眼を習得しようと思う。
 これがあれば勇者達の様子を千里眼で見ることができる。

 私は最速でレッスンを終わらせて、夜までに千里眼を覚えることができた。

 さっそく目を見開いて千里眼を使用する。こんな姿を誰にも見せられりゃしない。



「……見えてきた」

 千里眼の弱点は声が聞こえないことだ。だけど見さえすれば状況は分かるに違いない。
 ……連戦連勝だった勇者パーティが突如敗北したのだ。
 大きな原因があったのだろう

「追い出しちゃった……」

 千里眼で勇者パーティの様子をじーっと見ていた所、勇者カッシュは同じパーティであるレンジャーの少年を追い出してしまったのだ。
 確か……ユートって名前だったわね。前髪が長くて目が隠れている印象しかなかったけど……。
 随分と怒った様子の勇者の後ろで女3人がバカみたいに笑っている。そして……追い出されたユートは泣きながら立ち去ってしまった。

 私にはいつも笑顔ばっかりなのに勇者にも裏の顔があるのね。

 それから5人パーティが4人となり、北の街を脅かす魔の塔へ入っていく。

 その後はひどいものだった。4人になった勇者パーティは嘘かと思うくらいボロボロにされ……殺されてしまったのだ。

 そして死に戻る。


 ※4回目

 さて傾向が見えてきた。
 うぇ……4日連続で夜にサーロインステーキは正直きつい。
 もうしばらく肉は食いたくないんだけど……。

 千里眼を習得した私はなぜ勇者がユートを追い出したことであそこまで弱体化したか調べる必要があった。
 再び私は書物庫の中に入る。

 幸いにも血統のおかげでの生まれつき魔力が異常に高いこともあり【猿でも分かる観察眼の習得の仕方】で観察眼を習得しようと思う。
 これがあればユートの潜在スキルを見抜くことができる。

 今回も恐らくユートは追い出され、死に戻ってしまうだろう。
 次に死に戻った時が勝負である。習得した観察眼で見抜いてくれるわ!

 さて5日連続のサーロインステーキをどう処理するか。
 それだけが私の心残りである。



 ※5回目


「今までの冒険を記録致しました」

「ありがとうございます、王女」

「……じぃーーーーーーーーー」

「ぴくっ!」

 ユートは勇者カッシュと比べたら背も小さく、細い。
 戦闘向きではない体つきだ。
 私がじっと見つめたら顔を真っ赤にさせててしまった。

「あ、あの王女様。ユートに何かありましたか?」

「いえ……何でもありません」

 何でもないことはない。
 ユートの所持スキルはとんでもなかった。

 ※全てのユニットの成長率アップ大
 ※全てのユニットの全能力を大幅アップ
 ※全てのユニットのレベルを20上げる
 ※全てのユニットのレベルアップボーナスが3倍となる
 ※全てのユニットのクリティカル率を極大

 こりゃすごいバッファー。パーティにいるだけで貢献できるタイプだった。
 恐らく戦闘などではあまり役に立たないのだろう。それで追放されて、勇者パーティは戦闘力が大幅に激減、勝てなくなったということね。

「勇者様……」

「なんでしょう」

 ここで個人的にユートの名を出すのは悪策かもしれない。
 勇者は私の婚約者なのだから。あんま顔の好みじゃないけど。
 私がユートを評価するとますます追放する可能性があるかも。

 私は両手を組んで、上目遣いで勇者を見た。


「わたくしは仲間を大切にするお方が好みです。勇者様にそのようなお方であってほしいです」

 王国始まって以来の最高の美姫の上目遣い。
 これで落ちない男はいないはず。

「俺は……仲間を大切にする男ですよ」

 勇者はゆっくりと微笑んだ。

 これなら大丈夫だろう。

 正直千里眼も疲れるし、王国始まって以来の最高の美姫の私が白目むいて窓をじっと見つめるってのは可能ならやりたくない。
 4回目の時に見られてソフラに泣かれちゃったし。

 私はこれで死に戻りがなくなると信じて6日連続のサーロインステーキを無心で食べることにした。

 さて……これで今日の夜安静に過ごせれば……もう。


 ※6回目


「今までの冒険を記録致しました」

「ありがとうございます、王女」

「何で追い出しちゃったのおおおおお!?」

「お、王女!?」
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