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勇者カッシュの首根っこ捕まえて上下に思いっきり揺さぶってみた。
父親の国王や大臣、近衛兵までざわつくが知ったことか。
私に6日連続でサーロインステーキを食わせやがって、嘗めてると言わんばかりだ。
こうなれば……。
「ごほん、取り乱し失礼しました」
「い、いえ……」
かなり強い力で振ったため勇者にも若干の怯えが見える。
品行方正で美しい私がこんなマネするなんて、自戒しなければ……。
「わたくし……神のお告げを受けたのです」
「か、神ですか? カーラ、そういうことあるのか?」
「ありますよね? 聖女カーラ様」
「ひっ!」
目力強めで脅してみる。
聖女カーラは気弱な性格なのでこれで大丈夫。
「どうやら……勇者様のお仲間のユート様には特別の力があるそうです」
「なっ!」
全員がユートの方に視線を向けたせいで彼はたじろぐがこれもこの死のループを逃れるため。
これで彼が特別な人間であるという認識が出来たでしょう。
「だから決して、決して、決して……追放などしてはいけませんよ」
「は……はぁ」
ここまで言えば……よっぽどのバカでない限り追放はしないはず。
これで追放しようものならもう……本当のバカだ。
私は恐る恐る夜を迎える……。そして……。
※7回目
「今までの冒険を記録致しました」
「ありがとうございます、王女」
「勇者ァァァァァァァ! あなたバカなんですかああ!?」
「ひょえ!?」
「1週間連続でサーロインステーキ食わせてぇ、もう牛肉なんて見たくありません!」
この勇者はもう信用してはいけない。
私は勇者を手招きした。
怒りを沈め、笑顔になれ。私は王国始まって……もうどうでもよくなってきた。
「次に謁見する時も5人で来なさい。5人で出ないと牛に縛り付けて市中引きずり回して処罰致します」
「何でそんな横暴な!?」
いくら怒りを沈めたといっても心の中ではこの男に対する怒りが溢れんばかりだった。
全力で脅したので……これで何とかなるはずだ。
私は今日一日気が気でないままに……過ごすハメになる。
8日連続でサーロインステーキを食し、千里眼を使いながら……勇者一行の姿を眺め続けた。
そして……ようやくユートが追放されることなく魔の塔を攻略した。
翌朝。
「ひっく……ひっく……パン、美味しい」
「王女様、普通のどこにでも売っているパンですよ。あ、昼は昨日残ったステーキでも」
「も、もうステーキはこりごり!! いやあああああ!」
◇◇◇
「今までの冒険を記録致しました」
「あ、ありがとうございます。あの……なぜそんなに不機嫌なのですか」
「ぷいっ!」
7回のループを経て、新しい時を刻むことになる。
魔の塔を無事クリアしたため勇者達はセーブのため玉座の間を訪れた。
「さすが勇者。連戦連勝だな」
「これなら魔王軍も余裕だな」
「この勇者倒せるやついるのかよ」
7回も死んだくせに何を言っているんだ近衛兵達は……。
私はそのせいで牛肉が見れなくなってしまった。
これだったら私も記憶を消して欲しかった。何で私だけ全てを受け継いで遡るの!?
あれから宝剣セーブ・ザ・クイーンの呪いを解こうと調べたが、調べれば調べるほどその呪いが強固であることに気付く。
今は勇者を気持ち良く旅へ行かせるしかない。
「ごほん、では勇者様。5人……仲良く旅を続け下さい。決して追い出したりせぬよう……! ねっ!」
「は、はぁ」
それからも勇者の同行を千里眼で確認しつつ、私は気が気でない生活を過ごすことになる。
いつまたは……ループをするか。不安でいっぱいだったのだ。
勇者達が死なないように旅立つ支援金を募ったりとまわりから見れば婚約者を甲斐甲斐しく想う良き姫で褒められまくった。
おそらく魔王が死ねばループの呪いが解けるはず。絶対に勇者を死なせない。
※8回目
「今までの冒険を記録致しました」
「ありがとうございます、王女」
「ああああああ、戻ったぁぁぁぁぁ。戻っちゃったよおおおお!」
「王女様!?」
父親の国王や大臣、近衛兵までざわつくが知ったことか。
私に6日連続でサーロインステーキを食わせやがって、嘗めてると言わんばかりだ。
こうなれば……。
「ごほん、取り乱し失礼しました」
「い、いえ……」
かなり強い力で振ったため勇者にも若干の怯えが見える。
品行方正で美しい私がこんなマネするなんて、自戒しなければ……。
「わたくし……神のお告げを受けたのです」
「か、神ですか? カーラ、そういうことあるのか?」
「ありますよね? 聖女カーラ様」
「ひっ!」
目力強めで脅してみる。
聖女カーラは気弱な性格なのでこれで大丈夫。
「どうやら……勇者様のお仲間のユート様には特別の力があるそうです」
「なっ!」
全員がユートの方に視線を向けたせいで彼はたじろぐがこれもこの死のループを逃れるため。
これで彼が特別な人間であるという認識が出来たでしょう。
「だから決して、決して、決して……追放などしてはいけませんよ」
「は……はぁ」
ここまで言えば……よっぽどのバカでない限り追放はしないはず。
これで追放しようものならもう……本当のバカだ。
私は恐る恐る夜を迎える……。そして……。
※7回目
「今までの冒険を記録致しました」
「ありがとうございます、王女」
「勇者ァァァァァァァ! あなたバカなんですかああ!?」
「ひょえ!?」
「1週間連続でサーロインステーキ食わせてぇ、もう牛肉なんて見たくありません!」
この勇者はもう信用してはいけない。
私は勇者を手招きした。
怒りを沈め、笑顔になれ。私は王国始まって……もうどうでもよくなってきた。
「次に謁見する時も5人で来なさい。5人で出ないと牛に縛り付けて市中引きずり回して処罰致します」
「何でそんな横暴な!?」
いくら怒りを沈めたといっても心の中ではこの男に対する怒りが溢れんばかりだった。
全力で脅したので……これで何とかなるはずだ。
私は今日一日気が気でないままに……過ごすハメになる。
8日連続でサーロインステーキを食し、千里眼を使いながら……勇者一行の姿を眺め続けた。
そして……ようやくユートが追放されることなく魔の塔を攻略した。
翌朝。
「ひっく……ひっく……パン、美味しい」
「王女様、普通のどこにでも売っているパンですよ。あ、昼は昨日残ったステーキでも」
「も、もうステーキはこりごり!! いやあああああ!」
◇◇◇
「今までの冒険を記録致しました」
「あ、ありがとうございます。あの……なぜそんなに不機嫌なのですか」
「ぷいっ!」
7回のループを経て、新しい時を刻むことになる。
魔の塔を無事クリアしたため勇者達はセーブのため玉座の間を訪れた。
「さすが勇者。連戦連勝だな」
「これなら魔王軍も余裕だな」
「この勇者倒せるやついるのかよ」
7回も死んだくせに何を言っているんだ近衛兵達は……。
私はそのせいで牛肉が見れなくなってしまった。
これだったら私も記憶を消して欲しかった。何で私だけ全てを受け継いで遡るの!?
あれから宝剣セーブ・ザ・クイーンの呪いを解こうと調べたが、調べれば調べるほどその呪いが強固であることに気付く。
今は勇者を気持ち良く旅へ行かせるしかない。
「ごほん、では勇者様。5人……仲良く旅を続け下さい。決して追い出したりせぬよう……! ねっ!」
「は、はぁ」
それからも勇者の同行を千里眼で確認しつつ、私は気が気でない生活を過ごすことになる。
いつまたは……ループをするか。不安でいっぱいだったのだ。
勇者達が死なないように旅立つ支援金を募ったりとまわりから見れば婚約者を甲斐甲斐しく想う良き姫で褒められまくった。
おそらく魔王が死ねばループの呪いが解けるはず。絶対に勇者を死なせない。
※8回目
「今までの冒険を記録致しました」
「ありがとうございます、王女」
「ああああああ、戻ったぁぁぁぁぁ。戻っちゃったよおおおお!」
「王女様!?」
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