恋日記

いや

「今日は触らないで」

仕事場から家に帰り、いつものようにお帰りのキスとハグをしようすると妻に突如として告げられた。


「なんで？どうしたの？」


「とにかく嫌なものは嫌なの」


なに？僕何かしたっけ？

家に帰る連絡はしたし、帰宅時間もいつもと変わらない。

あの日はこの前終わったばかりって言ってたし。

まさか、倦怠期!?

倦怠期の先に待つものは、離婚!?


「まって!!」


キッチンの方へ引き返そうとする妻の左腕を藁をもすがる思いで掴む。


「いったー!!」 


いや、そんなに悲鳴を出すほど強く掴んでないはずだけど。


「だからやめてって言ったのに～!!今日、注射打ってきて痛いの」


妻が涙目でこちらを睨みつける。


「なんだー、注射かあ」


「なんだーじゃないわよ。もう知らない」


僕はホッとした気持ちになって笑っていたのだろう。

僕の表情を見た妻は怒ってキッチンへ行ってしまった。


「ごめん、ごめん」


なんとか許してもらおうと妻の後を追いかけキッチンへ。


「ついてこないで。そして、近づかないで」


その日僕は、鉄壁の心の壁を作ってしまった妻の半径3m以内に立ち入ることを禁止されたのであった。