転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

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第六章『学校開校』

177話 王太子の追加条件

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 僕らはそんなに時間があるわけではなかった。受験日まで3日を切っていたからだ。ナログ共和国滞在は予定より2日伸びて、僕は内心慌てている。

 ガス抜きの余興として開催された武闘大会は、僕は5連戦してペーパさんに負けて医務室へ運ばれ、その後ストリナは10連戦してアノーテさんに負けたらしい。

 最後はアノーテさんとペーパさんがエキシビジョンとして戦い、激戦の末アノーテさんが勝っている。最後の方だけチラッと観戦したが、ミスリルアマルガムの符呪を外部展開するペーパさんに対して、全身に赤い刺青を浮かび上がらせるアノーテさんが、ほぼ一方的に殴るという展開だった。
 仙術を極めれば神術が効きにくいが、それは神術に近い符呪仙術でも同様ということだろう。

「ぶー。アノーテおばさん、つよすぎ」

 飛行船内の向かいの席、つまり王太子殿下の隣に座ったストリナが、頬を膨らせてぶーたれている。試合は見ていないが、アノーテさんの双剣に対抗するために、ストリナは空中にもう一本剣を浮べ、『金行飛刃』を乱打したらしい。

「リナちゃんはよく頑張ったよ。あの国の最高戦力に、あれだけ耐えたんだから。二人とも、怪我がなくてよかったよ」

 王太子殿下がストリナにお菓子をすすめながら、嬉しそうに慰めているのを横目に、窓の外に広がる広大な景色を見る。

 多分、マイナ先生は僕が仕事しないことに怒っているだろう。今回の件も元をただせば、僕が書いた許可証が問題だらけだったせいだし。

「でも、つぎはまけない」

「あと五年も鍛えれば勝てそうだね。ちなみにリナちゃんは将来聖女になりたいの? それとも将軍?」

 子ども相手なせいか、王太子殿下の口調が柔らかい。

「ううん、ぼうけんしゃ! まものをいっぱいぶっころすの!」

 魔狼に襲われて以降、ストリナはずっと冒険者を目指している。うちの両親、貴族の令嬢の育て方とか知らなさそうだし、そろそろ行儀作法とか本格的になんとかした方が良いかもしれない。貴族として王太子の護衛に参加するかもしれないし。

 まぁ、それは自分にも当てはまるのだけど。

「そうかぁ。じゃあいっぱい鍛えないとねー。しばらくはフロートの街にいるから、今度手合わせしようか」

「うん! やる!」

 手合わせと聞いて、ストリナが断るわけはないのだけど、相手は王太子。本人は気安く話してくれる方ではあるけど、王族周辺には礼儀にうるさい人もいるだろう。とても不安だ。

「ああ、そうだ。イントよ、言い忘れていたが、今回問題を解決するには条件があってな」

「えっ?」

 聞いてないんですけど。
 
「えーと、何だったか。あ、そうだ。まず学校な。工事計画、もう少し加速できないか? 今のままでは規模が小さすぎる」

 助けてくれるのはありがたいが、条件があるなら先に言っておいて欲しい。解決後に追加条件を持ち出すのは、色々と手遅れ感がある。
 
「それは、事業で得た収益を順次投入しているからです」

「よし。ならば出資額を増額しよう。他の学部も早急に拡大せよ」

 建設に必要な資材も労働者も順調に集まっている。まぁそれくらいなら対応できるだろう。

「わかりました。出資額以外にも、建設関係の設計ができる役人の派遣もお願いします」

 図面ができるそばから着工しているので、建物の設計も間に合っていない。設計ができる人は希少なのだ。

「頼んでみよう。それと、父上からの指示だ。イントに産褥熱の予防法を確立してもらいたいらしい」

「産褥熱?」

 また急な話だ。今度は聞いたことがない病名だ。

「知らないか? イントの母もそれじゃないかと思うんだが、出産の際、母親が発熱して死んでしまう病だ。10回お産があったら、一人か二人は死ぬ病でな。もっと安心して子どもを産めれば、人口が増えるだろう?」

 確かに、実の母さんは僕を産んだ時に、産後の肥立が悪くて亡くなったと聞いている。

「そんな病名がついていたんですね。でも、僕はお医者様ではないですし……」

 王太子殿下は呆れ顔で僕を見る。最近呆れられてばかりだ。

「イントはレイスウィルス感染症や熱中症の予防方法を確立しただろう。できなくても構わないから、一回考えてみてくれ」

 前世でそんな話は滅多に聞かなかったから、きっと克服されていたのだろう。

「考えるだけなら」

 帰る頃には顕微鏡もできているだろう。それでわかるとは限らないけど。

「期待してるぞ。解決したら我が国の孤児問題の半分は解決するかもしれん」

 コンストラクタ村で孤児になった子の親族の死因は、魔物、病気、戦争あたりが多いらしい。親族が死ななければ、孤児になりにくいというのは納得できる話だ。

「とりあえず、帰って親方と相談してみます。もう顕微鏡はできてるはずなので」

 親方の弟子のルリさんは、14歳ながらメガネ職人として名をはせはじめている。近視も遠視も老眼も、ルリさんはいろんな度のレンズを作って試すという方法で次々治療してみせたらしい。
 前世と比べたら必要な人は少ない気がするが、賢人ギルドから少しずつ噂が広がって、メガネ事業は早くも黒字化したそうだ。

「小さなものが拡大して見えるのだったか。原因が見えるようになるのか?」

「原因がそれで見えるものなら。中にはそれより小さいものもいるので」

 菌のクラスなら見えるかもしれない。でもウィルスの類なら無理だ。電子顕微鏡でも用意しないと見えないだろう。

「ふむ。難しいんだな」

 見えなくてもどうにかできる方法を考えないといけないだろうか。

 ふと、キラキラした目のストリナと目が合った。

「すごいね! おにいちゃん」

 僕はすごくない。前世ではもっとすごいやつなんてゴロゴロいた。こんなことなら、前世でもう少し勉強していれば良かった。
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