私たちの離婚幸福論

桔梗

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017 歓迎の宴

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その日の夜、宮殿の広間では、使節団の歓迎の宴が始まっていた。



宮殿の広間は煌びやかな灯りと共に賑わっている。

色とりどりの提灯が空を彩り、舞台では華麗な舞踏が披露されている。

各国の使節団はそれぞれの文化を讃え、王族や貴族たちの視線を一心に集めていた。



ルシェルはゆっくりと歩を進めながら、宴の賑わいの中に、ふと彼の姿を探した。



やはりそこには、ひときわ凛とした佇まいで、周囲の視線を浴びるゼノンの姿があった。

彼は隣国の王子でありながら、ここヴェルディアの地で彼はひと際異彩を放っていた。



「ルシェル様」



ゼノンの声が柔らかく彼女の耳に届く。



「お疲れのところ、お越しいただき光栄です」



ルシェルは微笑みを返しながらも、胸の内に渦巻く不安を隠すように、静かに答えた。



「いいえ、私は大丈夫ですよ。ゼノン様こそ、お疲れでしょう?どうかご無理なさらぬように」



「ありがとうございます。ルシェル様と共にいられたら良いのですが、しばらくは難しそうですね…」



自分に挨拶しようと列をなしている人々を横目に、ゼノンは呆れ気味にため息をついた。



「……そうですね。私のことはお気になさらずに、どうぞご挨拶なさってください」



「……わかりました。どうか、ルシェル様もご無理なさいませんように」



「ええ…。ありがとうございます」



ルシェルは、自分を案じる彼の表情とその言葉がただ嬉しかった。



やがて、各使節団は交流の場へと進み、ルシェルは聖月国の大司教セリス・ユルファと静かな会話を交わす。



「セリス・ユルファ様、宴は楽しまれていますか?」



ルシェルは外向きの笑顔で微笑みかける。



「これは、皇后陛下。そのように畏まらないでください。私のことは、どうぞセリスとお呼びください」



「ありがとうございます。では、セリス様とお呼びいたしますね」



セリスは優しく微笑み、頷いた。



「皇后陛下は、精霊に会ったことがありますか?」



セリスの声はとても穏やかで優しいく、聞き惚れてしまう。


「精霊ですか?いいえ、残念ながら…」



「そうですか。精霊は人の心にとても敏感で、時として、魂のつながりすら感じさせることがあります。皇后陛下は近頃そのような経験をされたのではないですか?何か心を動かされるような…そんな出来事はありませんでしたか?」



ルシェルの視線が揺れる。何かを見透かされているような気がした。



「心を動かされるような出来事…ですか?」



「はい。出会いは偶然のようでいて、必然を孕んでいる。あなたが誰かといて、時折感じる奇妙な懐かしさや、説明のつかぬ引力も、もしかすると”精霊の導き”なのかもしれません」



セリスはじっとルシェルの表情を見つめ、言葉を添えた。そして優しく微笑んだ。



「ただ、そうした感覚は時として人の心を惑わすこともございます。だからこそ、もし何かに惑うような事があれば、ご自身の心の声に耳を澄ましてみてください。一体自分が何を求めているのかを…」



ルシェルは微かに息をついた。



頭の中にはノアではなく、ゼノンの顔が思い浮かんだ。

心の中で何かがざわつくのを感じながらも、言葉には出せずただ静かに頷く。



「ありがとうございます。セリス様のお言葉、心に刻みます」



「ええ。あなたに精霊の加護が在らんことを」



セリスは穏やかに微笑んだ。



ーー祭も佳境に入り、舞楽の幕が下りた頃、宮殿の中庭では、上流の者たちが杯を交わしていた。



そんな中、ルシェルは庭の端、大きな桜の花の下にひとり立っていた。



それは意図して選んだ場所でも、避けた場所でもない。

ただ彼女がこの場でいられる場所は、この位置しかなかった。



夫であるノアの傍には、イザベルがいた。

この光景を、私が皇后だと知らない者が見れば、きっとイザベルが皇后だと言われても信じてしまうだろう。

それが現状の全てだ。



そこへ、重い足音が近づいてきた。



「なぜ皇后殿下が、こんなところにおひとりで?」



低く太い声。



振り返れば、北方の将軍ルクレル・グレヴァル。

大柄な体に重厚な礼服をまとい、酒の香りをわずかに纏っていた。



「……いえ、特に理由はありませんよ。お楽しみの最中に、将軍からお声がけいただけるとは、光栄です」



「貴女ほどの方が、ひとり佇んでいることがとても不思議でな……いや、言葉を選ばねばなりませんね。失礼、我々の国では真を包まず語るのが礼なのです」



ルシェルは静かに微笑んだ。



「いいえ、お気になさらず。包み隠さぬ将軍の言葉は、むしろ清々しいもので、とても好ましく思いますよ。それに言葉遣いも、気にされずにそのままでよいのですよ。私は気にしませんので、話しやすい方で」



ルクレルは「流石は皇后陛下、懐が深いですな!」と杯を一口煽り、低く続けた。



「それはそうと、皇帝殿下があの側妃と連れ立っているのは……貴国では当然のことなのですか?」



その言葉に、ルシェルの胸が小さく鳴った。が、それを悟らせぬように、静かにうつむく。



「宴の場は、すべての者に平等に開かれております。……側室も陛下とともにあるのが、自然な流れなのです」



「ほう。随分と……お強い」



ルクレルの目が細められた。

だがその瞬間――涼風のように割って入る声があった。



「強いからと言って傷つかないわけではないのですよ、ルクレル・グレヴァル将軍」



ルシェルが振り向けば、そこにいたのはゼノンだった。

銀糸の衣を身にまといながらも、そこに在るのは光よりも深い静けさだった。



「ゼノン様……」



ゼノンの顔を見た途端に、ルシェルはこれまでの不安が吹き飛んでいく気がした。


(ゼノン様とのことも、セリス様のいう”精霊の導き”ーーなのかしら?)



「なるほど。アンダルシアの王子は、礼節と騎士道を兼ね備えておられるようだ」



「ただ、あるべき言葉を申し上げたまでです。皇后陛下を、軽んじるようなことはなさらぬように」



その目に、珍しく熱がこもっていた。



「それは誤解だ!決して、軽んじたわけではない。私はただ、これほどの女性を妻としていながら、あのような女に惚れ込んでいる皇帝の気がしれないだけだ」



ルクレルはルシェルを見て、残念そうにため息をつく。



(あのような女……)



ゼノンとルシェルはクスッと笑った。



「なるほど、そういうことでしたか。これは失礼。その意見には私も全く同意ですね」



ゼノンはルクレルの言葉を聞いて先ほどまでの警戒を解いた。



「貴殿とは良い友人になれそうだ。ぜひ酒を!」



ルクレルはゼノンを気に入ったようだ。



「ええ、喜んで」



ゼノンも同意し、2人は杯を交わした。

ルシェルは何も言わず、ただゼノンの横顔を見つめた。



(なぜ急に仲良くなったのかしら……男の人の考えはよくわからないわ……)



ルシェルはそんな二人の様子を見て、なんだかとても可笑しくなった。



そして、どこまでも冷静で優雅で、けれど彼女のために怒ることを厭わない――ゼノンのその真っ直ぐさに、胸の奥がふいに疼いた。



ゼノンとルクレルは話が盛り上がっているようだ。盃を交わしながら楽しそうにしている。



その様子を見ていると、不意に誰かに声をかけられた。



「皇后陛下、ご一緒してもよろしいでしょうか?」



そこに立っていたのは、璃州国の使節である藍 永燈。

淡い香を纏ったような気配で、衣擦れの音すらたおやかだった。



「藍 永燈様……ええ、もちろん」



(本当に綺麗な顔をした人だわ…男性…なのよね?)



ルシェルは彼の美しい顔につい見惚れてしまった。

藍 永燈はその視線に気付いたのか、そっと口を開いた。



「急に声をかけてしまい、申し訳ありません。なぜだか、皇后陛下がとても寂しそうに見えたので…」



「……そう見えましたか?」



「貴方は、強く、美しく、凛としておられる。なのに、どこか今にも泣き出してしまいそうな…私には、そんな風に見えました」



「……そうですか。私もまだまだですね。ですが、それが”皇后”という立場です。常に国の“象徴”であることを求められますから」



永燈は少しだけ立ち止まり、花々に触れる。



「”象徴”とは、孤独なものなのですね……ですが私は、そんな皇后陛下をとても美しいと思いました」



ルシェルはわずかに目を見開いた。



「……ありがとうございます」



「璃州では花を愛でる際、“咲ききらぬ瞬間こそが最も美しい”と申します。満開には届かず、少しだけ迷いを残すその姿が、人々の心を引くと」



彼は美しい顔で、ゆるやかに微笑む。



「皇后陛下もまた、まだ咲ききらぬ花のようで…とても惹かれます」



(なんだか雰囲気が…)



ルシェルは思わず視線を逸らす。



「…もし許されるのなら…皇后陛下が、どんな花を咲かせるのか――知りたいと思ってしまいました」



「…それは一体どういう意味でしょう…?」



ルシェルの声に、かすかな困惑が滲む。



「これは失礼しました。ただ、皇后陛下が大変魅力的な方だと伝えたかっただけです」



悪びれた様子もなく静かな口調のまま返される言葉に、ルシェルは恥ずかしくなってきた。



「たとえば……この庭に咲くどの花よりも、私は今貴方を美しいと感じています。それが国の”象徴”であれ、誰かの”妻”であれ、その事実は変わるものではありません」



その言葉に、ルシェルは再び彼の瞳を見つめた。



「…本当に、璃州の方々は、お話が上手ですね」



「言葉は、真心がなければ響きません。これは、私の本心ですよ」



それはどこまでも穏やかで、どこまでもたおやかな――だが確かに、誘惑だった。



ルシェルは静かに笑みを返す。



「……今のお話は…私の胸に秘めておきましょう。お褒めの言葉をありがとうございました」



風が、二人のあいだをすり抜け、夜桜の花びらがひとひら永燈の肩に落ちる。



彼はそれを払おうともせず、ただルシェルの瞳をじっと見つめていた。



「……麗しい夜です。どうか、このままもう少しだけ…あなたの隣にいさせてください」



その声音は甘やかで、けれどどこか危うい香をまとっていた。



(どうしましょう…この場を離れなくては…)



「…ルシェル様、夜風が冷えてまいりました。お身体に触らぬようご自愛ください」



ルシェルが戸惑っていると、澄んだ声が背後から届いた。

振り返ると、月明かりの中に立っていたのはゼノンだった。



(助かったわ…)



「ゼノン様…お気遣いありがとうございます。そうですね、冷えてきましたし…私はそろそろ戻らせていただきます」



ルシェルがそう答えると、ゼノンはやわらかく微笑んだ――が、その目は永燈に向けられている。



「璃州の藍 永燈様、素晴らしい詩興ですね。まるで花を口説くような」



言葉の調子は穏やかでありながら、奥には鋭さが潜んでいた。

永燈は少し口元を上げて応じる。



「お褒めに預かり光栄です、アンダルシアの王子殿下。詩とは心の水鏡。麗しいものを前にすれば、自然と美しい言葉が零れるものかと」



「なるほど、それは一理ありますね。……しかし、鏡の水面は、少しでも揺れれば、像は崩れるものですよ」



ルシェルは、ふたりの視線が交差するのを感じた。



火花は散らず、むしろ静かで気品ある応酬。

だが、その奥で剣が交わされているような、妙な緊張感があった。



永燈はふっと目を細めた。



「それでも、揺らめく水面に映る一瞬の美しさもまた、詩の良さであると……そうは思われませんか?」



「ええ、そうかもしれません」



ゼノンは頷いた。



「ですが、私は一瞬の美しさではなく、揺れる水面こそ見たいと思うのです」



ルシェルの目がわずかに揺れた。



「……」



永燈はそれ以上言葉を重ねることなく、軽く礼を取った。



「今宵の会話、大変楽しませていただきました。皇后陛下、また改めて」



そうして彼は、まるで舞うように軽やかにその場を離れていった。

残されたルシェルは、言葉を失ったまましばらくゼノンを見つめた。



「…ゼノン様?」



「…あのような者と、あまり話し込まれるとよくありません」



ゼノンはどこか子供のように、拗ねた色を帯びていた。



ルシェルは思わず、くすっと笑みをこぼした。



「…また、助けられてしまいましたね。今日は…いえ、今日だけでなくこれまでも……ゼノン様には助けられてばかりです」



「そんなことはありません。私は…」



ゼノンは何か言いかけたが、「いえ、なんでもありません」とそれ以上何も言わなかった。



そして哀しげに、愛しそうにルシェルを見つめ、微笑んだ。
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