銀河の叫び 〜悪霊となったあなたを精霊刀剣で祓います〜

十文字 銀河

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《序章 精霊刀剣》【選ばれし子どもたち編】

第六話 水の精霊分離剣

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【現代 兵庫県神戸市 国立十文字学園高等部神戸校 食堂】

「おばちゃーん!おかわり!大盛りでっ!」
「あら麻璃流まりるちゃん、今日もいい食いっぷりだねぇ!」
「今日もガッツリ稽古したから、もうお腹がペッコペコで~!」
「ふふっ!若い子はそうでなくっちゃ!
 はい、大盛りご飯、お待ちどうさま!」
「ありがとうございますっ!」

茶碗からこぼれそうなくらいの大盛りご飯を受け取ったあたしは、席に戻って、生姜焼きに再び箸を伸ばす。

この、口いっぱいにご飯を詰め込んでいるあたしの名前は渡辺わたなべ麻璃流まりる
国立十文字学園高等部“神戸校”祓い科の二年生。

稽古のあとに食べるご飯って、なんでこんなにおいしいんだろ!?
しかも今日の日替わりは、生姜焼き定食。
肉!タレ!白米!最強タッグ!

ガッツリ動いたあとのご飯といえば、やっぱりお肉!
──って思うの、あたしだけじゃないよね?

「ん~~っ、うんま~~い♪」

ほっぺが落ちそうな味に、思わず笑みがこぼれる。

幸せ……いまこの瞬間、たぶん世界一幸せ……

そんな、幸せに浸っていたときだった。

「♪~~」

テーブルの上で、スマホが軽快な着信音を鳴らした。
画面を見ると、精霊科三年の助助さんからの着信。

「はひっ!」

ご飯を頬張ったまま通話ボタンをタップ。

「桜井だ
 悪霊が出た、すぐに来てくれ
 場所は磨須ます海水浴場だ」
「ほうはいへふ!ふふいふはいはふ!」
「……なんて?」

あたしは慌てて口の中のご飯を飲み込み、喉を押さえながらゴホッとひと咳。

「了解です!すぐに向かいます!」
「よろしく頼む」

通話を切ると、あたしは最後のひと口を一気にかきこんで立ち上がった。

「おばちゃーん!ごちそうさまでしたーっ!とってもおいしかったです!」

ニッコリ笑って感謝の言葉を伝えると、食堂を飛び出して磨須海水浴場へと急いだ。

「あともう一杯はいけたなあ……」

─────────────────────────────────────

磨須ます海水浴場】

神戸市内でも有名なこの磨須ます海水浴場は、砂浜の長さが二キロ近くもある広大なビーチ。
夏になると、たくさんの海の家が立ち並び、海水浴客でめちゃくちゃにぎわう地元の人気スポットだ。

──でも今は、夜。

陽が沈み、浜辺はひっそりとした闇に包まれていた。

「麻璃流!こっちだ!」
「助助さーん!」

助助さんの声に反応して、あたしは砂浜をザッザッと駆け寄る。
その背後には、精霊科の学生が三人。
全員、顔がこわばってる。緊張感ビシバシだ。

「着いたばかりで悪いが、早速現状報告を──」
「それじゃあ、行ってきまーすっ!」
「お、おい!?ちゃんと敵の情報を──」
「大丈夫ですっ!見ればわかりますって!」
「おい麻璃流!……まったく、あいつはいつもこうなんだから……」

助助さんのため息が、潮風に溶けていく。
──でも、もう遅い。
あたしはすでに、夜の海風を切って走り出してた。
悪霊の気配は、はっきりと感じる。
じっとしてるなんて、性に合わないし!それに……

「よ~し、いっちょ派手にやっちゃいますか~っ!」

─────────────────────────────────────

磨須ます海水浴場 助助の位置から約1km先】

「おっ!はっけーん♪」

夜の波音にまぎれて、あたしの声が弾んだ。

浜辺の先に、烏賊いか型の中級悪霊がずらり、ざっと20体。
そのさらに奥、まるで空気ごと歪ませるような異質な霊気を放つ巨大な影──あれが本命、上級悪霊だ。

「よ~し、先手必勝だね!燃えてきたーっ!!」

あたしは、背中に携行していた剣の鞘から、柄を引き抜く。
そして、柄を強く握りしめ、大声で叫んだ。

「来なさい!!水青龍すいせいりゅう!!」

その名を叫んだ瞬間——
あたしの体内から水が一気に噴き出し、空間全体が渦を巻き始めた。

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

地を揺るがすような轟音とともに、巨大な水の渦が浜辺を包みこみ──
その中心から、咆哮を上げて龍が出現。
これぞ──

“水の大精霊・水青龍すいせいりゅう

全身が透き通るほど澄んだ水で形作られた、巨大な龍。
その姿は──荘厳で、美しくて、幻想的で……それでいて、とてつもなく強そう!!

あたしが今、手に持っているのは──

“水の精霊分離剣ぶんりけん

つかは、握りの役割を果たすIアイ字型の精霊玉だけでできてて、鍔もなし。
一見すると、ただの細長いクリスタルの棒みたいな見た目。

ちなみに、別名は“Waterウォーター  Saberセイバー”……
 って、精霊科の人たちが勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。
どうやら、昔めちゃくちゃ流行ったSF映画『MOON WARS』に出てくる武器、“Moon Saber”に形がそっくりなんだって。
……まあ、たしかに見た目は似てるかも。

水青龍は、まるで大河がそのまま空を流れてきたみたいに、ズバーンッて勢いであたしの柄に突っ込んできた!
“精霊玉”に、水青龍が吸い込まれる。

次の瞬間──
透明色だった精霊玉が、青色に染まる。

つかの両端から激流が噴き出し、渦を巻くように収束しながら硬質の“水の剣身”を形作った。

今──
この刀は“真なる形”を顕現した。

“柄”だけだった未完成の刀に、大精霊の力が宿り、“水の剣身”がここに生まれ、“水の精霊分離剣”は真価の姿を現した。

これこそが──
大精霊に選ばし者のみが扱うことを許された伝説級の武器。その名も──

“精霊刀剣”。

あたしは、水の精霊分離剣を構える。

「水の叫び THE  FIRSTファースト!!

 流流舞踏剣るるぶとうけん!!!!』

──風のような、いや、水流のようにしなやかで速く……

斬る、斬る、また斬る!

奔る剣閃は奔流となって中級悪霊たちをなぎ払い、その一撃一撃が、まるで水の舞踏──
絶え間なく繋がる動きが、攻撃と防御をひとつにし、敵の隙を一瞬たりとも逃さない。
圧倒的な速度、そして流麗な剣技。

“流れるように、踊るように斬る”という言葉が──
いま、ここに具現化されていた。

──え、水でどうして斬れるのかって?

それはね、”ウォータージェット“の原理を応用してるから!

超高圧ポンプの力で圧縮された水が、狭い通路を通って超高速ジェット水流になる。
この柄部分がその“ポンプ”の役割を担ってるってわけ。
その威力、固いものはもちろん、どんなに柔らかい素材でも切断できる。

「グギャアアアア!!」

悪霊たちの核──“悪霊球”を斬り裂いては、次々と祓っていく。

「よーしっ!あとは奥の上級だけ!」

──と思ったそのときだった。

「……あれは!?」

上級悪霊は、自身の頭上に触手を集中させていた。
展開されるのは──

“雷の円形型霊法陣”

「ギィィィィィ!!」

『上級悪霊
 俗名ぞくみょう吉川よしかわ見谷子みやこ
 種別:烏賊いか
 属性:雷』

次の瞬間——
“雷の円形型霊法陣” が黄色に輝くと、空気が裂けるような轟音とともに、雷が放たれた。
それは、一点集中。
真っ直ぐ、迷いなく。あたしを貫くための雷。
砂浜を抉り、空気を焦がしながら、雷は一直線に突き進んできた。

「やばっ!」

とっさにジャンプして回避──したけど!

「きゃあっ!」

空中で触手に絡め取られてしまった。

「やだ~~っ!ヌルヌルしてて気持ち悪い~~っ!!」

触手を斬ろうとしたけど──
この形態……両手持ちじゃ、振りにくいっ!!

「こうなったら……第二形態!!」

I字型の精霊玉、柄中央でパキッと分離。
一本だった柄が、二本の短い柄へと変化する。

そう──この“水の精霊分離剣”は、両剣から双剣へと“分離”できるのだ!

言うなれば──
第一形態は「両剣モード」。
第二形態は「双剣モード」。

──ふっふっふっ♪
刹那さんの“氷の精霊両刀”。そして、天嶺叉の“樹の精霊双刀”。
その両方の特性を兼ね備えた、この”水の精霊分離剣“は──まさに無敵!!

両刀と双刀。いや……
両剣から、双剣へと変化できるこの“水の精霊分離剣”こそ、真なる最強!!

「これなら……いけるっ!」

両手に構えた双剣で、触手をズバズバッと一閃!

「やった!」

拘束を脱したあたしは浜辺に着地。

「第一形態!!」

すぐさま双剣を合体させ、再び両剣へ。

「おっりゃああああああ!」

水の精霊分離剣を全力で振り抜き──
上級悪霊を悪霊球ごと真っ二つに!

「パキィンッ!」

甲高い破裂音が夜空に響く。

静寂の中、砕けた悪霊球からふわりと光が溢れ──
その中から、透き通るような女性の人影が姿を現した。
20代くらいの若い女性。
何も言わず、ただ穏やかに微笑むと──
そのまま、空へと昇っていった。

そのあとを追うように、無数の光が浮かび上がった。
中級悪霊の“元” だった精霊たちの魂もまた、光の粒となって空へ帰っていく。

——祓い、完了。

「良き、来世を」

キンッ!

あたしは、水の精霊分離剣を静かに鞘に収めた。

─────────────────────────────────────

※用語解説
・霊気:霊的存在から自然と発せられる気配や雰囲気。
 周囲に「何かがいる」と感じさせる霊的な空気感。
 人はかつて、霊気をこう呼んでいた──“霊感”と。
 しかし、精霊の存在が明らかになると、“霊気”へと改名された。
 人間でいう“覇気”のようなもの。
(使用例):「この場に漂う霊気……ただ者じゃない……!」
・霊圧:圧倒的な霊気、霊力によって生じる、“威圧感”、“圧力”。
 精神や身体に直接のしかかるような、息苦しさを感じる。
 強者ほど存在するだけで周囲を制圧する力を持つ。
 人間でいう“重圧”のようなもの。
(使用例):「立っているだけで、圧し潰されそうな霊圧だ……!」
・霊力(追加):“霊的エネルギー”そのもの。
 霊法の源となるエネルギー。
(使用例):「全霊力を、この一撃に込める!」

※キャラクター紹介
プロフィール
名前:渡辺 麻璃流
年齢:17歳
身長:168cm
体重:秘密
職業:国立十文字学園高等部神戸校祓い科二年
武器:水の精霊分離剣
召喚精霊:水の大精霊 水青龍
性格:天真爛漫
一人称:「あたし」
好きな食べ物:なんでも!
最近気になっていること:無し!!(寝れば大抵忘れるので)
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