兄ちゃんとぼく。

恋下うらら

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ぼくの兄ちゃん

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ぼくは小学三年生、
ぼくの兄ちゃんは五年生だ。
ぼくの兄ちゃんは野球をやってるんだ。
チームにも所属してる。
いつもホームランをかっ飛ばす、すごい兄ちゃんなんだ。

名前は、はるき。

略してはる兄。

そのはる兄ちゃんがなぜ
大、大、ホームラン
をかっ飛ばす事が出来るか、よく観察することにした。

毎朝、食べる量もハンパないんだ。
目玉焼き、ウインナー、牛乳、おまけに母さんに、チャーハン作ってくれ~
という。
すごい食欲だ。

「はるき!お前は朝からすごいね!」

「うん。母ちゃん!おかわり!!」

朝からチャーハンを平らげて、学校にいざ出発だ!!

「はる兄、どうしてそんなに朝から食べれるの?」
と聞くと

「野球でホームランを打つためさ!」
というかと思いきや

「三時間目になると、お腹が鳴って恥ずかしいからさ!」
というはる兄。

「なんだ恥ずかしいからか~。」
と大きく頷いた。

「今、食べとかないと…。」
と兄ちゃんは笑った。

はる兄の食欲は天高く馬肥ゆる秋だ。

「うわー、兄ちゃん何考えてるんだ?!」
兄ちゃんの考えてることは
たくさん食べて、体を大きくして
ホームランをかっ飛ばす…。
特別なことではない。

兄ちゃんを見てたら食欲が増す。

ぼくも沢山食べよっと…。

そして、僕たちは意気揚々と学校に向かっていく。

兄ちゃんはそんな僕を見て、ニッコリした。

「お前、嬉しそうだなぁ~。」

兄ちゃんが僕の頭に手を置いた。


はる兄と行く道中は、楽しくて、話がまた愉快だった。
ぼくは兄ちゃんが好きだ。

この日はすでに晴天で飛び抜けるほどの
青い空が広がっていた。
青い空に向かって、はる兄の笑い声が
朗らかに響く。
僕たちは、陽気な足取りで学校に向かっていく。


ある日の日曜日、
野球の試合のため母さんは朝から忙しそうだ。

朝も六時頃から起きて弁当を作ってくれる。

おにぎり、大が四つとバナナ…。
これは兄ちゃんの昼飯だ。

「はるき!お前の好きな唐揚げおにぎり作っておいたよ!チームのために頑張ってね!」
と母さんの熱い声援を聞くと、兄ちゃんは意気込んだ。

「今日も大、ホームランだ!」
といった。
ぼくも兄ちゃんのカッコイイ姿を見るのが
好きだった。
挑戦する姿も好きだった。
兄ちゃんの背中が大きく見えた。

「兄ちゃん、バッターボックスに立つと緊張しないの?」
と聞くが返事はいつもいっしょ。

「緊張はするさ!
でも、てるきー、ぼくは打てるぞーと想像して立ってるんだ。兄ちゃん、すごいんだよ。」
と身を乗り出した。
そして、ぼくは質問した。

「どのくらい?」

「いつも?」

どの質問にも答えてくれた。

語るだけでなく、行動もともなっていた。
誇らしい気持ちでぼくは話を聞いた。

「へー!すごいぞ~兄ちゃん!」
兄ちゃんはガッツリとぼくの頭に手を置く。

頭を鷲づかみにされた感覚が
ぼくと兄ちゃん
兄ちゃんと野球と繋がっていた。
ぼくはその幸せの永続を願っていた。


その日の試合は僕らのチームが残念なことに負けてしまった。

その日を境に、僕たちの運命の歯車が狂い出した。







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