兄ちゃんとぼく。

恋下うらら

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試合の結果

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兄ちゃんたちは、悔しそうに涙した。

「一生懸命頑張ったのによー。」
とおいおいと泣く。

背を丸めて泣いた。

「あいつの打席でヒットが打てたら良かったんだ……。」
そして兄ちゃんは吐き捨てるよう、皆のこと、
Kくんのことを悪く言った。

チームの皆は、兄ちゃんに冷たい目を向けた。

その日を境に皆とは仲良く出来なくなった。

兄ちゃんは野球の時、一人でいることが多くなっていった。

監督さんたちはそんな兄ちゃんを見て、気づかずに過ごしていた。

そして、野球の練習を休むようになっていった。

家での兄ちゃんも口数が少なくなった。

「はる兄ちゃん、最近どう?」
と聞いても

「まぁぼちぼち…」
というだけだ。

夜、一人で素振りの練習をしていた兄ちゃん。

最近、めっきりと練習しなくなっていった。

家でテレビを見て、笑って過ごしていた。

(変わったな…)

ぼくはそんな兄ちゃんを見るのが少し辛くなった。

「はる兄、最近素振りしてないね。」
ぼくは声をかける。

「もう、いいんだよ…。」
少し胸がキュッとなった。

もういいよ…という言葉が兄ちゃんが野球に対する気持ちが失せてるようだった。

ふてくされて寝てる兄ちゃん。

変わったなぁ。

どう考えてみても、あの日の試合以来、変わったような気がする。

どうしよう……。

ぼくと兄ちゃんだけでは解決出来る問題ではなかった。

母さんはどう思っているのか…。

ぼくは少し早く起きた。

兄ちゃんより早く起きた。

そして、母さんに声をかける。

「母さんあのね…。はる兄ちゃんのことなんだけど…、最近どう?」

「そうね…。はるきもいろんな事をして大変そうだね…。」
顔は向こうに向けたまま、少し寂寥感にさいなまれた様子だった。

いたたまれない感じがした。

母さんもなにか気づいてるんだ。

慌てて自分の部屋に駆け上がっていく。

母さんの悲しい顔が見たくなかったのだ。

(僕が何とかしなければ……。)

そうだ!一度監督さんに相談してみよう…

ぼくは息を吸い込んだ。

静かに息を吐き出した。

何かの原因でこうなってるんだ。

その原因を掴めないでいる。

押し潰されそうだ。

僕ですら息苦しいのだから兄ちゃん自身はどうなってるのか。

監督さんの顔が浮かんだ。

頼ってみよう。

今はそれしかない……。

週末、行動を起こすことにした。




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