3 / 7
チームの監督
しおりを挟む野球の練習を見に行くことにした。
兄ちゃんは頭が痛いという理由で少年野球の練習を休んだ。
監督さんと話をするいい機会だ。
僕はすぐさまその日の朝、学校の少年野球へと急いだ。
午前中の練習がいつもの様すすみ午前十二時
頃終わった。
ついに僕の番だ!!
監督さんに兄ちゃんの事を相談しなくては…。
タイミングを見て、お昼ごはんが終わったぐらいに話を聞いてもらおう!
遠くから見えるグラウンド。
毎週のように皆と野球をしていたグラウンド…。
皆を引き連れてさっそうとしたプレーをしていた、兄ちゃん…。
まさかこんなことになるとは…。
このまさか…を打ち消さなくては…。
ぼくは重い足取りで監督さんに近づいた。
監督さんの後ろに立つと
「山下監督…、ぼくもそろそろ野球に入ろうかな~。」
と問いかけた。
それを聞いた監督さんは身を乗り出した。
食べ終わった弁当を置くと、そばにあるお茶を飲み干した。
足を交互に組んではソワソワと左右に揺らしている。
「お前もついに心に決めたか!」
と大きい目を大きく見開いた。
「はるき兄の才能もすごいからお前の才能も凄いぞ!!足も速い事だし…。」
と随分期待された。
でもぼくは兄ちゃんみたいな才能はない。
それに肩も強くない。
大変なことになりそうだ。
いずれ入るであろう野球、タイミングとしてはまだだ。
兄ちゃんのことを言わなくてわ。
「もう少し考えてみます。ところで、話があるのですけど…。」
と言葉がつまった。
「どうかしたか~?」
監督さんの深妙な面持ち。
「どうしたのかな。てるき。」
監督さんの優しい声。
思い切って話をすることにした。
「最近、はる兄の様子がおかしくて…野球の練習も家ではあまりしてないし、何かチームの中に入れずにいるような…。」
「えっ!…」
しばらく沈黙の時間が流れた。
ぼくは一体全体、どんな顔をして話をしているのか…。
やりきれない状況。
監督さんは椅子から立ち上がると、歩き出した。
そばの階段の石段を上りはじめた。
ぼくも、とぼとぼと、先頭を歩く監督さんの後ろをついていく。
「わかった…」
石段の途中で止まると僕の方を振り向いた。
「今日、夕方、少し家に寄せてもらうことにするよ。」
無表情で僕に語りかけた。
「はい、お願いします。」
ぼくの後ろをすり抜けるように風が吹いた。
ぼくの心の隙間を監督さんが埋めてくれそうだ。
切に願う気分だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる