兄ちゃんとぼく。

恋下うらら

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皆との絆

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家に着いたぼくは、一人考えた。

あの試合に関しては皆、一生懸命だった。

Kくんだって、はる兄だってそうかもしれない。

はる兄の一言に傷ついた彼。

もう少し優しい気持ちを兄が持ち合わせていれば…こうならなかったはず…。

Kくんにとってもその一言がコンプレックスになってしまったのかも…。

ぼくは兄ちゃんが気になり部屋へと行く。

兄ちゃんは下を向いて泣いていた。

ぼくもそんな姿を見て差し含む。

冷たい空気が涙いっぱい、鼻に詰まる。

嗚咽がもれていた。

兄ちゃんは野球が人生の一部になっていた。

むろん、奇跡的に変わる事を期待して、何かが変わろうとして今日の練習に参加したわけだが、かわりばえしなかった。

でも、こんな形で終わらせたくない。

ぼくは考えた。

すべてがもとに戻りますよう、一ヶ月前の僕たちのことを思い返していた。

僕がなんとかしなければ…。

もう一度、彼らと話をするべきだと思った。

「謝ってみよう。」

謝ることが一番に思えた。

勇気100%とはいかずとも、兄ちゃんの謝る気持ちが大切になるだろう。

「兄ちゃん…今、いいかな…」

「てるき…」

兄ちゃんが顔を上げる。

涙で濡れた顔が見える。

「てるき…どうしようか…」

兄ちゃんの中で大変なことになってる

何とかしなければ…。

「もう一度、彼らに会ってみよう。そして…謝ってみようよ…」

「うん……。」

「もう一度だけ…会ってみよう…兄ちゃん。」

「うん、わかった…」

ぼくはKくんに連絡することにした。



次の次の日、Kくんをグランドに呼び出した。

Nくんも来てくれる様頼んでいた。

兄ちゃんも小学校へと向かっていく。

NくんとKくんがグランドで待っていてくれた。

二人の姿が見えた。

二人の前に立つと

兄ちゃんはKくんの前で頭を下げた。

深々、下げた。

「ぼくの言った一言、傷つけてすまなかった。」

彼は唇をギュッと結ぶと

「とんでもない事になってたなぁー。ぼくは大変だったよ。怒ってるパワーが違った方にいったなぁー。」

嘘つくわけでもなく、言い訳するわけでもなく、そのままの彼がいた。

Kくん達は、僕たち二人、見下ろしていた。


不自然な感じにいる三人、動かずじっとしていた。

じっと何かに耐えるように唇を噛んでいた。

彼は重い口を開いた。

「ぼくも頑張っていたんだ。」

兄ちゃんはブンブンと頭をふった。

兄ちゃんはKくんにいった。

「あの時、そう言えたら良かった…。」

Kくんが近づいてくる。

彼は返事を聞くまでもなく、握手を求めてきた。

素早く兄ちゃんは近づき

胸に手のひらを押し付けるように握手を求めた。

冷たい風が少し心地よく感じられた。

そして見上げた空は、天高く繋がっていた。

Kくんも心の底では、この機会を待っていてくれた。

僕たちの関係もすれ違っていたけど、今、この瞬間、繋がった気がした。

「僕らは一つになれる。そういう気がするよ。」

「うん。」

僕たちは同じ悩みを抱え、これからも仲良くし、これまで以上にお互いの事を考え、生きていくのだろう。

Kくんがいたからはる兄がいる。

はる兄がいるからみんなもいる。

すべてうまく行くと信じたい。

希望を持って進んでいこう。

次の試合に向かって進んでいくだろう。

西の方には真っ赤に燃えるでっかい太陽が見えた。

壮大な自然の姿だった。

「なぁー、この次の試合、はるきも必ず来いよ。」

「おーう。」

僕らはでっかい太陽に向かって歩いていた。



僕たちは、次の週の試合に全員出席で試合にのぞんだ。

土の匂いが感じるグラウンド。

帰ってきて良かったぁ~!!

ピッチャー、一球投げてストライク!!

バッター、打ったぁ~!!

はる兄は、集中力が高まっていく。

いけるぞ~。

打てるぞ~。

「Kくん、いけるぞ~、頑張れ~!」

はる兄は叫んだ!!

天高く、叫んだ!!

天高く。



              おわり

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