彼は意地悪なボイスアクター

Enishi

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失恋

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「わぁぁぁぁ!!!」

愛は仕事終わりに麗依を呼び出しカラオケルームで大号泣していた。

「はいはいはい。よしよーし」

片手で背中をさすりながら麗依は食事をタブレットで注文している。

「あの後のことは何も覚えていない。穴があったら入りたいとはこういう時に使う言葉なんだ。もう、そのままそこに穴を掘って埋まりたい気分だった」
「確かにストーカーだよね、待ち伏せまでされて」
「そうです。私はストーカーです」
「まあ、スタジオまで行くのはダメだよね~」
「本当だよね。舞い上がり過ぎてた。でも確かめたかったのよ」
「でさ、どんな顔してるの? リーガル」
「え?」

注文を終えた麗依がタブレットから愛に目を向けてギョッとした。

「あんた、何その顔」
「何って」
「真っ赤っかだよ」

愛は頬に手をやると確かに熱かった。

「え? それって、どういう反応!? どういうこと? かっこいいの?」
「気になる?」
「気になる! てか、それ聞きに来たんだし」
「慰めに来たんじゃないの?」
「それはついでww」

麗依の肩をバシッと叩いた。

「で、で? その顔はタイプだったってこと?」
「というか、あれは女子のほとんどがタイプだよ」
「マジ!?」

麗依は大げさに口元を手で覆った。

「肌は白くて陶器のような綺麗さで、なんかこう唇も目も大きいというより長い」
「長いって何? 細いの?」
「ううん。細くはない。なんか横に長くて」
「こういうこと?」

麗依は鞄からノートとペンを取り出し適当な絵を描いた。

「全然違う! やめて!」
「あんたの説明だとそれだよ」
「あと鼻が綺麗だった」
「めっちゃ観察してるじゃん!」
「綺麗な顔すぎて、時が止まった気がしてじっくり見ちゃったの!」
「とにかく美形ってことね? それで顔出ししないのは、なんでだろうね」

そう言われてハッとした。

「確かにあの顔なら昨今の声優ブームで引っ張りだこだよ」
「狂わされそうなタイプ?」

うんうん、と愛は何度も頷く。

「じゃあ、やっぱり彼だ」
「ストーカーを狂わしてくる? 次、会った時は警察に突き出される。ある意味、人生が狂うわ」
「あはは、確かに!」
「笑い事じゃない!」

ノックする音がしてスタッフ2人係で大量の料理がテーブルいっぱいに並べられた。

「頼みすぎじゃない?」
「嫌なことは食べて忘れるのが1番」
「それもそうだね、もう忘れよう!」

愛はジャンキーな料理たちを見たら食欲も戻った気がしたのだった。
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