45 / 48
45 初夜に相応しいお召し物とは
私は婚姻誓約書を提出後すぐに、フェリクス様に抱えられて王太子宮に連れてこられた。
「「奥様、お待ちしておりました!」」
出迎えてくれた使用人達の中にアンヌもいた。
ほっとしたのも束の間、侍女達に湯殿に連れて行かれ、隅々まで磨き上げられた。
そして夜着を着せられ、鏡の前に立った私は絶叫した。
「あ、あり得ないわーー!!」
それは、肌が透けて見えるほどの薄い生地でできたベビードールだった。
細い肩紐に深く割れた胸元、太腿が丸見えのミニ丈。胸元のリボンをほどくだけで脱げてしまう前開きのデザイン。そして下に履いているのは、面積が小さすぎるレースの紐パンのみ。
「は、破廉恥すぎるわよ! 他には無いの!?」
「奥様、恥ずかしがることはございません。初夜に相応しいお召し物です」
「う、嘘、みんな初夜にはこういうのを着ているの?」
アンヌや侍女達が大きく頷く。
そういうものなのかしら。私、騙されてない!?
怯む私を侍女達はにこにこしながら夫婦の寝室に押しこめて、バタンと扉を閉じた。
「あの、お待たせ、しました。フェリクス様」
恥ずかしすぎて扉の前から一歩も動けない。
ソファに座っているフェリクス様からは何の返事もない。
破廉恥な女だと引かれているのかも。
やっぱり着替えてきましょう!
引き返そうと扉に手をかけると、フェリクス様がすごい速さで歩み寄ってきた。そして私を抱き上げてベッドに横たえた。
フェリクス様がベッドに肘をついて私に覆いかぶさると、彼の黄金の前髪がさらりと私の額に触れた。
目の前の美しい顔に見惚れていると、彼は熱の籠もった瞳で私を見つめ返した。
「すごく綺麗だよ、ロゼ。愛してる」
「わたくしも愛しています、フェリクス様」
心臓がばくばくと音を立てて、全身に熱が回る。
恥ずかしくて、フェリクス様のガウンをぎゅっと握ると、口づけが降ってきた。
「⋯⋯ん」
甘い口づけに、思わず声が漏れてしまう。
フェリクス様に抱きしめられて、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がる。
(ずっとこうしていたい⋯⋯)
「愛しいロゼ、私の十年分の愛を受け止めてくれる?」
私がこくりと頷くと、フェリクス様は夜着のリボンをするりと解いた。
◇◇◇
翌日の朝、いいえもう昼だわね⋯⋯
初夜ってあんなに凄いものだとは知らなかったわ。
私は今、フェリクス様の膝の上で遅い朝食をとっている。
「あの、フェリクス様。自分で食べられます」
「だめだよ。昨日ロゼに無理をさせてしまったから、私にお世話させて、ね」
フェリクス様は上機嫌で、私の口にせっせとスプーンを運んでいる。
「ありがとうございます。フェリクス様もお疲れでしょうに、わたくしばかり甘えてしまって」
「私は全然疲れていないよ。むしろ足りないくらい。二週間の休みを取って正解だった」
羞恥で死にそうになっている私の耳元で、フェリクス様が甘く囁いた。
「ロゼ、たくさん愛し合おうね」
「わたくしの、し、心臓が持ちません!」
抗議する私に、フェリクス様が口づけの雨を降らせる。
「ねえ、ロゼ。私はしばらく夫婦二人で過ごす期間を持ちたい。ロゼの身体の負担を考えても、子を成すのはロゼが二十歳になってからがいいと考えている。それまでは私が王家に伝わる薬を服用する予定だけど、どうかな。ロゼの考えを聞かせて?」
「はい、わたくしはそれで問題ありません。ですが⋯⋯」
私はふいに不安に思ったことを口にした。
「二年経っても、わたくしに飽きずに、こ、子作りをしてくださいますか?」
フェリクス様は私をぎゅうっと抱きしめてきた。
「もう、ロゼ、なんでそんな可愛いこというの。私がロゼに飽きることなんて一生ないよ。断言できる」
「そうなのですか。安心いたしました」
私はほっと安堵の息をついた。
フェリクス様は世継ぎが求められる立場だ。できることなら私が彼の御子を産みたい。子が出来ないせいで側妃を迎えるなんてことになれば、平静でいられる自信がないのだ。そんな私情を持つこと自体、正妃として失格なのだろうけど。
そんな心の内をぽつりと彼に伝えると、私を抱きしめる腕の力が強くなった。
「側妃なんて考えたこともなかった。父上だって側妃どころか、母上亡き後はずっと独り身だよ。万が一、子が出来ずとも王位継承権を持つ者は複数いる。だから何も心配はいらないよ。ねえロゼ、今みたいに不安に思ったことは全て私に話して」
「はい、フェリクス様」
なんて頼もしい旦那様なのだろう。私はフェリクス様の逞しい胸にそっと頬を寄せた。
「私にはロゼだけだよ。ロゼ以外は何もいらない。もう、今日は我慢しようと思ってたのに、ロゼが可愛いこと言うのが悪い」
「え!?」
フェリクス様は私を抱え上げるとベッドに向かった。
「私がどれだけロゼのことを愛しているのか、この二週間でわからせてあげるよ」
彼は美しい顔で微笑んだ。澄んだ海のようなサファイアの瞳の奥に、どろりとした熱を浮かべながら。
「「奥様、お待ちしておりました!」」
出迎えてくれた使用人達の中にアンヌもいた。
ほっとしたのも束の間、侍女達に湯殿に連れて行かれ、隅々まで磨き上げられた。
そして夜着を着せられ、鏡の前に立った私は絶叫した。
「あ、あり得ないわーー!!」
それは、肌が透けて見えるほどの薄い生地でできたベビードールだった。
細い肩紐に深く割れた胸元、太腿が丸見えのミニ丈。胸元のリボンをほどくだけで脱げてしまう前開きのデザイン。そして下に履いているのは、面積が小さすぎるレースの紐パンのみ。
「は、破廉恥すぎるわよ! 他には無いの!?」
「奥様、恥ずかしがることはございません。初夜に相応しいお召し物です」
「う、嘘、みんな初夜にはこういうのを着ているの?」
アンヌや侍女達が大きく頷く。
そういうものなのかしら。私、騙されてない!?
怯む私を侍女達はにこにこしながら夫婦の寝室に押しこめて、バタンと扉を閉じた。
「あの、お待たせ、しました。フェリクス様」
恥ずかしすぎて扉の前から一歩も動けない。
ソファに座っているフェリクス様からは何の返事もない。
破廉恥な女だと引かれているのかも。
やっぱり着替えてきましょう!
引き返そうと扉に手をかけると、フェリクス様がすごい速さで歩み寄ってきた。そして私を抱き上げてベッドに横たえた。
フェリクス様がベッドに肘をついて私に覆いかぶさると、彼の黄金の前髪がさらりと私の額に触れた。
目の前の美しい顔に見惚れていると、彼は熱の籠もった瞳で私を見つめ返した。
「すごく綺麗だよ、ロゼ。愛してる」
「わたくしも愛しています、フェリクス様」
心臓がばくばくと音を立てて、全身に熱が回る。
恥ずかしくて、フェリクス様のガウンをぎゅっと握ると、口づけが降ってきた。
「⋯⋯ん」
甘い口づけに、思わず声が漏れてしまう。
フェリクス様に抱きしめられて、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がる。
(ずっとこうしていたい⋯⋯)
「愛しいロゼ、私の十年分の愛を受け止めてくれる?」
私がこくりと頷くと、フェリクス様は夜着のリボンをするりと解いた。
◇◇◇
翌日の朝、いいえもう昼だわね⋯⋯
初夜ってあんなに凄いものだとは知らなかったわ。
私は今、フェリクス様の膝の上で遅い朝食をとっている。
「あの、フェリクス様。自分で食べられます」
「だめだよ。昨日ロゼに無理をさせてしまったから、私にお世話させて、ね」
フェリクス様は上機嫌で、私の口にせっせとスプーンを運んでいる。
「ありがとうございます。フェリクス様もお疲れでしょうに、わたくしばかり甘えてしまって」
「私は全然疲れていないよ。むしろ足りないくらい。二週間の休みを取って正解だった」
羞恥で死にそうになっている私の耳元で、フェリクス様が甘く囁いた。
「ロゼ、たくさん愛し合おうね」
「わたくしの、し、心臓が持ちません!」
抗議する私に、フェリクス様が口づけの雨を降らせる。
「ねえ、ロゼ。私はしばらく夫婦二人で過ごす期間を持ちたい。ロゼの身体の負担を考えても、子を成すのはロゼが二十歳になってからがいいと考えている。それまでは私が王家に伝わる薬を服用する予定だけど、どうかな。ロゼの考えを聞かせて?」
「はい、わたくしはそれで問題ありません。ですが⋯⋯」
私はふいに不安に思ったことを口にした。
「二年経っても、わたくしに飽きずに、こ、子作りをしてくださいますか?」
フェリクス様は私をぎゅうっと抱きしめてきた。
「もう、ロゼ、なんでそんな可愛いこというの。私がロゼに飽きることなんて一生ないよ。断言できる」
「そうなのですか。安心いたしました」
私はほっと安堵の息をついた。
フェリクス様は世継ぎが求められる立場だ。できることなら私が彼の御子を産みたい。子が出来ないせいで側妃を迎えるなんてことになれば、平静でいられる自信がないのだ。そんな私情を持つこと自体、正妃として失格なのだろうけど。
そんな心の内をぽつりと彼に伝えると、私を抱きしめる腕の力が強くなった。
「側妃なんて考えたこともなかった。父上だって側妃どころか、母上亡き後はずっと独り身だよ。万が一、子が出来ずとも王位継承権を持つ者は複数いる。だから何も心配はいらないよ。ねえロゼ、今みたいに不安に思ったことは全て私に話して」
「はい、フェリクス様」
なんて頼もしい旦那様なのだろう。私はフェリクス様の逞しい胸にそっと頬を寄せた。
「私にはロゼだけだよ。ロゼ以外は何もいらない。もう、今日は我慢しようと思ってたのに、ロゼが可愛いこと言うのが悪い」
「え!?」
フェリクス様は私を抱え上げるとベッドに向かった。
「私がどれだけロゼのことを愛しているのか、この二週間でわからせてあげるよ」
彼は美しい顔で微笑んだ。澄んだ海のようなサファイアの瞳の奥に、どろりとした熱を浮かべながら。
あなたにおすすめの小説
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
わたしさえいなければ、完璧な王太子だそうです。
ふらり
恋愛
人並外れた美貌・頭脳・スタイル・武勇を持つウィンダリア王国の25歳の王太子は、完璧な王太子だと言われていた。ただし、「婚約者さえいなければ完璧な王太子なのに」と皆が言う。12歳の婚約者、ヴァイオレット・オルトニーは周囲から憐みの目を向けられていた。
「私との婚約は、契約で仕方なくなのかい? もう私に飽きてしまっている? 私は今でも君にこんなに夢中なのに」
13歳年下の婚約者少女に執着溺愛する美貌も能力も人間離れした王太子様と、振り回される周囲のお話です。小説家になろうにて完結しております。少しずつこちらにもあげていくつもりです。ファンタジー要素はちょっぴりです。
忖度令嬢、忖度やめて最強になる
ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。
5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。
週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。
そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り――
忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。
そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。
中世風異世界でのお話です。
2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。
*本作品の無断転載・AI学習への利用を禁止します。
あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」
そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。
代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。
世間は笑った。けれど、私は知っている。
――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、
ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚!
鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。