オーク無双2 〜あのオーク無双がパワーアップして帰ってきた!今度の女騎士は群れでやってくる

虎戸リア

文字の大きさ
3 / 4
1日目

3話「第一村人発見」

しおりを挟む
 俺達はあの最初の村に戻っていた。

「で、あれ何? ミッションなんて出てなかったぜ?」
「俺が知るかよ。というか、あれかこのゲーム、レベルもないんだな」

 KKポイントは少しだけ入ったが、経験値らしき物が見当たらない。
 ある意味シンプルで嫌いではない。
 
「っぽいな。KKポイントで上がるランクぐらいか? いや、でもスライムにはレベル表記あったぜ……訳分からん」

 肩をすくめるチチパイの仕草はオーク姿に妙に似合っていた。
 まあクソゲーに整合性を求めても仕方ない。

「村とか人とかを襲う以前にスライムに勝てないとかどうよ。一生村から出れないぞ」
「さっきのミッションの女騎士は糞雑魚だったけど。バランス調整クソか?」
「だからクソゲーなんだろ?」
「そうでした。まあとりあえずデスペナはなかったし、スライムの行動パターン把握しようぜ!」

 こうして俺達はスライムを倒すべく、凸っては死ぬを繰り返した。
 ちなみにあの謎闘技場にリスポンすることはなかった。

 何だったんだよあれ。

「結論から言うとだ。現時点の装備で倒すのは不可能に近い」
「賛成だぜ。物理無効に、全部の攻撃がワンパン。あれは無視して駆け抜けろって事だな」

 あのニュー棍棒で遠くから攻撃しても、スライムのHPゲージは1ミリも減らなかった。
 あの謎当たり判定は、見事にスライムの身体を素通りした。
 近付けば、
 ・触手薙ぎ払い(即死)
 ・触手針(即死)
 ・粘液噴射(即死)
 ・コア殴り(即ry)

 などなどの攻撃で死ぬ。伸ばした触手の先端にコアを乗せて殴ってきた時は、思わず笑ってしまった。それ弱点じゃねえのかよ。

 スライムの出る位置の横の森に隠れて他のプレイヤーの動きを観察すると、皆スライムをスルーしていく。
 たまに俺らのように挑んで、死んでいくプレイヤーもいたがそいつらは賢いのか次からはスルーしてた。

 まあ強くなってから倒せばいい。そう判断して、ほとんどのプレイヤーが駆け抜けていく。

「……まあ素人ならこう考えるだろうぜ」

 そうチチパイがドヤ顔しながら俺の肩を叩いた。

「流石だ相棒。そう、。あとで倒せばいい。だめだだめだ、その思考の時点で既に運営の手のひらの上」
「初期装備で勝てる要素は絶対にある。そして倒したご褒美は——きっと役に立つぜ」

 俺達は伊達にゲームをやりまくってない。

 大概こういう強モンスは倒すと、レアアイテムや武器をドロップする。もしくは隠しイベントが始まる。
 そして往々にしてそういう物は強くなってから取りに行くと、ゴミだったりする。

「さあ、見せつけてやろうぜ! 俺達の力をよ!」

 こうして俺とチチパイはここから5時間、スライム攻略に費やしたのだった。


☆☆☆


「倒せねえじゃねえか!!!」
「何が初期装備で倒せるだ! 全然無理だろ!!」

 倒せませんでした。

「火を使うは、良い感じだったんだがなあ……」
「まさかそこから10匹に分身するとは……流石に俺も予想してなかったぜ」

 ちなみに、分裂してもあの鬼攻撃力は変わらず、なんならスライムが道を占領し、通り抜けできなくて他のプレイヤーが死にまくった。

 割とまじですまないと思ってる。

「どうするよ。とりあえず森を通ってスルーするか?」
「だなあ……これ以上やってスライム増えたら流石に他の奴等に迷惑だぜ」

 結局俺らはくそほど時間を無駄にして、ようやく最初の村から離れたのだった。

 森の中もビクビクして進んだが、幸い出てくる魔物は、普通に殴って殺せた。
 
「殴って殺せるって素晴らしいな。神フィールドかよ」
「あとニュー棍棒強すぎて笑う」

 そう。ニュー棍棒。あれの謎当たり判定、オブジェクトを無視する事に気付いたのだ。

 木の幹やら岩やらなんやらを全て貫通するのだ。ちょっと強い魔物も、木の裏から殴ればノーダメで倒せる。

 こうして俺らは魔物を適度に狩りつつ森を抜けた。魔物を倒すと得られるドロップ品——装備用の素材は拾わずとも、勝手にインベントリに入るので便利である。

「見ろ!! 人間の村だ!!」

 森を抜けた先には、牧草地が広がっており、その奥にしょぼい木の柵で囲われた小さな村があった。

 村の入口付近に風車があり、横に流れる小川沿いには水車が回っている。牧歌的と言ってもいいし、のどかとも言える。

「ひゃっはあああ!! このニュー棍棒が有れば余裕だぜ!!!」
「どうするよ?」
「は? 真正面から突破以外あんの?」
「ねえな」

 俺らはにやけながら、棍棒を振り上げて村へとダッシュ。

 途中に、可愛らしい少女がいたが、きゃーとか叫びながら村へと逃げていく。

「オークよ! オークが来たわ! 総員——

 ん? 今なんかあの少女が言ったような。

「げへへへへへ全員ぶっ殺してや——」

 タッーン、という音と共に、チチパイの頭部に穴が空いた。

「あれ、これ、なんかデジャ——」

 俺が言葉を言い終わる前に、目の前に飛んできた手榴弾が爆発した。

 ……。死因は『村人により爆死』、だそうです。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...