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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
49話「ワームライド」
しおりを挟む「じゃまあああ!!」
あの反対側の階段へと私は全力疾走。飛び出てくるワームを斧槍で薙ぎ払う。
「キュアアアアア!!」
ボスワームである【穿孔するウィルム】が叫びながらこちらへと顎を開く。
次の瞬間に見えたのは緑色のビーム。
ボスの口から高速噴射された緑色の液がまるでレーザーのように薙ぎ払われた。
「いやあああ!!」
色といい生理的嫌悪感マックスの攻撃が迫り、私は思わず回避する為に一つ下の段に飛び降りた。
先ほどまで私がいた段の上を緑色の液体が通り過ぎ、ワーム達を切断していく。
「あれ毒っぽいけど当たるだけで痛そう!」
ワーム達が死んでポイントが入るが一匹当たり10ポイント程度しか貰えない。
多分、無限に沸いてくる敵だと思うけど、倒してる暇があったら一刻も早くここから逃げたい。
私の降りた段でも同様に穴からワームが飛び出して襲ってくる。すり鉢状になっているせいで段を降りれば降りるほど中央の穴に近くなる為、ボスの攻撃が届く時間が短い。
襲ってくるワーム、ボスからの毒液カッター。両方を避けながら、上の段へと続くはしごを見付けて急いで登る。
はしごを登り切った直後、縦に放たれた毒液カッターが下から上へと通過していく。私は咄嗟に横に転がってこれを回避。
見ると、岩肌すら削るその毒液が直撃したはしごには傷一つ付いていなかった。
どうやら、上がれなくなってプレイヤーが詰まないように、はしごは破壊不能オブジェクトになっているようだ。
私は起き上がって目指すべき出口を目指す。こんなボスを相手している暇はない!
30mほど進んだ先にはしごがあり、その先は階段がある部屋へと続いている。
「ここさえ突破出来れば!」
前の道にいくつか開いている横穴からはワームが飛び出しているのが見える。
「強行突破するしかない!」
私は斧槍を構えて、突撃。のたうちまわりながら迫るワームの一撃を斧槍で受け流し、無理矢理、下の段へと放り投げた。
もはや倒しても倒さなくてもいい。通れさえすれば!
「キュイエエエ!!」
ボスが毒液カッター前の予備動作として咆吼をあげた。チラ見すると、首を横に振っている。
「横薙ぎ!」
予想通り、ボスが私の進む先からこちらへと毒液を高速で薙ぎ払ってくる。
「おりゃあああ!」
咄嗟に目の前のワームへと斧槍を突き立てて、そのまま毒液の方へと無理矢理向けた。
ワームを盾に毒液を防ぐ。
ワームは毒液を浴びて切断されたが、それで威力は弱まり、私へのダメージはほとんどない。
そのまま駆け抜ける。次の毒液が来る前にあのはしごを登ってしまいたい!
スキル【突進】を駆使して邪魔するワームを突き飛ばし、立てかけてあるはしごへと到達。
そこに手を掛けて、登ろうとした瞬間、背後に風を感じた。
「あっ」
後ろを振り返ると、ボスワームの顎が迫ってくるのが見えた。どうやら直接攻撃もしてくるようだ。
私は咄嗟に、はしごの横の壁を蹴って、それを回避。
咄嗟の動きのせいで、斧槍がはしごに引っかかった。
「ええええ!?」
立てかけたあっただけで、固定されていないはしごは、飛んだ私と斧槍に引っ張られるような形で一緒に付いてきた。
破壊不能オブジェクトではあるが、どうやら移動はさせられる設定のようだ。
宙を舞う私とはしご。
ボスワームが首を戻して、宙を舞う私へと再び噛み付き攻撃を向けた。
空中で動く方法がない私は今度は避けられない!
と思ったら、ボスワームの口内にはしごがダイブ。私の盾になる形で攻撃を防いだ。しかしそれだけでなく、噛み砕こうとボスが顎を閉じようするが、破壊不能オブジェクトであるはしごがつっかえ棒のようになってどうやら口を閉じられないようだ。
そして斧槍がはしごに引っかかったままの私は、そのつっかえ棒になっているはしごへと着地。
「どうなってるのおおおお!」
顎が閉じられず、暴れ回るボスワームの口内で、私ははしごから手を離せず、どうすればいいか混乱していた。
え、待ってどういう状況!?
とにかく、ここから脱出しないと!
私は一か八かで、目の前にあるボスの口内へと思いっきり斧槍を突き刺した。
「ギュアアア!!」
「おお、効いてる」
ボスのHPゲージを見るに、それなりのダメージが通っている。
「あれ、これ、ここでちまちま刺してたら倒せる?」
と思った私が甘かった。
悪臭と共に、口の奥、つまり喉から緑色の液が溢れてきた。
「いやああああ!!」
口を開けっぱなしだと高速で噴射できないので先ほどまでのようなカッター状にはなっていないが、それでもでっかいミミズの毒液をまともに浴びて、私は悲鳴を上げた。
HPは減らないが、毒状態になったアイコンが表示された。
まずい、これ早く倒さないと毒でやられる!
私が毒液を浴びるのも構わず斧槍で口内を突きまくる。
はしごに手と足を掛けた状態で、力を入れられないので手数で勝負だ!だけど、私が突くたびに、ボスがのたうちまわる。
次の瞬間に、浮遊感。
口の外に見えるのは、天井の鍾乳石
ボスが身体を上昇させ天井へと向かっていったのだ。目の前に天井が迫る、
「うわああああああ」
私は手で顔を防ぐ。衝撃音と共に大量の岩が降ってくる。そしてすぐに、私の視界が開けた。ボスが天井を突き破り、要塞のおそらく一階部分へと到達したのだ。
「キュアアアア!!」
ボスの叫びが響く。見覚えのある場所だ。ここはこの要塞の——
「エントランス!!」
エントランスの床を突き破りなお上昇するボスがガクンと何かに引っかかったのか急停止。
「うわ!」
その拍子で私とはしごとスポンとボスの口内から飛び出した。その勢いのまま私はエントランスの二階部分へと飛ばされた。
そのまま壁に激突し二階部分にある部屋の床をゴロゴロと転がった。
「うそだろ!?」
すぐ近くで聞こえる男性の声。
私は急いで立ち上がりながらその声の方へと振り向いた。
そこには、絶句して口と目がこれでもかと開いている【オビ1:ソーレス】というプレイヤーが立っていた。
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